東京宝塚劇場では、雪組による『Lilac(ライラック)の夢路-ドロイゼン家の誇り-』/『ジュエル・ド・パリ!!-パリの宝石たち-』が絶賛上演中です。本公演は、新トップコンビ彩風咲奈さんと夢白あやさんの東京初公演となります。新たなトップコンビへの期待を胸に、希望にあふれたお芝居と煌びやかなショーの二本立てを観劇しました。(2023年6月・東京宝塚劇場)

ミュージカル・ロマン『Lilac(ライラック)の夢路-ドロイゼン家の誇り-』

舞台は19世紀初頭のドイツ。プロイセン王国の誇り高き貴族であるドロイゼン家の長男・ハインドリヒは、4人の弟たちと力を合わせ、自身が経営する製鉄所で鉄道事業を発展させることを夢見ていました。

ドイツ語圏の国を豊かにするためには鉄道事業の発展が不可欠であると確信したハインドリヒは、腕利きの製鉄職人・アントンにレール作りを依頼します。

アントンをハインドリヒに紹介してくれたのは、職業音楽家を目指す若き女性エリーゼ。女性が就くことが難しい弦楽器奏者になるために酒場で男装してヴァイオリンを演奏するエリーゼを見たハインドリヒは、夢へ誇り高く進む彼女に惹かれます。

レール作りに万進するハインドリヒとアントンたちをよそに、ドロイゼン家の財務担当である次男のフランツは、好き勝手に動く兄に不満が募ります。フランツの愛する女性はハインドリヒとの結婚を周りから望まれており、彼は兄への憧れと嫉妬で心を悩ませていました。

そんななか巷では亡き父の悪い噂が流れ、ドロイゼン家と魔女と呼ばれた女性の関係が浮上します。三男のゲオルグが噂の真相を探ると、驚くべき事実が明らかになり・・・。

タイトルにあるライラックは、ドロイゼン家の紋章に描かれている”誇り”を示す花。そして鉄道産業は、イギリスの産業革命に後れを取っていたドイツが工業国へと発展するきっかけを作りました。

騎士道精神の誇りを受け継ぐハインドリヒ達ドロイゼン5兄弟は、それぞれの力を合わせて鉄道建設の夢路を進みます。

彩風咲奈さんが演じるハインドリヒは、希望に溢れていてエネルギッシュ。それでいて人情味を感じさせる器の広さがあり、そんな彩風さんを中心とした5兄弟の姿は、鉄道によって発展し、一つになるドイツ諸邦の姿と重なります。

新娘役トップである夢白彩さんが演じるエリーゼも印象的でした。誇りを忘れず笑顔で夢を追う姿がまぶしく、女性の自分だからこそできる形でハインドリヒに協力する聡明さに惹かれます。

情熱と穏やかさを兼ね備える彩風さんと、魅惑的な笑顔と華やかさを持つ夢白さんの持ち味を堪能できるミュージカルです。

ファッシネイト・レビュー『ジュエル・ド・パリ!!-パリの宝石たち-』

2幕のショーは、ファッションの聖地・パリが舞台。宝塚の伝統であるパリレビューに乗せて、宝石箱のようにカラフルでキラキラとしたステージが繰り広げられます。

こちらのショーは雪組のタカラジェンヌ一人一人を宝石に見立てているのがポイントです。男役トップの彩風さんは、端正な容姿とタフさを持つまばゆいダイヤモンド。新娘役トップである夢白さんは、雪組カラーのグリーンのドレスをまといペリドットをイメージしています。

朝美絢さんは温もりと友情を感じさせるトパーズ、和希そらさんは神秘的なオパール、縣千さんはたくましく誠実さのあるアメジストというように、スターが登場するたびにまぶしさで目が眩みそうになりました。

ラインダンスや宝塚の代表曲「すみれの花咲く頃」など劇団らしさが随所にちりばめられているのも魅力的です。恋人たちでにぎわうエッフェル塔、祈りを捧げるノートルダム大聖堂など、パリの街の静と動が表現された場面構成もショーを盛り上げます。

トップコンビの見せ場であるデュエットダンスは、情熱的な赤い衣装で登場。専科の美穂圭子さんのしっとりとした歌声に乗せてしなやかに踊る彩風さんと夢白さんはお似合いで、時折顔を寄せ合う姿に思わずドキドキしてしまいます。”さきあや”コンビの甘いランデブーに酔いしれたひとときでした。

U-NEXT
さきこ

パレードのシャンシャンは宝石、背負い羽は淡いトリコロールカラーをデザインしていて、幕が下りる最後の瞬間まで可愛らしく煌びやかな世界が広がります!東京公演は、2023年7月16日(日)まで。千秋楽には映画館でのライブビューイングとオンラインでのライブ配信(「Rakuten TV」「U-NEXT」)も予定されています。