オーストリア皇后エリザベートといえば、美しく劇的な人生を送った女性、というイメージが強いのではないでしょうか。ミュージカルファンなら、『エリザベート』で馴染み深いのでは。そんなエリザベートが40歳を迎える1年間に着目した映画『エリザベート1878』が、2023年8月に公開されます。
オーストリア皇后エリザベートの知られざる1年
ヨーロッパ宮廷一、と謳われた美貌の持ち主、オーストリア皇后エリザベート。彼女は、1877年のクリスマス・イヴに40歳の誕生日を迎えます。
美しい皇后として、ハプスブルク帝国の象徴である皇帝を支えるよう求められ、コルセットを締め上げては公務にあたる日々。堅苦しい宮廷のなかで、夫フランツともすれ違い、彼女の息苦しさは募るばかりでした。
やがてエリザベートは、若い頃のように情熱を持って人生を過ごしたいと、ヨーロッパ中を旅して回るように。そこで友人やかつての恋人を訪ねながら、いつの間にか築き上げられた「皇后エリザベート」のイメージに抵抗する計画を思いつきます。
『エリザベート1878』の見どころとは
エリザベートの人物像や人生は、これまでにもさまざまな作品で描かれてきました。日本では、ミュージカル『エリザベート』が宝塚歌劇団や東宝ミュージカルで公演され、根強い人気を誇っています。また、2022年にはNetflixでドラマ『皇妃エリザベート』が配信され、話題となりました。
映画『エリザベート1878』は、エリザベートの人生の中でも「1878年」という1年にフォーカス。ある決意をもって人生を切り拓こうとする、40歳のエリザベートに密着します。今作では、オーストリアの新進気鋭の女性監督、マリー・クロイツァーが監督と脚本を担当。そして、主演のヴィッキー・クリープスは演技を高く評価され、2022年の第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門の最優秀演技賞を受賞しました。
さらに、ストーリーだけでなく、メインビジュアルのポスターも印象的です。白いドレスを身に纏い、挑発的なポーズでこちらを見つめるエリザベートは、お飾りの皇后には見えません。既存のイメージを打ち壊し、ひとりの人間としてエリザベートを捉えようとする作品に、期待が高まります。
エリザベートの素顔に思いを馳せて
オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世と結婚するも、厳格なしきたりに縛られた生活に馴染めず、ウィーンの宮殿から飛び出したエリザベート。義母の皇太后ゾフィーとの確執や、息子である皇太子ルドルフの自殺など、その人生には多くの苦難がありました。また、旅先で暗殺されたという最期も、彼女をよりドラマチックな存在に見せているのかもしれません。
しかし、自分らしくありたいと願う心や、家族との関係に悩むエリザベートの姿は、現代に生きる私たちと変わらないのではないでしょうか。
「コルセットを脱ぎ捨て、自由を求め旅立つ時」
このキャッチコピーの通り、映画『エリザベート1878』では、これまでとは全く違う視点からエリザベートの素顔を思い描けるはずです。
映画『エリザベート1878』は、2023年8月25日よりTOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下他、全国の劇場で順次公開されます。(配給:トランスフォーマー、ミモザフィルムズ)公開劇場の情報については、こちらをご確認ください。
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予告編を見て、コルセットを「締めて」と繰り返すエリザベートの姿から、彼女の目に見えない息苦しさが伝わってくるかのようでした。本当のエリザベートは、どんなひとだったのか…この映画を通して彼女に近づけたら、と思います。