8月17日に東京建物Brillia HALLにて開幕するミュージカル『スクールオブロック』。ミュージカル界の巨匠アンドリュー・ロイド=ウェバー氏が作曲・プロデュース、作中では子どもたちが実際にバンド演奏を行うことでも話題の作品です。デューイ・フィン役を務める柿澤勇人さんと、ロザリー・マリンズ役を務める濱田めぐみさんに本作の見どころを伺いました。

「僕にとって雲の上の存在でした」

−共演の多いお二人ですが、お互いの印象について教えてください。
濱田「『サンセット大通り』『デスノート THE MUSICAL』『フランケンシュタイン』『アリス・イン・ワンダーランド』『メリー・ポピンズ』、5作品も共演してるんだね!」

柿澤「僕にとっては劇団の大先輩でもあります」

濱田「いっつもそれ言って(笑)」

柿澤「研究生の時は、“濱田めぐみ、ここにあり”というような大先輩で、当時は全くお話しすることもなかったですし、僕にとって雲の上の存在でした。
僕は『ライオンキング』に出たくて劇団四季に入ったので、『ライオンキング』のCDでめぐさんの歌声は毎日聞いていましたし、作品パンフレットにめぐさんは舞台芸術学院で学んだと書かれていたので、僕も舞台芸術学院に行きました。
本当に憧れの存在です。
退団してから共演させて頂くようになって、大先輩なのにオープンに自然体で接してくださって、すごく救われましたし、今回の共演もとても楽しみです」

濱田「カッキーは稽古場に来て、“おはよう”って言ったその流れでお芝居を始めて、スッと帰っていく…ノンストレスなんですよね。カッキーも人に気を遣わせない、ラフな印象です。今まで共演してきた作品でも、フワーッと芝居に入っていく感じがしていて、“よし、やるぞ!”と意気込んで芝居に入る感じがしない。凄くナチュラルなので、周りが気負わない。子どもたちにとっても接しやすいし、でもみんなが心の中ではリスペクトする存在なのかなと思います」

−デューイとロザリーという役柄についてはいかがですか?
濱田「デューイってずっと喋ってるよね、どうやって覚えるの?カッキーはケロッと覚えそうだけど」

柿澤「やっているうちに覚えていきます。
でも舞台設定が現代だし、キャラクター的には最悪セリフが飛んでも子どもたちに言ってもらうのもありかなって(笑)。
ただセリフ量は多いし、楽曲のキーも高いので、大変な夏になるのは間違いないです。1人で1日2公演は絶対に無理です(笑)」

濱田「すごい量をしゃべっているから。本読みでも最後ヘロヘロだったもんね。疲れて脳が追いつかなくなりそう」

濱田「デューイのことを考えると、過去の心の傷がすごいんだろうなと思って。自堕落な感じや、1人でいられない感じ。“究極の寂しがりや”が色々なシーンに現れているように思えて、子どもの頃に相当寂しかったのかなって。そういうのがカッキーと逆の部分だと思ったの。カッキーは1人で飄々と楽しめるタイプじゃない?
でもデューイは生徒たちや色々な人と関わろうとするから、トラブルも多い。ロザリーも同じように傷を抱えているから、似たもの同士の吸引力があるんだなと思っています。最初、デューイとロザリーってなんで意気投合するのか疑問に思っていたんですけど、目に見えない感覚的な部分で共感できるだろうなって。大人になりきれないのに、大人としていなきゃいけないことへの生きづらさは、違う形だけどすごい持っている2人。そこがうまくリンクしたのかも」

−翻訳・演出の鴻上尚史さんと話し合われていることはありますか?
柿澤「僕は役についてあまり話さないですね。
(取材時)まだ稽古序盤ということもあって、色々とトライしています。
子どもたちが2チームいるので、僕は同じ芝居を何度も試すチャンスがあって、全然違うことを試していっています。
鴻上さんご自身も役者としての感覚が鋭い方なので、見守りながら、“カッキー今のよかったね”と声をかけてくれる。固めずにいてくれるのが嬉しいです」

濱田「話をすごく聞いてくれる演出家さんだよね。ただ、私は鴻上さんと喋りたいっていうのもあって(笑)、結構役について話しています。今まで役作りは自分の中で作ることが多かったけれど、今回は話し合いながら作っていこうという意識もあって。ロザリーという役柄が崩れると学院自体が崩れていくから、枠組みをしっかり作っていく必要があると思っています。色々話しているとちゃんと耳を向けてくれるので、すごく喋りやすいです」

今までミュージカルで出したことのない、高いキーも

−アンドリュー・ロイド=ウェバーの音楽についてはいかがでしょうか。
濱田「ものすごくキーの高いオペラの楽曲とロックのバラード、真逆のタイプの楽曲を歌わないといけないんです。ロイド=ウェバーさんはキャッチーだけど、歌う側にとってはすごいハードル高いです」

柿澤「今回はロックということもあって、ロイド=ウェバーの中でも異色な楽曲の数々です。今までミュージカルをやってきても出したことがないような高いキーもあって、1回は出ても、それを毎公演持たせるのは大変。
(Wキャストでデューイを演じる)西川貴教さんも“これ、声飛ぶなあ”と仰っていて、本物のロッカーでもそのくらい高い難易度なのだと感じています」

濱田「音楽が体に入ってくれば楽しめると思うんですけど、明確なポイントを押さえないとズレていきやすい難しさはあります。祭りみたいに見えるのは正解なんですけど、祭りみたいにやっちゃうと崩壊していく。しかも今回は子どもたちの人数も多いし、自分1人で帳尻を合わせれば良いというわけではないので。そこのバランスが難しいですね」

−高橋亜子さんの訳詞はいかがですか?
濱田「亜子さんの歌詞を歌い慣れているのですが、文字選びが上手ですよね。聞いていて、わかりやすい部分が多いです」

柿澤「日本語になるとどうしても英語よりも情報量が少なくなってしまうので、普遍的な意味合いになってしまう制約はあるのですが、その中でも分かりやすい歌詞になっていると思います」

−子どもたちと共に生演奏を披露するのも本作の見どころとなっています。
濱田「子どもたちはプロ顔負けの技術を持っているので、めっちゃかっこいいと思いますよ。普段はやんちゃな子も多いのですが(笑)、演奏になると一気に変わります」

柿澤「僕も舞台上でギターを演奏するのですが、舞台の本番でギターを弾いたことなんてないので、途中で弦が切れたりピックが飛んだりするようなハプニングもあるだろうし、初めてのことだらけですね。落ち着いて芝居だけができる日なんてないんじゃないかと思っています(笑)」

濱田「でも本当にそうかもね。稽古中もドラムのスティックが飛んじゃったこともあったし。捨て身で行かないといけないだろうね…色々と考えていくとなかなかヘビーな舞台だよね(笑)」

−デューイは子どもたちとの絡みも多いですが、既にコミュニケーションを取られていますか?
柿澤「はい。デューイはカーテンコールで全員の名前と役柄を紹介するので、2チーム分覚えないといけません。
・・・最初一度台本閉じちゃいました(笑)。
でも毎日一緒にいて接していたら、自然に覚えていました」

ロックを通じて、日々のストレスを一緒に発散!

撮影:山本春花

−演劇は時代を映す鏡とも言われます。今、本作を上演する意義とは、どのように捉えていますか?
濱田「とても難しいですが…我々が決めるものというよりも、作品が持っているエネルギーやメッセージをお客様が受け取った時に、初めて分かるものなのかもしれないですね。“こういったものを届けたい”というのはテーマであって、メッセージは自分の中で湧き出てくるものだから、観た人の数だけ、受け取るメッセージがあるのかなと。この作品はコロナ禍での中止も経ていて、エネルギーの強い作品ではあるので、デューイを筆頭に色々な熱いものを届けられるんじゃないかと思いますね」

柿澤「元となった映画を観ていない方も楽しめるとても分かりやすいストーリーになっています。
天才の子どもたちの演奏と、我々の歌とパフォーマンスを楽しむだけでも良いんです。
普段生きていて嫌なこととかムカつくことは誰にでも色々とあって、心が荒んでいく現代だからこそ、ロックを通じてそれを一緒に発散できるのがこの作品の魅力になっていくと思います」

ミュージカル『スクールオブロック』は8月17日(木)から9月18日(月祝)まで東京建物Brillia HALLにて上演、9月には大阪公演も行われます。詳細は公式HPをご確認ください。(関連記事:“校則なんてクソくらえ!”圧巻のパフォーマンスで魅了。『スクールオブロック』プレライブイベントリポートはこちら

Yurika

破天荒なキャラクターながら、子供心を忘れないピュアで熱いデューイと、大人になってしまった自分に葛藤を抱えるロザリーの化学反応が、今から楽しみです!