日々、多くの作品が上演されている小劇場演劇。どれを観たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、Audience編集部が独断と偏見で、9月に上演している作品の中からおすすめ作品を3本セレクトしてみました!

「言えないことが増えていく」男女3人の濃密なドラマ アマヤドリ みちくさ公演『代わりの男のその代わり』

劇団アマヤドリは、2001年に「ひょっとこ乱舞」として結成され、2012年に「アマヤドリ」へと改称されました。脚本・演出を務める広田淳一さんによるオリジナル戯曲を中心に、現代口語から散文詩まで扱うアマヤドリ独特の劇言語と、群舞など音楽・ダンス的な要素も取り入れられた身体表現が特徴です。

昨年『抹消』『解除』と3人芝居の連作を発表したアマヤドリ。今年も3人芝居『代わりの男のその代わり』が上演されます。

企画・出演の小角まやさんは、昨年の上演から「広田さんの描く少人数会話劇、世界観の設定が小さくなっても失われないスケール感にその才能が発揮されると感じたこと、そしてなにより、2人でも4人でもなく“3人“という絶妙なバランス感に魅了された」そう。

『代わりの男のその代わり』は、言えないことが増えていく、1人の女性と2人の男性の話。誰にも言えないようなごく個人的な体験を基点としたフィクション作品です。

作・演出・主宰の広田淳一さんは「生活と追憶と、愛情と裏切りと、家族と恋人と、被害と加害と、そんなことたちの間にまたがるイメージの連鎖をひとつの劇にまとめたい。昨年作った三人芝居でやいのやいのと議論する劇はいったんやり尽くしてしまったような思いもあるので、今回は何より、情景を重視して作りたい。三人芝居の濃密なドラマの中で、ぼんやりと浮かび上がるイメージを形にして、どうにか、観客のみなさんとそれを共有できますよう、願っています」とコメントしています。

本作は青盤・赤盤のWキャストでの上演です。
【青盤】ワタナベケイスケさん、相葉りこさん、堤和悠樹さん
【赤盤】倉田大輔さん、小角まやさん、宮川飛鳥さん

アマヤドリみちくさ公演『代わりの男のその代わり』は、9月28日(木)〜10月6日(金)に東京・スタジオ空洞(池袋)にて上演。詳細は公式HPをご覧ください。

「僕らの仕事は、戦うものが多すぎる」お仕事群像活劇!トツゲキ倶楽部『最悪の場合は』

トツゲキ倶楽部は、2006年に旗揚げした、「ありえないけどありえるかもしれない状況に右往左往する人々の姿」をエンタメ化して描き出す作風が特徴の劇団。2018年に上演された『最悪の場合は』が、大枠の内容は変えず、パワーアップして再演されます。

「世界は常に動いているし、明日必ず日常な明日が迎えられるとは限らない。世間に無関心である人たちは、自分たちに本当に危機が及ばない限りは何も動かない。そんな状況にもう1度、頭を巡らせてほしい」という想いから今回の再演が決まったそうです。

本作は、とある機関の広報部を舞台にしたお仕事エンターテインメント作品。官僚理事の接待疑惑騒動に始まり、さまざまな予想だにしないトラブルが連発。そんな中で、それぞれ個人的事情を抱えながらも、懸命に奮闘する人間模様を捉えた群像劇です。

そして『最悪の場合は』、一体何が起きるというのでしょうか…?!

トツゲキ倶楽部『最悪の場合は』は9月27日(水)〜10月1日(日)に下北沢「劇」小劇場にて上演です。詳細は公式HPをご覧ください。

可笑しくて、哀しい濃密な論争劇 十七戦地#13『オダマキとフクロウ』

東京を拠点に活動する劇団 十七戦地。十七戦地はこれまでに、場面転換のない中で日常会話よりも激しい言葉の応酬が交わされる「一幕論争劇」を上演してきました。

今回の『オダマキとフクロウ』では、終戦直後の昭和21年を舞台に、大学を追われた老哲学者の自宅で彼の弟子たちがその処遇をめぐって意見を戦わせます。

第二次世界大戦に敗戦した日本では、政治家や経済人たちの戦争責任が問われていました。ある老哲学者も「誤った哲学で戦争を正当化した」として大学を追放されてしまいます。しかし、この追放は妥当なものだったのでしょうか。

「戦争に敗れたから誤っていたとされたのではないか」と追放抗議するのかどうするか、老哲学者の弟子たちが議論を始めます。やがて老哲学者の秘密と弟子たちの事情が明らかになり…。

本作で脚本・演出を務める柳井祥緒さんは以下のようにコメントしています。

「#13『オダマキとフクロウ』は終戦直後の哲学者たちのお話です。
日本国民を戦争熱に巻き込んだ挙句、敗戦を迎えた責任の一端が、彼らの言論にあったのではないか。そんな問いから物語は始まります。彼らの唱えた哲学が間違っていたから戦争に敗けたのか、戦争に敗けたから間違った事にされたのか。
哲学者たちがプライドを賭けた激論を交わします。
とは言え小難しいお話ではありません。
可笑しくて、やがて哀しい論争劇。
一幕物演劇の醍醐味を楽しんで頂けると思いますので、ぜひご来場下さい」

十七戦地#13『オダマキとフクロウ』は、9月20日(水)〜9月24日(日)に東京おかっぱちゃんハウス(上石神井)にて上演です。詳細は公式HPをご覧ください。

ミワ

今月も多種多様に魅力的で、考えさせられる作品が多く上演されます。みなさんのおすすめの作品も、ぜひAudienceのTwitterを通して教えてください!