ニューヨーク・ブロードウェイの作品を映画館で楽しむことができる「松竹ブロードウェイシネマ」。10月から公開されるのは、「ホワイト・クリスマス」で知られるアーヴィング・バーリンが音楽を手がけ、ミュージカル『トッツィー』でも知られるデニス・ジョーンズが振付を手掛けたミュージカル『ホリデイ・イン』。感謝祭、独立記念日、バレンタインデー、クリスマスなど様々なホリデイの華やかな衣装とダンスと共に、夢と愛、自分の本当の居場所を探す人々を描きます。
ホリデイ限定でショーを披露する「ホリデイ・イン」
ニューヨークでショー・ビジネスに励んでいたジムは、穏やかな暮らしに憧れ、コネティカット州の農場と家を購入します。忙しない競争の世界から脱し、望んでいた静かな暮らしができる…と思いきや、農業はそんなに甘くはありません。上手くいかない毎日に落ち込む中で出会ったのは、農場の元オーナーのリンダ。
多才で活発的な彼女との出会いをきっかけに、ジムは家を改築し、感謝祭、独立記念日、バレンタインデー、クリスマスなど「ホリデイ」限定でショーを披露するホテルを開くことを思い付きます。やがてジムとリンダは特別な感情を抱くようになりますが、ジムのかつての仕事仲間で親友のテッドが現れ、テッドのダンスパートナーとしてリンダにハリウッド行きを持ちかけます。夢と愛する人、選ばれるのはどちらなのでしょうか。
圧巻のパフォーマンスの中にある、「現代的メッセージ」
本作は1942年のミュージカル映画『ホリデイ・イン』を舞台化。アーヴィング・バーリンが作詞・作曲した、名曲「ホワイト・クリスマス」をはじめとする華やかな音楽が彩ります。脚本はゴードン・グリーンバーグとチャド・ホッジが新たに執筆し、ゴードン・グリーンバーグが演出も務めました。
感謝祭、独立記念日、バレンタインデー、クリスマスなどホリデイに合わせて披露される色鮮やかな衣装とダンスが圧巻の本作。王道ミュージカルらしい華やかさ溢れる作品ですが、ゴードン・グリーンバーグ氏は「作品の核となる現代的メッセージ」に着目したといいます。
ジムは華やかなショー・ビジネスの世界から離れ、田舎に行けば静かな暮らしが得られると思っていましたが、現実はそう単純ではありません。どんな暮らしにも悩みがあり、葛藤があるということ。「誰もが二重の生活を送っている」ということは、現代にも通ずるテーマです。
またジムはショーの世界で活躍するには、ニューヨークやハリウッドでせわしない日々を過ごさなければならないと思い込んでいます。しかし田舎にいながら「ホリデイ・イン」を開くというジムの新たな選択は、「どちらか」ではなく「どちらも」選ぶ方法があるのだと教えてくれます。
主演は、ミュージカル『紳士のための愛と殺人の手引き』のブライス・ピンカム。共演にコービン・ブルーとローラ・リー・ゲイヤーと人気俳優が集結し、その洗練されたタップダンスと圧巻のパフォーマンスは、観客の歓声と拍手が鳴り止まないシーンがあるほど。
本作の振付を手がけたのは『トッツィー』でもトニー賞にノミネートされたデニス・ジョーンズ。毎秒のように衣装替えのある中、タップや縄跳びなどを取り入れながら圧巻のダンスシーンを作り上げ、第71回トニー賞の振付賞にノミネートされました。
暗いニュースも多い今の私たちの心を華やかに照らしてくれる『ホリデイ・イン』。2023年10月6日(金)より全国順次限定公開です。上映の詳細は公式HPをご確認ください。
圧巻のダンスシーンの連続で、今の時代にはこんなミュージカルが必要だった!と思わせてくれる、見ているだけで幸せな気持ちになれる作品。現代に通じるテーマも盛り込まれており、ぜひ日本でも上演を…と期待してしまいます。