11月4日から新橋演舞場にて開幕のミュージカル『シェルブールの雨傘』。過去にも様々なキャストで再演されてきた名作ミュージカルが、2023年はSixTONESの京本大我さん主演でよみがえります。セリフが全て音楽で構成された切ない恋の終わりを描いた物語。今回は『シェルブールの雨傘』の魅力について紹介します。

召集令状によって離れ離れになる二人の切ない物語

ミュージカル『シェルブールの雨傘』の原作となるのは、1964年に公開されたジャック・ドゥミ監督の同名ミュージカル映画。フランスの港町シェルブールを舞台に、戦争によって引きさかれた男女の悲恋を描いた作品です。

シェルブールに住む自動車整備士のギイは雨傘店の娘ジュヌヴィエーヴと結婚を誓い合う恋人同士でした。ある日ギイにアルジェリア戦争の召集令状が届き、二人は二年の別れを惜しみながらも離れ離れに。ギイが戦地に旅立った後、ジュヌヴィエーヴの妊娠が発覚。ギイからは喜ぶ手紙が届きましたが次第に連絡が減り、ジュヌヴィエーヴは不安な日々を過ごします。

そんな時に出会った宝石商のカサールが、お腹の子供と共にジュヌヴィエーヴを幸せにすると求婚。ジュヌヴィエーヴはカサールとの結婚を選ぶのでした。

誰が悪いわけでもない、悲しく切ないストーリー。戦地に行っても気持ちが変わらない強さが感じられるギイに対して、若いジュヌヴィエーヴには二年の月日は長すぎて待てないという印象を受けます。気持ちの支えになっていたギイからの手紙が減ってしまい不安な気持ちの隙間に、徐々にカサールの愛情が入り込んだのではないでしょうか。

映画・ミュージカル共に全てのセリフが音楽で構成されている『シェルブールの雨傘』。美しいメロディと重なったストーリーの切なさがより涙を誘います。(映画『シェルブールの雨傘』の視聴はこちら

京本大我×朝月希和を始めとする豪華キャスト!元・宝塚歌劇団演出家の荻田浩一が手がける

今作で主演のギイを演じるのは、SixTONESの京本大我さん。2015年、2016年、2019年の『エリザベート』ではオーストラリア皇太子ルドルフ役を熱演。京本さんのファンのみならずミュージカルのファンからも注目を浴びました。またブロードウェイミュージカル『ニュージーズ』では主演を務め、オリジナルミュージカル『流星の音色』では主演と共に音楽も担当するなど、ミュージカル界で多岐にわたって活躍しています。

そしてジュヌヴィエーヴを演じるのは、宝塚歌劇団で雪組トップ娘役として活躍した朝月希和さん。2022年の退団後今作が初のミュージカル出演となり、待ちわびていたファンの方も多いのではないでしょうか。

マドレーヌ役には、2020年に乃木坂46を卒業し舞台『ショウ・マスト・ゴー・オン』『博士の愛した数式』などに出演した井上小百合さん。

カサール役には数々のドラマに出演し、舞台では『ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~』『歌うシャイロック』を始め多くの作品に出演した渡部豪太さん。ジュヌヴィエーヴの母親・エムリ夫人役には、元宝塚歌劇団花組トップスターで『エリザベート』『ジェーン・エア』などに出演の春野寿美礼さんが務めます。

また今作の演出を手がけるのは、元・宝塚歌劇団の演出家で現在放送中のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』の舞台演出も担当している荻田浩一さん。宝塚歌劇団を退団後も様々なミュージカルや音楽劇、レビューなどの演出を手がけてきた荻田さんが豪華キャストと共に作り上げる『シェルブールの雨傘』に期待が膨らみます。

10年ぶりの再演!歴代のギイ役には坂本昌行や井上芳雄も

『シェルブールの雨傘』は1983年に日本で初めて舞台化され、様々なキャストで再演を重ねてきました。2000年と2003年には坂本昌行さんと藤谷美紀さん、2009年には井上芳雄さんと白羽ゆりさん、2014年は井上芳雄さんと野々すみ花さんがそれぞれギイとジュヌヴィエーヴを演じています。

筆者は過去に坂本さんと藤谷さんの公演を観劇しましたが、耳に残るメロディがとても切なく、思い出すと口ずさんでしまうほど記憶の中に焼き付いています。当時観劇した公演ではステージ上で水を使い実際に雨を降らせる演出があったため、より『シェルブールの雨傘』の世界観に浸り胸がギュッと締め付けられるような気持ちになりました。

お互い思い合っていた恋人同士なのに、戦争によってできた距離と不安な感情、目の前にある確実な幸せ、多くの要因で別の人生を歩むことになったギイとジュヌヴィエーヴの物語。ラストのガソリンスタンドでのシーンは涙なしでは観られません。

今回上演される『シェルブールの雨傘』のポスターは、淡い色合いの水彩画タッチが美しく話題になっています。悲恋の物語と言われますが、このポスターを見るとただ悲しいだけではなく二人が幸せに過ごした時間が伝わってくるのではないでしょうか。上演される時期は『シェルブールの雨傘』にぴったりの季節。開幕がますます楽しみになりますね。

ミュージカル『シェルブールの雨傘』は、11月4日から新橋演舞場にて上演。その後、12月3日から大阪松竹座、12月14日から広島文化学園HBGホールにて上演されます。公演に関する詳細は公式サイトをご覧ください。

かずちぃ

筆者は雪の降る地域在住のため、冬の夜にガソリンスタンドの前を通るだけで『シェルブールの雨傘』のラストシーンを思い出して切なくなります。今回観劇する方にとっても、忘れられないミュージカル作品のひとつになるのではないでしょうか。