2023年現在、名古屋四季劇場で上演されている劇団四季『キャッツ』。人間が一切出てこない猫たちだけの独特な世界に、興味はあるけどいきなり観るのはちょっと…と躊躇している方に向けて、作品の魅力や上演時間などについてお伝えできればと思います。またこの作品は、2023年の11月11日に日本上演40周年を迎えました。コアなファンの方も必見の、記念グッズなども紹介していきます。

奇跡の出会いから生まれた、”世界で最も成功を収めたミュージカル”

ミュージカル『キャッツ』と聞くと、実際に観たことがなくても、あの派手なメイクと衣装ならポスターやCMで見覚えがあるという方も多いと思います。

もとになったのは、『荒地』などで活躍しノーベル文学賞を受賞した詩人T・S・エリオットの作品。『Old Possum’s Book of Practical Cats(ポッサムおじさんの猫とつき合う法)』という題名のその詩集は、知り合いの子供たちのために書かれたもので、出版後もほとんど注目されていませんでした。

エリオットの死後しばらく経ったある日、空港の売店で何気なくその詩集を手に取ったのが、作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーです。『オペラ座の怪人』『ジーザス・クライスト・スーパースター』などを手がけたミュージカル音楽界の巨匠である彼は、ロンドン生まれだったため、幼い頃からこの詩集に慣れ親しんでいました。しかし、そのときは詩が持つ躍動感に改めて感銘を受け、楽曲を生み出すに至ったのです。

二人の才能が奇跡的に出会ったことで生まれたこの作品は、1981年にウエストエンドでの初演以来たくさんの人々から愛され続け、”世界で最も成功を収めたミュージカル” のひとつと言われています。

日本の演劇界を変えた革命作

日本では1983年からはじまり、めでたく40周年を迎えた劇団四季『キャッツ』。公演回数11200回以上、総観客動員1098万人にのぼる驚異のヒットミュージカルですが、実は日本の演劇史における革命をもたらしたと言われています。それは、日本初となるロングラン公演と、コンピューターによるチケット販売システムです。

今でこそ劇団四季は全国各地に専用劇場を持ち、当たり前のように長期公演を行っていますが、それは1983年の初演当初に、東京・西新宿に建てられた専用劇場「キャッツ・シアター」から始まったものだったのです。

またチケット販売サービスに関しては、チケットぴあのサービスが『キャッツ』初演と同時にプレスタートしたという経緯があります。ロングラン公演を実現するためにはコンピューターでのチケット販売システムが必要だと考え、ぴあが当時開発中だったシステムを『キャッツ』専用のシステムとして利用。3日半で10万枚のチケットを売り上げたそうです。今なにか舞台を観ようと思ったときに、気軽にかつ簡単にチケットを購入することができているのは、劇団四季『キャッツ』のおかげといっても過言ではないかもしれません。

『キャッツ』の世界に身をゆだねて

まず詩に曲がつき、最後にテーマが決まる。このように珍しい順番で作られていったミュージカル『キャッツ』ですが、どんなあらすじなのでしょうか。

舞台は都会のごみ捨て場。満月の夜、年に一度行われる ”ジェリクル舞踏会” に向けて、猫たちが集まってきます。人間に媚びず、どんな苦境においてもしたたかさを持ち、その命を自由に輝かせ、誇り高く生きる。そんな ”ジェリクルキャッツ” たちの中で、たった一匹の最も純粋なジェリクルが、長老猫によって選び出されるのです。猫たちが一晩中歌い踊り、夜明けが近づくその静寂に向かって、新しい人生を生きることが許されるその一匹の猫の名前が、いよいよ宣言されます・・・。

ざっくりと分かるのは「年に一度の猫たちの舞踏会で、一匹の特別な猫が選ばれる」といったところでしょうか。

実はこの『キャッツ』という作品は、それぞれ独立した猫が一匹ずつ紹介されるオムニバス形式のようなもので、起承転結がないのが特徴です。それは、先ほど述べたように、詩と曲が最初に出来上がるという異例の手法で製作された側面が影響しているのかもしれません。

あらすじを追いかける必要がない代わりに、猫一匹一匹が持つストーリーが色濃いのが魅力です。多種多様な性格を持つ彼らを見ていると、「周りにこういう人いるな」「あの猫は知り合いの○○さんみたい」「この猫、ちょっと自分に似ているかも」と、いつの間にか私たち人間のありさまを猫たちに投影するのです。劇中に登場する20匹以上のキャラクターのなかで、少しでも共感できる猫や気になる猫が見つかったら、『キャッツ』がどんどん面白いものになるはずです。

猫たちにフォーカスする他に、ロイド=ウェバーによる至高の音楽や、エリオットが織りなす独特の言葉や世界をひたすら堪能することもできます。初見の方は、観ていて抱きうる驚きや新鮮な疑問なども含めて、『キャッツ』の世界に浸ってみてください。

『キャッツ』の上演時間は?

『キャッツ』の上演時間は、第一幕が1時間10分、休憩20分、第二幕が1時間10分、計2時間40分を予定されています。

また劇団四季の公演では、基本的に開演45分前から劇場に入ることができます。(劇場によって異なる場合があるので、QRチケットもしくはチケット郵送控えに記載の時間をご確認ください。)

休憩中は、お化粧室やグッズ売店が混雑しやすいため、開場中に利用するのがおすすめです。

そして本編開演5分前までの開場中であれば、自席からのみ劇場内の写真撮影が可能です。動画撮影やフラッシュ使用などの禁止事項もあるため、詳しくは公式HPをチェックしてください。

『キャッツ』40周年記念グッズ・イベントなど

観劇の思い出に、やはり公演グッズは欠かせないですよね。今月40周年に突入した『キャッツ』では、記念グッズを販売しています。

メタル製の「ピンズ」、タッセル付きの「バッグチャーム」、各キャラクターのメイクがデザインされた「クリアファイル」と「Tシャツ」の計4種で、劇団四季オフィシャルウェブショップから購入できるものと、劇場でのお取り扱い分のみのものがあります。売り切れの際はご容赦ください。

記念イベントも実施しています。
2023年12月30日(土)までの40周年記念デジタルスタンプラリーは、劇団四季公式アプリをダウンロードのうえ参加するイベントです。スタンプを集めれば集めるほど、特製スマートフォン用壁紙や出演者直筆のメッセージ入りカードなどの特典と引き換えることができます。

また、2023年12月3日(日)までに来場すると、全4種類のポストカードをプレゼントしてもらうことができます。(開場中のみ、一人1枚ずつ)

その他にも、名古屋市内のホテルでコラボレーションメニューが登場するなど、目白押しです。劇団四季のオフィシャルウェブショップはこちら

アクセス情報

2024年5月12日まで、劇団四季『キャッツ』は、名古屋四季劇場にて上演されています。名古屋四季劇場へのアクセスは以下の通りです。

・JR「名古屋駅」から徒歩約13分
・地下鉄 東山線・桜通線「名古屋駅」から徒歩約10分
 (地下鉄「名古屋駅」からは、サンロード地下街を通り、笹島交差点方面へ進むと便利です。)
・名鉄「名鉄名古屋駅」から徒歩約10分
・近鉄「近鉄名古屋駅」から徒歩約10分

近隣の駐車場では、駐車券などを劇場インフォメーションカウンターに提示することで割引券を受け取れる場合があります。

また、劇場と提携した託児サービスも行っているため、お子様連れの方でも安心して観劇を楽しむことができます。名古屋四季劇場の場合、劇場から徒歩約20分の「託児所はないと」という場所です。営業日が通常と異なる場合もあるそうなので、駐車場の割引サービスも併せて、公式HPでご確認ください。

名古屋『キャッツ』は、2024年5月12日(日)に千秋楽を迎えます。その後、静岡・広島・仙台で上演されることが決まっていますが、名古屋で観れるのは今だけ。ジェリクルキャッツたちの個性あふれる生き様を見に、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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実は、私が演劇を好むきっかけとなった劇団四季『キャッツ』。初回からどハマりした私には “推し猫”がいるのですが、いつものように注意深く見ていると、数回目からちょっとずつ印象が変わり、更なる面白さを感じました。舞台は、そのときの自分の価値観やものの見方をよく反映するものだと思います。日々を生きながら知らないうちに様々な変化を経る自分自身と、都会のごみ捨て場でジェリクルとして力強く生き抜く猫たちとの、繊細な対話を体験しに行くのもいいかもしれません。