2023年もいよいよ終わりを迎えます。皆さんは自分の人生が変わるような、辛い時に支えてくれるような、演劇作品との出会いはありましたか?今回はさまざまな作品の中から、美しい演出と音楽が印象的だった4作品を振り返ります。

高畑充希×根本宗子×椎名林檎!共感度の高い繊細さに満ちた舞台『宝飾時計』

高畑充希さんから根本宗子さんへの熱烈リクエストにより実現、高畑充希さんら出演者に当て書きされた新作舞台『宝飾時計』。ファッションデザイナーの神田恵介さんが初めての演劇衣装を手がけ、劇中歌「青春の続き」を椎名林檎さんが書き下ろしました。

30歳を迎えた女優のゆりかが、自身の代表作である舞台「宝飾時計」の20周年記念コンサートに出演することをきっかけに、過去と現在が交差していく物語です。時計を思わせる円盤舞台で、高畑充希さん、成田凌さん、小池栄子さん、伊藤万理華さんら実力派俳優たちが瞬時に過去と現在を行き来きし物語を紡ぐ姿は圧巻。

根本宗子さんの共感度の高い台詞の応酬で、大事な人を失うことを恐れて核心に迫る会話ができないゆりかの複雑な心境と、歳を重ねていくごとに増えていく繊細さが身に沁みます。そしてラストで高畑充希さんに歌われる劇中歌「青春の続き」は、これまでのゆりかの想いが結実され、思わず身震いしてしまうほどの感動が押し寄せました。

強くて美しくて面白い!ガールズパワー溢れるミュージカル『MEAN GIRLS』

2018年にトニー賞で作品賞・主演女優賞・脚本賞など最多12部門ノミネートを果たした現代のヒットミュージカル『MEAN GIRLS』が日本初上陸!アフリカで生まれ育った主人公ケイディがアメリカのスクールカーストに巻き込まれていくコメディ作品で、現代のSNS文化を取り入れたことでも話題となりました。

観ているだけで笑顔になってしまうピンクの可愛らしい世界観と、コミカルさ満載のキャラクターたち、あるある?なスクールカーストの模様、周囲の環境に影響されて変わっていってしまうケイディの姿を可笑しくも皮肉に描いた物語、胸の高なる音楽の数々。何度もおかわりしてしまいたくなる作品で、観劇中にリピーターチケットを購入してしまうほどどっぷりハマりました。

日本ではケイディを生田絵梨花さんが演じ、そのキュートさを炸裂。スクールカーストのトップ3人組「プラスティックス」を演じた石田ニコルさん、松田るかさん、松原凜子さんの個性あふれる演技と、ちょっとおバカなキャラクター性は愛さずにはいられません。田村芽実さんが普段の可愛らしいイメージを封印し、アートフリークなケイディの友人ジャニスを熱演したのも印象的でした。

また「水曜日はピンクの日」という作中の学園のルールに合わせて、劇場でもピンクを身につけたお客さんが多数訪れ、エンターテイメント力の高い作品でした。

壮大な音楽と色鮮やかな演出に感動!ミュージカル『ラグタイム』

アメリカの移民の約9割がやってきたと言われる20世紀初頭のニューヨークを舞台に、ユダヤ人・黒人・白人と3つのルーツを持つ家族が、差別や偏見に満ちた世界に立ち向かうミュージカル『ラグタイム』。こちらも日本初演でした。

同じ日本人が3つの人種をどのように演じるのかという課題を、演出家・藤田俊太郎さんは美しい色鮮やかな衣装や振り付け、所作、歌い方、照明などで繊細に表現。空間を三次元的に活用する藤田さんの演出に、それぞれの人物たちが見つめた景色を想像させられました。

石丸幹二さんがユダヤ人ターテ役、井上芳雄さんが黒人ピアニスト コールハウス・ウォーカー・Jr役、安蘭けいさんが白人家庭の母親マザー役を務めるという超贅沢キャスト。そして特に印象に残ったのは、コールハウスの恋人サラを演じた遥海さんのソウルフルな歌声。歌声を聴いているだけで自然と涙が溢れ、井上芳雄さんとのハーモニーは今でも忘れられません。

約10分に渡って繰り広げられるオープニングナンバー「Ragtime」をはじめとする音楽も壮大で、これぞ名作ミュージカル!胸が震える瞬間が次から次へと巻き起こる、美しい作品でした。

KAWAII×チョコレートの香りに包まれる!ミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』

ロアルド・ダールの小説を元にイギリス・ウエストエンドで誕生し、ウォーリー木下さんが日本演出を手掛けたミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』。

世界中で愛されるショコラティエのウィリー・ウォンカが、世界中で売られているチョコレートの中に5枚だけゴールデンチケットを入れ、引き当てた子どもたちを工場に招待すると宣言します。チョコレートへの愛情と好奇心、想像力を持ったチャーリーと、現代社会への皮肉がたっぷり込められた4組の親子たちが謎に満ちたチョコレート工場を見学していく物語です。

ソーセージやベーコンが付いているなど遊び心溢れた衣装と、ポップで「KAWAII」が詰まった舞台セット。ウォンカを演じる堂本光一さんは純粋な少年心と年齢不詳な謎めいた空気、時に毒舌な姿もまさにウォンカそのもの!そして極めつきは、劇場からなんとチョコレートの香りが漂います。演劇は五感で楽しめると言うものの、ここまで五感を刺激され、ワクワクできる作品があったでしょうか。

今年は映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』も公開され、映画を観た後にもう一度ミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』を観たいと思わされました。再演、いつでも待ってます!

Yurika

他にも『マチルダ』『マリー・キュリー』『ムーラン・ルージュ』『赤と黒』『ベートーヴェン』など印象的なミュージカル作品が多数ある1年でした!2024年は帝国劇場の一時休館前ラストイヤーになります。チケットの高騰なども気になる昨今ですが、来年はどのような作品が生まれるのでしょうか。Audienceでたくさんの作品の魅力をお届けできるよう頑張ります!