日本演劇界きっての実力派キャストが結集し、東京芸術劇場シアターイーストとシアターウエストの2つの劇場で、フランス現代劇作家のフロリアン・ゼレールさんの『La Mère母』と『Le Fils息子』が同時に上演されます。岡本圭人さんと岡本健一さんの親子共演にも注目です!

家族の在り方をめぐる物語

フランス演劇界を牽引する現代劇作家のフロリアン・ゼレールさんの『La Mère母』が、今回なんと日本初演。そして、世界13か国以上で上演され、映画化もされた傑作『Le Fils息子』が2021年以来待望の再演です。

『La Mère母』は、ゼレールが31歳の時に3部作(『La Mère母』『Le Père父』『Le Fils息子』)の最初に書いた作品です。2010年にパリで初演され、その後、さまざまな国で上演。最近ではフランスが誇る名女優イザベル・ユペールの主演でブロードウェイでも上演され、大きな話題となりました。

これまで愛する子供たちや夫のために、家庭を第一にすることを生きがいとしてきたアンヌ。しかし、年月が過ぎ、子どもたちは巣立ち、今は夫までもが彼女の元を去ろうとしています…。アンヌは悪夢の中で幸せだった日々を思い出して心の万華鏡を回し続けます。

『Le Fils息子』は、フランス演劇界で最高の栄誉とされるモリエール賞を受賞するなど高い評価を受け、ロンドンのウエストエンドなど世界13か国以上で上演されました。また、本作の映画版(2022)には、ヒュー・ジャックマン、ローラ・ダーン、ヴァネッサ・カービー、アンソニー・ホプキンスが出演し、2023年に日本でも公開されました。

両親の離婚後、学校に登校せず、あてもなく過ごしていたニコラは、とうとう学校を退学になってしまいます。そんなニコラの様子を聞いた父親のピエールは、初めて息子と正面から向き合おうと努めます。

生活環境を変えることが、唯一自分を救う方法だと思えたニコラは、父親と再婚相手、そして年の離れた小さな弟と一緒に暮らしはじめますが、そこでも自分の居場所を見つけられずにいるのでした…。

本作の演出を務めるのは、緻密に人間の本質を描き出す演出力に定評があり、パワフルな演出家として知られているラディスラス・ショラーさん。シビアな現実を描きながらも、洗練されたスタイリッシュなステージングが特徴です。
                                                                                         
ラディスラス・ショラーさんは3部作について「悩み苦しむ家族の心を扱っています。3作それぞれで起こる出来事(『Le Père父』の消えていく記憶、『Le Fils息子』の両親の問題で高校に行かなくなる息子、『La Mère母』の親元を離れる年頃になった子供の旅立ち)が、家族という小さな世界を危うくし、安全と思えた家族を泡のように破裂させようとします」と語り、演出については「私はこの3部作の舞台を美術的に似せることにしました。3部作が互いにリンクしているという考えが気に入っているからです」と明かしています。

日本演劇界きっての実力派キャストが集結

演出家・ラディスラス・ショラーさんからのラブ・コールを受けて、『La Mère母』でタイトル・ロールの母アンヌ役を演じるのは、若村麻由美さんです。昨年、主演ドラマ『この素晴らしき世界』で1人3役を変幻自在に演じ、大きな話題となりました。2019年上演の『Le Père父』では娘としてのアンヌを演じ、第27回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。『Le Fils息子』『La Mère母』では妻として、母としてのアンヌを演じます。

息子ニコラ役を演じるのは岡本圭人さん。アメリカの名門演劇学校での武者修行後、2021年上演の『Le Fils息子』でストレートプレイ初舞台・初主演を務めました。

父ピエール役には、第26回読売演劇大賞最優秀男優賞、第45回菊田一夫演劇賞、第55回紀伊國屋演劇賞など数々の演劇賞を総なめにし、舞台俳優として高い実力をもつ岡本健一さんです。

そして、ピエールの再婚相手ソフィア役とニコラの恋人エロディ役に「イキウメ」や「野田地図」などの舞台作品や映像作品やナレーションでも活躍する伊勢佳世さん。

『Le Fils息子』では医師役にイキウメ劇団員の浜田信也さん、看護師役には「木ノ下歌舞伎」や「20歳の国」等話題のカンパニーに多く出演してきた木山廉彬さんが出演します。

『La Mère母』は、4月5日(金)〜4月29日(月・祝)に東京芸術劇場シアターイーストにて上演。『Le Fils息子』は4月9日(火)〜4月30日(火)に東京芸術劇場シアターウエストにて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

ミワ

それぞれ母と息子の視点から描かれる物語を同時に観ることができるという貴重な機会。それぞれがどう「家族」と向き合うのかを違った角度から観ることができるということで、チャレンジングでとても興味深い上演となっています。