英国王室の長い歴史の中でも、特に悪名高いヘンリー8世(1547年没)。 6度も結婚を繰り返したことで知られる暴君は、現代に蘇った「元妻たち」に復讐される…。 ポップでパワフルな歴史修正コメディ『SIX』の観劇リポートです。(2019年・Arts Theatre, London)

センターの座を巡り不幸自慢バトルが勃発!

このミュージカルの主役は、ヘンリー8世の6人の元妻たち。ポップグループとして現代に蘇った彼女たちは舞台上で歌い、踊り、観客を盛り上げます。この6人の中でセンターに相応しいのは誰なのか!?「最も不幸な人生を送った人が勝ち」というなんとも不毛なルールのもと、それぞれの身の上話が語られます。

イギリスでは”Divorced, beheaded, died, divorced, beheaded, survived”(離婚・斬首・病死・離婚・斬首・生き残り) と語呂合わせで暗記されるほど、悲劇的な最期を遂げた王妃たち。各々の人生をソロ曲として歌い上げます。

個性的なキャラが語り直す歴史

どの王妃も個性的なキャラが立っていて、まるでアイドルグループのように推せます。振り付けあり、ド派手な衣装あり、ファンサービスあり。どの楽曲もアップテンポで、ミュージカルというよりもほぼライブ。私はすっかり魅了され、途中からメンバーカラーのペンライトを振りたくなりました。

しかし、歌詞に耳を傾けると、はっとする瞬間がたくさん。 彼女たちは「ヘンリー8世の妻」として歴史に名を刻んでいますが、彼女たち自身の人物像は長らく無視されてきました。

「私は語呂合わせに登場するだけの名前でも、『6人のうちの1人』でもない!」 一人の人間として、どんな性格で、どんな生い立ちで、どうして女王という肩書きを背負わされ、そして気まぐれに奪われたのか。ようやく王不在のスポットライトを浴びた彼女たちは、ポップにパワフルに自分の物語を語ります。

「彼のおかげで歴史に名を残せた?彼こそ、私たち6人のおかげで有名になれたんでしょ!」と自信満々に言い放つ王妃たちは、紛れもなくスーパースターでした。

Akane

ウェストエンドのみならず、ブロードウェイ、シカゴ、オーストラリア、ニュージーランドでも上演が決定している大注目作品。イギリス版のトニー賞と言われる、2019年ローレンス・オリヴィエ賞でのパフォーマンス動画はこちらです!