登山家、ジョー・シンプソン本人が執筆した小説をもとに製作された舞台『Touching the Void』。イギリスのブリストル・オールド・ヴィックシアターにて初演を迎え、連日チケットは完売、大きな話題となりました。オリジナル版の演出を手がけたトム・モリスが来日し、日本版でも演出を務めます。日本版に出演するのは、デビュー後初の舞台主演となるAぇ! group 正門良規さん、古川琴音さん、田中亨さん、そして浅利陽介さんです。

『ウォー・ホース~戦火の馬~』のトム・モリスが舞台上に雪山を出現させる

本作の主人公である登山家、ジョー・シンプソン本人が1988年に執筆した小説『Touching the Void』(邦題「死のクレバス」)。サイモン・イェーツとともに、ペルーのアンデス山脈にある標高約6,400mのシウラ・グランデ山に登頂した際に、実際に起こった壮絶な遭難事故の回想録です。

ジョーがいかに困難を乗り越えて生還を果たしたかを描いたこの本は、登山家たちの間だけでなく多くの人々の心に響きベストセラーとなり、15年後の2003年には映画化(邦題『運命を分けたザイル』)、同年の英国アカデミー賞で最優秀英国作品賞を受賞しました。

このベストセラー本をもとに、スコットランドの劇作家・演出家であるデイヴィッド・グレッグが脚色し、2018年に舞台化。演出は、初演当時ブリストル・オールド・ヴィックシアターにて芸術監督を務めていたトム・モリスでした。日本版でも自ら来日し、演出を手がけます。

雪山をデフォルメしたシンプルな舞台セットにも関わらず、観客は座席に居ながらにして吹雪や寒さを想起させられ、2人の登山家の痛みや苦悩を追体験することになります。極限状態の彼らの心理にせまる緻密な演出で、壮絶な事故とそれに抗う人間の生命力を、あたかも目の前で目撃しているかのような気分になるでしょう。

主人公のジョー・シンプソンを演じるのは、今年念願のCDデビューを果たしたAぇ! groupの正門良規さん。2021年に舞台『染、色』で単独初主演を務め、2022年には若き日のゴッホを描いた『ヴィンセント・イン・ブリクストン』でも主演を務めました。今回が海外演出家とのタッグは初となります。またAぇ! groupは『THE GREATEST SHOW-NEN』(2020年〜2023年)にて様々な脚本・演出家とコラボし、演劇作品に挑んできました。

正門さんは本作の出演にあたって、以下のようにコメントしています。

「演劇が大好きで次はいつ舞台に立つことができるだろうとうずうずしていました!そしていただいたお話がいつか立ちたいと思っていた念願のPARCO劇場。本当にびっくりです。主演として立てることが本当に誇りですし、また1つ夢を叶えることができてとても嬉しいです!

海外の演出家の方とご一緒するのは初めてで緊張していましたが、トムさんとオンラインでお話して、非常に穏やかな方で安心しました。今は稽古が始まるのを楽しみに毎日トレーニングをするなど、できる限りの準備をしています!

ビジュアル撮影では、実際に雪山に登る為の服装や装備を身につけて、アイスアックスのみで体を支える体勢をとっての撮影などもありました。スタジオも冷房でキンキンに冷やしていただき、徹底的に擬似雪山を作ってくださいました(笑)。それ故に迫力満点のビジュアルになっていると思います! 実話を基に作られているということが本当に衝撃です。お芝居に加え、ハードなフィジカルワークもあり、心身ともに大変な作品になりそうですが、とにかく今はわくわくしています。観客の皆さんが思わず全神経を使って見入ってしまうような、そんなスリリングでいて温かい物語を素晴らしいキャストの皆さんと共に真摯にお伝えします。是非楽しみにしていてください!」

ジョーの姉セーラを演じるのは古川琴音さん。『花束みたいな恋をした』や『海のはじまり』など数々の作品で唯一無二の存在感を放っています。

古川さんは「ナショナル・シアター・ライブにて『戦火の馬』を見て以来、ずっと憧れていたトム・モリスさんの演出を受けられるとは夢にも思っていませんでした。今から緊張と高揚で胸がいっぱいです。私が演じるセーラは雪山で遭難したジョーの姉で、唯一原作の小説には登場しないキャラクターです。 遭難中のジョーの心の支えとなり、1人下山したサイモンには心の内を問いかける、2人を導く一筋の光のような存在です。セーラの力強さ、自然の壮大さを全身いっぱいに表現していきたいと思います」とコメントしています。

ジョーと共にシウラ・グランデに挑んだサイモンを演じるのは、連続テレビ小説『スカーレット』への出演で脚光を浴びた田中亨さん。舞台では『ロミオとジュリエット』『ブレイキング・ザ・コード』『デカローグ プログラムC』などに出演しています。

田中さんのコメントはこちら。
「オーディションは、まるでトムさんのワークショップを受けているような、楽しくて発見の多い時間でした。出演が決まって、どんな稽古を経て本番を迎えるのか、今から楽しみで仕方がないです。

ビジュアル撮影では、少しでも感覚を掴むために、実際にスタジオ内の温度を下げて撮影をしていました。寒さで目が乾燥したり、冷たい空気で呼吸することが、とても新鮮で勉強になる撮影でした。

無謀な挑戦にワクワクする気持ちや、命を預け合える関係性など、グッとくるポイントが多い作品だと思います。季節は夏から秋にかけてですが、舞台上には雪山があると信じて!切磋琢磨、稽古に取り組んでいけたらと思います。ぜひ観に来てください!よろしくお願いします!」

そして、ジョーとサイモンのテント番として二人の帰りを待つリチャードを演じるのは、幼少期より数々の作品に出演し個性派俳優として印象を残す浅利陽介さん。近年、舞台では『歌妖曲』『冬のライオン』『闇に咲く花』などに出演しています。浅利さんは以下のようにコメントしています。

「今はまだギターを触ったり、劇中にでてくる冬の登山、雪山はどれだけ過酷な状況なのかをイメージをしたりと少しずつ身体にインプットして準備しています。イギリス版の舞台映像を見ましたが、舞台上という限られた空間の中でクレバスを降りていきその後、落ちていくシーンの表現を効果的に見せているのが印象的でした。標高約6000mの空気の薄さ、氷に刺さるアイスアックスやアイゼンの音、キャラクターそれぞれの緊張感が伝わるようアンデスに行きたい…ところですが、まずは近所の坂道をダッシュで登ろうと思います(笑)。

ビジュアル撮影でリチャードの衣装を着たときは、なんというかしっくりくるものがあり、いよいよ始まるんだと、漠然とですが“不安”と“期待”を感じました。僕が演じるリチャードはとにかく一生懸命な人で、なかにはクスっと笑えるシーンもあるので楽しみにしていただきたいです。 トムさんに日本を好きになってもらって、観てくださる皆さんにはトムさんの演出を好きになってもらえるよう、稽古を頑張ります!お楽しみに!」

パルコ・プロデュース2024『Touching the Void タッチング・ザ・ヴォイド ~虚空に触れて~』は2024年10月8日(火)から11月4日(月祝)までPARCO劇場にて上演。その後、11月10日(日)から17日(日)まで京都劇場にて上演されます。公式HPはこちら