ジョナサン・ラーソンが命懸けで創り上げ、今や世界中の人々に愛されるミュージカル『RENT』。1996年に本作が誕生し、1998年の日本初演でマーク役を演じたのが山本耕史さんでした。山本さんにとって「役者人生を変えた」と語るほど思い入れの強い本作に、26年ぶりに出演、そして初の日米合作『RENT』に挑みます。8月21日の初日を前にゲネプロと囲み取材が行われました。

「今でも強いメッセージを発信できる作品」

囲み取材にはマーク役の山本耕史さん、ロジャー役のアレックス・ボニエロさん(Alex Boniello)、モーリーン役のクリスタル ケイさん(Crystal Kay)、演出家のトレイ・エレットさん(Trey Ellet)が登壇しました。

「やっとこの日が来たかという感じです。僕は26年前にやっているので、色々な記憶が蘇ってきて…稽古も十分に出来たので、準備万端で皆さんに良い『RENT』が届けられるんじゃないかなと感じています」と自信を覗かせた山本耕史さん。とは言え全編英語での上演への挑戦はかなり大変だったようで、稽古当初はクリスタル ケイさんの助けも借りながら英語を聞き取っていたそうです。

この挑戦に対して演出家のトレイ・エレットさんは、「こんなに努力をしている人を見たことがないというくらいの頑張りっぷりで感動しています。英語で話すだけではなく、英語で演技をしなければいけない。そこが肝心なわけで、でもそれをしっかりと出来ているので、素晴らしい本番をお見せできるという自信を持っている」と太鼓判を押されました。

また日米合作という初めての取り組みについて「作品に新しいバイブスが与えられている実感があります。年月が経ってもこの作品はメッセージ性を強く持っていて、今の世の中にも通ずるものがある。それはある意味悲しいことかもしれませんけれども、今でも強いメッセージを発信できる作品」と語りました。

ロジャー役のアレックス・ボニエロさんは、2023年にケネディ・センターで上演された『RENT』のワールド・シンフォニック・プレミアでもロジャー役を務めました。また『ディア・エヴァン・ハンセン』にてコナー・マーフィー役を務め、トニー賞ミュージカル作品賞を受賞した『ヘイディズタウン』の共同プロデューサーとしても知られています。日本での出演は本作が初めて。「コーヒーショップに行ってもバーテンダーと話してもこの作品のことを言うとエキサイトしてくださいますし、全米代表選手のような気持ちです。自分が心を込めている作品なので、こうやって注目していただけるのはありがたいことだと思っています」と思いを語りました。

モーリーン役のクリスタル ケイさんは、2019年にミュージカル『ピピン』でミュージカル初挑戦ながら第27回読売演劇大賞 優秀女優賞を受賞。2022年の再演でも同役を演じ、本作で2作目のミュージカル出演となります。英語はもちろんご堪能ですが、英語で演じるのは初めて。「ドキドキしているんですけれど…カンパニーの皆さんが初日からとてもフレンドリーで、この作品が大好きな人たちの集まりなので、とても心強いです」と笑顔で語りました。

No Day but Today

20世紀末のニューヨーク、昨年の家賃(レント)も払えないほど貧しい暮らしをしているマークとロジャー。マークは映像作家を目指してカメラを回し、HIVに感染したロジャーは最後に何か曲を残そうとギターをかき鳴らしています。

マークの元恋人でパフォーミング・アーティストのモーリーンは女性弁護士ジョアンと付き合い始めましたが、まだマークを振り回していました。ナイトクラブのダンサー・ミミと惹かれ合いながらもすれ違うロジャー、共にHIVポジティブで支え合うエンジェルとコリンズ。若いながらも死の恐怖、貧しさと戦いながら必死に生きる彼らを、マークはカメラに収め続けます。

山本耕史さん演じるマークは、ナチュラルにコミュニティの中に存在し、仲間たちを静かに見つめ続ける表情が印象的。ジョアンと踊る「Tango: Maureen」ではコミカルにダンスを繰り広げます。

アレックスさん演じるロジャーは、伸びやかな歌声で魅了しつつも、生きる気力を失ったような儚さも感じられます。マークとの息はバッチリ、友情を築いてきた2人の姿が想像できるコンビネーションです。

クリスタル ケイさん演じるモーリーンは、表情豊かに、ユニークに惹きつけます。ジョアンとのはちゃめちゃな恋人関係も愛らしく、高音の美しい歌声が堪能できるのも嬉しいポイント。

ミミの魅力に一気に惹きつけられる「Out Tonight」、一緒に踊り出したくなる「La Vie Boheme」、何度でも聴きたい「Seasons Of Love」。数々の名曲と共に、色彩豊かに“今日”を全力で生きる本作のキャラクターたちには、どうにもならない現実も、厳しい時代も、生き抜く活力をもらえるはずです。

撮影:山本春花

日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』は8月21日(水)から9月8日(日)まで東急シアターオーブにて上演。9月11日(水)から15日(日)までSkyシアターMBSにて上演されます。公式HPはこちら

Yurika

本作は、ジョナサン・ラーソンの遺志を引き継ぎ、公演当日に定価の半額に近い価格でチケットの抽選販売を行うエンジェルシートがあります。多くの人が本作と出会い、“今日”を生きる活力になっていったら嬉しいです。