日々、多くの作品が上演されている小劇場演劇。どれを観たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、演劇を愛するAudience編集部が独断と偏見で、9月に上演している作品の中からおすすめ作品を3本セレクトしてみました!

「獣三作」の三作目、キ上の空論『緑園にて祈るその子が獣』

役者の肉体と、会話言葉、軽快なシーン転換で“滑稽な人々の生活”を綴るキ上の空論。タイトルにそれぞれ『けもの/ケモノ/獣』をいれ、三作品の『獣』をテーマにした全く違った物語を描く「獣三作」。今作、『緑園にて祈るその子が獣(本多劇場)』が三作めとなります。

祈る家で育った“丸琥(マルコ)”は小学三年生の時にあやまって同級生のヒデに怪我をさせてしまいます。ヒデは、丸琥に“お詫び”として「通り道にある駄菓子屋から限定のキラカードを盗んでこい」と命令をします。

命令に従ってカードを盗んだ丸琥でしたが、母親にその様子を見られており…。
キラカード事件をきっかけにどんどん拗れてゆく丸琥は、人を攻撃せずにはいられない凶暴な性格になっていきました。「社会」と「家族」を行き来しながら、不安定な学生時代を終え、やがて大人になった丸琥は、全てを捨てて一人で生きていく事を決断します。

性格の悪い丸琥と、この世に存在しない“神様”と、それを“信じる者たち”のお話です。
キ上の空論『緑園にて祈るその子が獣』は、9月11日 (水) ~ 9月16日 (月・祝)に、東京・本多劇場にて上演中です。詳細は公式HPをご確認ください。

登場人物は全員恐竜!?恐竜青春群像劇 南極ゴジラ『バード・バーダー・バーデスト』

「南極ゴジラ」は2020年に誕生した、9人+1台の劇団。インスタライブを活用した生配信劇や、写真家やバンドが舞台上で俳優とセッションするなど、演劇を観たことがない人でも楽しめる作品を発表。2022年には小劇場の若手団体が多く参加する佐藤佐吉賞において、「最優秀作品賞」「最優秀賞演出賞」など異例の5部門での受賞を果たした、若手演劇シーンで今もっとも勢いがある劇団です。

今年の3月には、SF映画「ジュラシック・パーク」をモチーフにした『(あたらしい)ジュラシックパーク』を上演し、 独創的なストーリーと劇団らしいグルーヴが評判となり大きな話題を呼びました。

今作『バード・バーダー・バーデスト』は、なんと、全登場人物が恐竜。高校を舞台に、誕生から絶滅までの1億6千万年をきらめく3年間で駆け抜ける、恐竜青春群像劇となっています。三畳紀、ジュラ紀、白亜紀、と3つにまたがる恐竜時代を、高校生活3年間になぞらえます。
肉食恐竜も草食恐竜もこの3年間は同じ教室で生活し、卒業すれば弱肉強食の世界へと巣立っていきます。
おもしろいことが大好きなアンテナは、ビビッときたものには片っ端から首を突っ込んで、忙しい毎日を送っています。ベジタリアンの肉食恐竜、 恐竜をどこまで投げ飛ばせるかを競う珍スポーツの選手たち、らんぼうものの兄弟、新大陸からやってきた無口な転校生、前時代の両生類の生き残り。 彼女たちがゆかいでまぶしい日々を過ごす中、地球には巨大な隕石が迫っていて…。

南極ゴジラ『バード・バーダー・バーデスト』は、9月19日(木)〜9月23日(月・祝)に東京・すみだパークシアター倉にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

《円盤に乗る派》の代表作、待望の再演『仮想的な失調』

《円盤に乗る派》は、「複数の作家・表現者が一緒にフラットにいられるための時間、あるべきところにいられるような場所」を作るための演劇プロジェクトとして2018年にスタートした団体です。
劇場を訪れ、帰っていくまでに体験する全てを「演劇」として捉え、冊子の発行やさまざまなイベントの開催など、上演作品の発表だけにとらわれない活動を展開しています。

『仮想的な失調』は2022年に初演され、大好評を博した《円盤に乗る派》の代表作。狂言『名取川』と能『船弁慶』の二つの古典作品が物語の下敷きとなっています。

狂言『名取川』は、自分の名前すら忘れてしまう坊主を主人公とした作品。能『船弁慶』は、源義経の西国落ちを題材にとり、義経の愛妾・静御前とかつての敵・平知盛の怨霊を一人二役で演じる作品です。
常に複数のSNSを使い分け、様々なアイデンティティを駆使する、すべてが仮想的な現代の生活に向けて、2つの作品の物語の新たな語り直しを試みます。

円盤に乗る派『仮想的な失調』は、9月19日 (木) ~ 9月22日 (日・祝)に、東京芸術劇場 シアターウエストにて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

ミワ

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