東京の演劇シーンを支える劇場を劇場支配人自らが紹介する【TOKYO MY THEATER】――第1回は、新宿でリニューアルオープンした「本多劇場グループ 新宿シアタートップス」を運営する本多劇場グループ総支配人の本多愼一郎さんが登場します。劇場支配人というとスーツにネクタイ姿などをイメージしますが、愼一郎さんは電気ドリルを片手に、客席内を動き回ります。

手が加わっていないのは、天井周りと壁だけです

――客席で愼一郎さんにお話を伺っていますが、「本多劇場グループ 新宿シアタートップス」として動き出して、改修したところはどこですか。

本多愼一郎(以下、本多) 客席からグルッと見るとカタチは同じように見えますが、かなり手を加えています。照明は総入れ替えして、舞台も全面改修。後方のブース周りも改修して、客席も微妙な調整を行っています。天井周りと壁は手が加わっていないので、変わった印象がないのかもしれません。

撮影:山本春花

――客席にいると変わっていないように見えますが、運営や劇団の人には使いやすくなっているのですね。

本多 こうやって座っているとほとんど分かりませんが、一番変わったのは舞台で、以前に比べて20センチほど上げています。役者さんは舞台の下を移動しますが、前に比べればかなり使いやすくなっているはずで、前にトップスを使ったことがある俳優さんが内覧に来て、「すごく良くなった!」と驚かれていました。こういうご時世なので、舞台下の空調を考えてエアコンも新設しています。

――拝見していると、愼一郎さん自らが電気ドリルを持って動き回っているんですね。

本多 トップスを運営することが決まってから、ずっとここにこもりっきりです(笑)。下北沢にあるどの劇場を作ったときも、オープン後の半年から一年ぐらいは手直しの繰り返しでした。

どこで何か起きたときでも公演ができるようにバックアップする役割

――まさに「劇場を作っている」わけですね。

本多 劇団の職人さんや、制作会社の舞台監督などの話を参考にしながら、ほとんど毎日一人で何かしら工事をしています。電気工事もしますよ。

撮影:山本春花

――愼一郎さんの手作りなんですか。それは芝居を観に来たらグッと来ますね。

本多 下北沢でもいろんなカタチの劇場を運営していますが、劇場は何度か使ってみてわかることがあります。劇団によっては、「ここの劇場でしかやりたくない」と特定の劇場を気に入って使い続けてくださり、劇場の特性に合わせた作品を上演することも多いので、トップスでもそういうラインナップを作っていきたいですね。劇団がこの劇場を使うことで、次に広がっていくことがとても大事です。

――次というのは。

本多 劇団が新しい作品を作ったり、ここでロングラン公演をしたりすることに繋がっていくということです。

お客さんに足を運んでいただいてはじめて劇場を守ることができます

――愼一郎さんは、「総支配人はなんでもやる総雑用」だとおっしゃっていますが、劇場を運営していてうれしいことは何ですか。

本多 やはり、満員御礼で、お客さんが大喜びして、役者たちも楽しんで、この空間を共有していることですね。千穐楽で拍手が鳴り止まないのを見ていると、本当にうれしいです。

――では、本多劇場グループ 新宿シアタートップスの未来を教えてください。

本多 とても歴史のある小屋を引き受けることになりました。まだここで芝居を見たことがない若い世代と、まだここを使ったことがない劇団や役者さんと一緒に、次へ進んで行ければいいと思います。いろんな芝居のジャンルがありますが、新しい海外戯曲とか、私たちのプロデュース公演などもやってみたいですね。

――演劇ファンもこれからのトップスに期待していると思います。

本多 私たちにとっても下北沢以外で初めての劇場運営になりますが、お客さんが喜ぶ公演をかけていきたいと思いますので、リニューアルオープンしたトップスにお越しください。

撮影:山本春花

本多劇場グループ 新宿シアタートップス
東京都新宿区新宿 3-20-8 WaMall TOPS HOUSE ビル4階
03-6457-4058
http://www.honda-geki.com/tops/

Makoto Kajii

芝居好きにとって本多グループが運営する下北沢の本多劇場をはじめ、ザ・スズナリも駅前劇場も、その他の小劇場も、劇団の演目と紐付いて忘れることのできない特別な空間です。そういう劇場を作り上げた本多一夫さんの血を受け継いでいるのが愼一郎さん。離しているととてもシャイで、9つの劇場を回している豪腕には見えません。劇場の舞台の改修を熱心に語っている愼一郎さんを見ていると、“血の通っている空間”という言葉が思い浮かびました。