「東京には魅力的で個性的な劇場がたくさんあり、毎日好きな演劇が観られる」と公言する芝居好きがたくさんいます。規模の大小にかかわらず、劇場を運営する人がいて、その舞台に立つ人がいて、演劇を楽しむ人たちがいる――劇場の今を伝える、劇場支配人が語る【TOKYO MY THEATER】。第1回は、本多劇場グループ総支配人の本多愼一郎さんに「本多劇場グループ 新宿シアタートップス」を語っていただきます。

本多劇場グループ9軒目は、初・新宿での劇場運営

JR新宿駅東口から、今はなきバーニーズ ニューヨーク新宿店の前を曲がって、あるいは、紀伊國屋書店で本を買ってから、シアタートップスに行った経験がある人は多いはず。劇場に入った瞬間、「新宿駅からこんな近くに、こんなに見やすい劇場があるなんて」と思ったことのある人にとって、今年8月のリニューアルオープンはコロナ禍の中で朗報でした。

シアタートップスは1985年に開場し、劇団☆新感線大人計画東京サンシャインボーイズなどが愛用した劇場。2009年春に閉館したのち、2011年5月に松竹芸能による「新宿角座」として営業していましたが、今年4月に“当面の間休館”と告知されました。そのシアタートップスの歴史を紡いだのは、下北沢で8つの劇場を運営する本多劇場グループです。

――新たに「本多劇場グループ 新宿シアタートップス」という名称でリニューアルオープンしましたが、本多さんにはどういう経緯でお話が来たのですか。

本多愼一郎(以下、本多) 今春に松竹芸能さんが角座の契約を終えられて、「本多さん、どうですか?」とビルのオーナーとともにお話をいただきました。コロナ禍の状況で、新しい劇場の運営は相当な冒険なので、かなり考えました。でも、厳しい厳しいと言い続けていてもしょうがないし、代表の本多一夫からも「できるならやろう」と言われて、お話をいただいたのもご縁なので、劇場に灯りをもう一度灯そうと。

撮影:山本春花

――ビルのオーナーも一緒に打診があったのですか。

本多 ビルのオーナーからは、「新宿から劇場がなくなるのは、地域にとって損失になります」と言われたのを覚えています。“劇場がある街は人が集まる場所である”ことは、本多劇場グループが下北沢で理解しています。街に劇場があることで、街と人を活性化できればいいなと思いました。

――やはりそれは代表の一夫さんの考えに基づいていると。

本多 代表は、「舞台に立てる人を多く立たせてあげたい」から「立てる板(劇場)を作っていけば、たくさんの人が立てる」そして、そこから「様々なことが起きるだろう」という考えの人で、グループを作ってきました。新宿の劇場運営は初めての新参者なので、街と仲良くやっていきたいですね。

開演前のざわめきがない客席で、好きな「M-5」席に座って語る

――愼一郎さんの好きな席に座っていただいて、続きのお話を。

本多 好きな座席ですか? ここの客席は一番奥でもかなり見やすいですね。舞台中は照明を担当して客席奥のブースにいることも多いんですが、舞台から一番遠いブースでも見やすくて、声も聞きやすいです。

撮影:山本春花

――シアタートップス時代には芝居を観に来られましたか?

本多 トップス時代はよく観に来ていましたね。トップスは、「老舗で常に良い作品がかかっている」イメージが強いです。客席は155席、ちょうど見やすい大きさの小屋ですね。舞台はそんなに大きくないですが、高さもあって見やすくて、劇場運営を引き受けたとき、まず「これからどう使いやすくできるかな」を考えました。

――リニューアルオープンのこけら落とし公演は本当に残念でした。一夫さんはお元気ですか。

本多 ありがとうございます。すっかり元気です。せっかく劇場のこけら落としなので、本多一夫がどうして劇場を作ってきたのか、「代表の一夫のことを知ってもらおう」と。公演『演劇の街をつくった男』を企画しましたが、初日の数日前に陽性反応が出て、公演を中止しました。

――愼一郎さんから本多劇場グループがシアタートップスを引き受けた話を聞くと、お父さんの公演の中止は本当に残念でした。それから何公演か行っていますが、お客さんの評判はいかがですか。

本多 トップス時代を知っているお客さんから、「この場所をまた劇場にしてくれて、ありがとう」という言葉をいただきました。ありがたいです。

コロナ禍の影響は、「新しいこと」として受け止めて……

――10月1日で緊急事態宣言は解除されましたが、昨年春から厳しい状況でした。

本多 コロナ禍の中でのエンタメ界が相当厳しいのは誰の目にも明らかなことです。以前のように気軽に劇場に足を運びにくくなったし、運営側としても演劇人にとっても、まだまだいろんなことがあると思いますが、その状況に合わせて活動していくしかないと思います。運営側としては頭をふりしぼってお客様に良い状態で観ていただける環境作りが必要だし、劇団も工夫しながら公演をしているので、運営、劇団、お客さんが上手く共存していきたいですね。「新しいこと」として受け止めてやっていくしかないと思います。

――いろんな人の期待を背負ってリニューアルオープンしましたが、劇場の出来はいかがですか。

本多 新しい劇場作りは順調にいったとして、一年ぐらい試行錯誤します。シアタートップスも今の段階は8割ほど完成しているという感じですね。

撮影:山本春花

本多劇場グループ 新宿シアタートップス
東京都新宿区新宿 3-20-8 WaMall TOPS HOUSE ビル4階
03-6457-4058
http://www.honda-geki.com/tops/

11月3日(水)~11月14日(日)
はえぎわ『ベンバー・ノー その意味は?』

脚本・演出:ノゾエ征爾
出演:井内ミワク 竹口龍茶 踊り子あり 川上友里 鳥島明 山口航太 ノゾエ征爾 内田健司

◆はえぎわWEB予約 http://haegiwa.net
◆Confetti(カンフェティ)WEB予約 http://confetti-web.com/tops_haegiwa

Makoto Kajii

筆者のシアタートップス観劇経験で鮮明に覚えているのは2009年。当時、「劇団ポツドールの三浦大輔さんの芝居を観たい」と、前知識も持たずに、初デートの女性と観たのが『愛の渦』でした。この取材で初対面の愼一郎さんに、「ああいう内容の芝居だと思わずに観に来て、終演して二人とも無口になって帰りました」と話をしたら、ふふっと笑ったのがとても印象的。劇場は芝居の内容も含めて、観に来た人の様々な記憶を呼び戻すもの。そんな人の想いがまた155席分、この劇場に積もり続けていきます。