初演から約20年たつ今なお、世界中で愛され続けている作品であり、日本でも何度も上演されている『ピローマン』。今回、新国立劇場の新シーズンの1作目として上演されることになりました。

残酷なおとぎ話が現実へと忍び寄る マーティン・マグドナーの傑作

劇作家としてはもちろん、現在では映画監督としても活躍されているマーティン・マグドナーさん。数多くの演劇賞はもちろん、映画でも世界的な賞を受賞しており、演劇と映画の両方で成功を納めている稀有なクリエイターです。今回上演される『ピローマン』は代表作の一つで、2003年に初演されると、2004年のローレンス・オリヴィエ賞、04–05年のニューヨーク演劇批評家協会賞など、多くの演劇賞を受賞しました。

この作品は、自身の出身であるアイルランドを舞台にした作品を多く手掛けたマグドナーさんにとって、初めてアイルランド以外の架空の国を舞台に描いた作品です。

架空の“独裁国家”で生活している兄と弟。作家である弟が描いたおとぎ話の内容がやがで彼らの現実を侵食し…。理不尽な体制の中で「物語」が存在する意義とは何かを問いかけます。

今回翻訳と演出を務めのるは、新国立劇場演劇部門芸術監督を務められている小川絵梨子さん。実は、約10年前にも『ピローマン』の演出を手掛けられており、今回は2度目の演出となります。上演するにあたり、

本作は、ダークコメディの一面を持ちつつ、理不尽な世界の中で、物語という存在が如何なる存在意義を持ち得るかを問いかけます。物語の作り手のプライドとある種の傲慢を正直に暴きつつ、人類が発明した「物語」が持つ底力と、絶望の中でも繋いでいくべき希望の糸を書き出す物語となっています。

とコメントされています。災害や戦争などで混沌とする世の中に、この作品を通じて何か光となるものを客席に届けてくれるのではないかと思っています。

―僕たちは大丈夫だ、大丈夫なんだよー 架空の国で暮らす兄弟を演じる 成河×木村了

作家のカトゥリアンを演じる成河さん。長年、ストレートプレイやミュージカルとジャンルを問わず第一線で活躍されています。最近も『ある馬の物語』『ねじまき鳥クロニクル』『未来少年コナン』と、話題作に次々と出演されており、幅広い役柄を変幻自在に演じることができる俳優さんです。作家とはいえいわゆる普通の作家とは言い難いカトゥリアン、どのように演じられるのか楽しみです。

カトゥリアンの愛する兄、ミハエルを木村了さんが演じます。ドラマや映画、そして舞台と媒体を問わず幅広く活躍されており、新国立劇場での上演作品では、小川さんが演出された『レオポルトシュタット』や、『フリック』『桜の園』などに出演しています。

他にも、兄弟を取り調べる二人の刑事トゥポルスキとアリエルに斉藤直樹さんと松田慎也さん、兄弟の父母を大滝寛さん、那須佐代子さんが演じられます。

なお、元々出演が予定されていた亀田佳明さんは体調不良のために降板となりました。

『ピローマン』は、10月8日(火)〜27日(日)に東京・新国立劇場小劇場にて上演されます。10月3日(木)、4日(金)はプレビュー公演が行われます。また10月18日(金)には、公演終了後に全キャストによるシアタートークも予定されています。なお、この作品はトリガーアラートが提示されていますので、観劇前にご確認されることをおすすめします。詳しくは公式HPをご覧ください。 

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今回の上演に至ったきっかけは、コロナ禍中に行ったオンラインでの読み合わせの会だったそうです。その時期での気づきを経てコンセプトなどを一新されるということで、どのようなアプローチで作品を作り上げていくのかが楽しみです。