ミステリーの女王、アガサクリスティーが1944年に発表した長編小説『ゼロ時間へ』。舞台化のほか、テレビドラマ、映画として何度も映像化されている人気作品です。そして今年10月、この名作が新たにノサカラボ演出で幕を切ります。

ミステリーの常識が覆される!?ワンシチュエーションで描く緻密なトリック

物語の舞台はイギリスの田舎にある貴族の邸。9月のある日、休暇を過ごすために集まった元弁護士のトリーヴズ、マラヤから帰国したばかりの青年ロイド、ハンサムなスポーツマンのネヴィルとその妻のケイ。そしてケイのボーイフレンドのテッドに、ネヴィルの元妻オードリーまでもが集結。非常に複雑な人間模様となっていました。

そんな中、邸の主人であるレディー・トレシリアンが何者かに撲殺されます。
凶器のゴルフクラブからはネヴィルの指紋が検出されますが、彼には殺害の動機がないうえに、アリバイもあることが判明。捜査は暗礁に乗り上げてしまい……。

殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっている___

本作の魅力はこの一節にあります。

推理小説といえば、事件が起きて、犯人を見つけて、殺害の動機が明らかになって……が定石。しかし『ゼロ時間へ』は違うのです。

犯人には、その犯行に至るまでの大きな心の動きがあるはず。
本作では犯人が殺人計画を立てる段階から、犯行の時間=「ゼロ時間」までを軸としてストーリーが展開されます。細かい登場人物の描写が特徴的なクリスティー作品の真髄を感じられる傑作です。

更に舞台版はワンシチュエーションで描かれており、芝居や構成、演出を緻密に作り上げなくてはならない難しい戯曲となっています。今回のノサカラボ演出ではどう表現されるのか必見ですね。

ノサカラボの真骨頂!実力派メンバーで描く、人々の摩擦

ミステリーといえばノサカラボ。人気作家・野坂実さんを中心に2021年より始動したプロジェクトで、世界中にある名作ミステリーを舞台化・上演中。これまでにもクリスティー作品をはじめ、神津恭介シリーズなど重厚な作品を手がけています。

今回は翻訳に小田島恒志さん、小田島則子さんを迎え、難解なトリックに挑戦です。

緻密な伏線を敷いたシチュエーションコメディにも巧みな手腕を発揮する野坂さんですが、そんな彼が本作で主役にオファーしたのは原嘉孝さん。舞台を中心に活動し、ミュージカルからコメディ、シリアスなものまで幅広いジャンルに出演のほか、ドラマや映画でも大活躍の実力派です。2022年の『罠』から2年ぶりのノサカラボ出演となる原さんは、ハンサムなスポーツマンでプレイボーイの資産家・ネヴィルを演じます。

ネヴィルの最初の妻・オードリーに大抜擢されたのは元宝塚歌劇団星組トップスターの紅ゆずるさん。オードリーは「上品で落ち着きがある知的な女性」という設定ですが、コメディエンヌとしても名高い紅さんはこの役をどのように魅せるのでしょうか。新鮮な姿が拝めること間違いなしですね。

更に脇を固めるのは、舞台『鋼の錬金術師』主演で話題となった一色洋平さん、元宝塚歌劇団月組男役で現在も舞台に引っ張りだこの旺なつきさん、AKB48元メンバーで期待のエース岡部麟さん、主に舞台作品で活躍の実力派、細見大輔さん。

そして誰もが知るキャラクターの声でお馴染み、演出家としても活動されている中尾隆聖さんも出演します。

紅さん、旺さん、細見さん、中尾さんは2023年のノサカラボ『ホロー荘の殺人』で野坂さんの演出を体験済み。今回はどのような化学反応を見られるのか大注目です。

加えて新たに鳳翔大さん・大髙雄一郎さんの出演も決定し、期待値は高まるばかり。

宝塚歌劇団では同期の紅さんと鳳さんですが、今回演じるのはネヴィルの元妻と現妻です。ファンの方にはドキドキの組み合わせなのではないでしょうか。

豪華メンバーで挑むクリスティーの野心作。衝撃のラストはぜひ劇場でご覧ください!

ノサカラボ『ゼロ時間へ』は2024年10月3日(木)〜9日(水)東京・三越劇場にて、10月13日(日)〜14日(月祝)大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演されます。詳しくはこちらをご覧ください。

かとうまゆ

原さんも紅さんもコメディに強い印象なので、今回どのように演じられるのか、なかなか想像がつかずドキドキ……生で観るのが楽しみです!