今年6月に花園神社で、7月には新宿東急歌舞伎町タワー・ミラノ座で上演された『少女都市からの呼び声』。10月上演の第3弾はザ・スズナリでの新宿梁山泊 若衆公演です。

唐十郎の大傑作『少女都市からの呼び声』

10月に下北沢のザ・スズナリで新宿梁山泊 若衆公演として上演される『少女都市からの呼び声』。本作は1994年に文化庁芸術祭賞を受賞し、その後フランス・アビニョン演劇祭、韓国、カナダ、中国、台湾、アメリカで上演されました。唐十郎さんの大傑作であり、新宿梁山泊が長年上演してきた名作です。

今年の6月に花園神社で紫テントで上演、7月には安田章大さんと咲妃みゆさんを主演に迎え、新宿東急歌舞伎町タワー・ミラノ座でのオープニングシリーズとして公演を行いました。(関連記事「言葉の応酬と独自の世界観が魅了の唐作品『少女都市からの呼び声』、THEATER MILANO-Za オープニングシリーズにラインナップ!」はこちら

物語は手術室から始まります。親友・田口の見舞いに病院へとやってきた有沢とその婚約者のビン子。看護婦から、田口のお腹の中に女性の髪の毛が発見されたことを聞かされ、以前田口が「自分の中に自分以外の女性がいるような気がする」と言っていたことを思い出します。

一方、田口は夢の世界で行方不明になっていた妹・雪子を探す旅に出ていました。田口は雪子と再会を果たしますが、フィアンセであるフランケ醜態博士によって体をガラスに変える手術を施されていたのでした。雪子は温かな肉体の世界に憧れを持ちはじめ…。

風間杜夫さんは3作連続出演。全公演において、「連隊長」を演じています。他にも3連続出演キャストがいるため、6月、7月の公演で気になったキャストがいらした方は、今回はどの役を演じるのかに注目するという楽しみ方も出来ますね!

観客に共有される「夢と恐怖」

2010年のソウル公演上演時のパンフレットで、唐十郎さんは「夢と恐怖」というタイトルで以下のようにコメントを寄せています。

「「氷いちご」にスプーンをさし入れる時の、サクリとした音まで聞こえる。そんな小さな気配を呼び寄せなければこわれてしまうもろい世界、かと思うと、吹雪き吹き荒れるう満州の荒野、物語を横切る老人乞食の群れ、そして哀しみの地平を埋めつくす雪子の涙のガラス玉、この作品は、存在するものと、しないもの、つまり現実と非現実の融合の物語です。

男(田口)の内部には生まれなかった妹が住んでいます、男が夢見るときだけ起き上がるもろいガラスの少女、自分の変わりに生まれていたかもしれない少女、大胆でたくましい活力を放射する新宿梁山泊の舞台には、いつも、そんなはかなく美しい妹がひそんでいます。

僕にとって劇場は面白く美しい場所であるとともに、現実逃避ができるところであり、そしてまたおぞましく恐ろしい場でもあります。

私が皆さんと共有したいのは、私自身の夢と恐怖なのです」

新宿梁山泊第76回公演 若衆公演『少女都市からの呼び声』は10月17日(火)〜10月19日(木)にザ・スズナリにて上演です。詳細は公式HPにてご確認ください。 

ミワ

筆者は6月の紫テントでの公演を観劇しました。客席との距離は同じく近いですが、テントとはまた異なる形での公演にワクワクが止まりません!