劇作家・演出家の前川知大さんと世田谷パブリックシアターが5度目のタッグを組んで上演する新作公演『無駄な抵抗』が11月11日(土)に幕を開けます。出演者には、池谷のぶえさん、渡邊圭祐さん、松雪泰子さんら多彩な俳優陣が集結しました。

ギリシャ劇の大テーマである「運命」を描く

『無駄な抵抗』で演出を務めるのは、劇団イキウメで主宰を務めている前川知大さん。目に見えないものと人間との関わりや、日常の裏側にある世界からの人間の心理を描き、空間・時間をシームレスに編集していく演出が特徴です。

前川さんと世田谷パブリックシアターは、2009年に小泉八雲さんの怪奇文学作品の短編を構成した『奇ッ怪〜小泉八雲から聞いた話』で初めてタッグを組み、前川さんは第44回紀伊國屋演劇賞個人賞、第60回芸術選奨新人賞を受賞しました。2011年には『現代能楽集Ⅵ 奇ッ怪 其ノ弐』で第 19 回読売演劇大賞 大賞および最優秀演出家賞を受賞。その後も『遠野物語・奇ッ怪 其ノ参』、『終わりのない』と作品を発表してきました。

今回『無駄な抵抗』では4年ぶり5作目となるタッグを組み、ギリシャ悲劇の大テーマである「運命」と「自由意志」をテーマにした新作を上演します。

前川さんは、本作の上演にあたって「世田谷パブリックシアターとの創作では、劇団でのオリジナル作品とは少し違う地点から作品を立ち上げることができるのが魅力」と語り、本作については「ギリシャがスタート地点にあり、ギリシャ劇の大テーマである「運命」を描きます」としつつも、「舞台は現代で、私たちの日常から始まります。例えばそれは、人生を大きく左右する選択であったり、自分ではどうにもならないことにどう対処するのか、といった誰もが人生で経験することに自由意志と運命が、どう拮抗するのか、そういうところに迫っていけたらと思っています」とコメントしています。

『無駄な抵抗』は、かつて占い師として活躍し、地元に戻ってカウンセラーとして再出発した桜と、桜のもとにクライアントとして現れたかつての同級生・芽衣の物語。

芽衣は、かつて桜に言われた言葉に強く影響を受けていたと話します。桜にかけられた言葉が「自分の性格と人生を決定づけ、苦しんでいる。あれは予言であり、呪いだった」と。

駅前広場で始まる2人の対話は、次第に芽衣を取り巻く奇妙な運命を明らかにしていきます。幼い頃の父の態度、叔父との関係、予言を避けるためにした選択、母の残した手紙、芽衣の入れ込むホストの出生の秘密。叔父が探偵まで雇い、芽衣を監視していたこと。

2人は、芽衣を苦しめているものが何なのか、そして芽衣の心に深く刺さった桜の予言をどうするべきなのか、考えます。広場では、関係者たちが二人の会話に聞き耳を立てていて…。

池谷のぶえ、渡邊圭祐、松雪泰子ら多彩なキャストが集結

出演者には魅力的で多彩なキャストが勢揃いしました。イキウメ公演ほか数々の前川作品に出演し独自の存在感を発揮する池谷のぶえさん。

本作の重要な役どころである芽衣を演じる池谷さんは以下のようにコメントしています。
「運命について……私にとって運命は、なるべく身を委ねる方を選択してきた。しかしその解釈も、「運命」という、いったい何に操られているかわからないもののせいにしてしまった方が楽だと感じているからかもしれない。別の運命の可能性のことを考えてしまうことも、既に運命の中に組み込まれてるとしたら、そのことを考えている時間が悔しい…と、考えてしまう時間すら運命だと言われるのでしょうから。
信頼できる座組の皆さんと、なんだかとても太刀打ちできない巨大なものに挑もうとしている、静かな唸りを感じます。どんな運命になるのか、してやろうか、それこそが無駄な抵抗なのか…楽しみです」

桜を演じるのは、『ゲゲゲの先生へ』以来5年ぶりの前川作品出演となる松雪泰子さん。「前川さんの元、新たな創作に関われる事に喜びを感じております。これから立ち上がる世界を丁 寧に積み上げていきたいと思います。無駄な抵抗…どんな世界になるのか楽しみながら、創作し ていきたいと思います」と意気込みを語っています。

そして前川さんと世田谷パブリックシアターがタッグを組み、古代ギリシャの叙事詩『オデュッセイア』を元にしたSF作品『終わりのない』から続けての出演となる清水葉月さん。また今回が前川さんの作品に初出演となる渡邊圭祐さん、穂志もえかさんが出演。

また、前川作品に欠かせないイキウメの俳優、安井順平さん、浜田信也さん、盛隆二さん、森下創さん、大窪人衛さんが脇を固めます。

『無駄な抵抗』は11月11日(土)〜11月26日(日)に世田谷パブリックシアターにて上演です。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。

ミワ

「運命」というテーマ、そして『無駄な抵抗』というタイトル。二千年以上も昔から論じられているこのテーマに、前川さんと俳優陣がどのような結論を出したのか、とても楽しみです。