読書の秋。話題の新作ミュージカルや人気ミュージカルの原作を、本で触れてみるのはいかがでしょうか?今年の秋にミュージカルファンの皆さんへ薦めたい3作を、児童文学、小説、漫画からそれぞれ選んでみました。

『チョコレート工場の秘密』/ロアルド・ダール

最初にご紹介するのは、ロアルド・ダール氏の児童小説『チョコレート工場の秘密』。ティム・バートン監督の大ヒット映画『チャーリーとチョコレート工場』の原作として有名で、10月9日からは同タイトルのミュージカルの日本初上演が始まりました。(甘くてビターな香り漂う、仕掛け満載のミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』!開幕記念会見&ゲネプロリポートはこちら

12月8日には、チョコレート工場の工場長ウィリー・ウォンカの若き日の冒険を描く映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の公開も控えています。”チャリチョコ”フィーバーが起こりそうな今年は、まさに原作を読むのにピッタリです!

町はずれにあるチョコレート工場は、世界一有名なのに誰もその中を見たことがありません。門外不出とされてきたチョコレート工場を見学できるゴールデンチケットを手にした5人の幸運な子供たちは、ウォンカが作り上げた奇想天外な工場を冒険します。

物語の筋はバートン監督の映画と同じですが、小説と映画ではいくつもの違いがあり、それを比較しながら読むのも楽しいです。たとえば、映画でチャーリーは心優しい祖父がへそくりで買ってくれたチョコレートでゴールデンチケットを当てますが、小説では偶然拾ったお金でチョコレートを買い、幸運にもその中にゴールデンチケットが入っていたため工場に招待されています。

また柳瀬尚紀氏による翻訳版は、キャラクターの名前にシャレが効いているのもポイント。食べることが大好きな少年オーガスタスの苗字はブクブクトリー、ガムを噛み続ける少女ヴァイオレットの苗字はアゴストロングなど、個性的な人物を表す面白おかしいネーミングはクスッと笑えます。

『王妃マリー・アントワネット』/遠藤周作

ミュージカル『マリー・アントワネット』は、脚本家ミヒャエル・クンツェ、作曲家シルヴェスター・リーヴァイの代表作の1つ。その原作が、遠藤周作氏の小説『王妃マリー・アントワネット』です。

王妃マリー・アントワネットと貧しい少女マルグリットを中心に、フランス王政の衰退と革命下の群像劇が描かれています。

小説のマルグリットは舞台版よりも革命による暴力に肯定的な印象で、マリー・アントワネットが鞭打たれる姿を想像して悦に浸っていました。本作を読むとマルグリットが過酷な人生を歩み、いかに王政へ怒りを募らせていたかがよくわかるので、彼女がそのような妄想をするのにも納得です。

小説にはもう一人、アニエスという女性が登場します。修道女でありながら革命に賛成するアニエスは、市民の暴力的な行動に疑問を抱き、王室一家には正しい裁きを受け穏やかに暮らしてほしいと祈る女性です。革命精神を持ちつつ理性的で、王妃へ同情を示す舞台版のマルグリットの姿と少し重なります。

10月16日は、フランス最後の王妃マリー・アントワネットの命日。マリー・アントワネットがフランス王妃として母として、女性として何を思っていたのか、特に女性的な心情が細かく描かれている小説です。

上下巻2巻構成で、上巻はマリー・アントワネットがフランスへ嫁ぎ、首飾り事件が起こるまで、下巻は革命と王室一家の最期が描かれています。革命時代を生きた人々、そして王妃自身が来る10月16日をどのような気持ちで迎えたのか、ぜひこの小説から思いを馳せてみてください。

『ジョジョの奇妙な冒険 第一部 ファントムブラッド』/荒木飛呂彦

漫画作品から、2024年2月6日から上演される新作ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』の原作『ジョジョの奇妙な冒険 第一部 ファントムブラッド』を紹介します。(ジョジョ役は松下優也&有澤樟太郎!ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』はこちら

『ジョジョの奇妙な冒険』は、シリーズ累計発行部数1億2,000万部を誇る荒木飛呂彦氏の伝説的コミック。その原点となる『ジョジョの奇妙な冒険 第一部 ファントムブラッド』は、単行本第1巻から5巻に収録されていて、ジョースター家とディオの因縁の始まりを描いています。

舞台は19世紀のイギリス。貴族ジョースター家の一人息子であるジョナサン・ジョースターは、”ジョジョ”の愛称で呼ばれる紳士を志す少年です。

ある日、屋敷にスラム街出身の少年ディオが越してきます。ディオの亡き父がジョジョの父を助けたことを機にディオは養子に迎えられ、2人は平等に育てられますが、ディオにはある野心がありました。

それは友達から恋人、財産まで、ジョジョの全てを侵略し、奪うこと。やがて青年になり、ディオの危険な企みに気づいたジョジョ。彼の策略を暴こうとしますが、ディオは屋敷に飾られている石仮面を利用し、圧倒的な力を手に入れてしまい・・・。

迫力のあるビジュアルと、演劇チックな独特な言い回しのセリフ。そして謎の石仮面によって数奇な運命を辿るジョジョとディオの冒険譚に、夢中になること間違いなしです。

「メメタァ」、「ズキュウウウン」といった、思わず声に出したくなるような効果音もクセになります。このシーン、ミュージカルではどうなるんだろう?!と、想像を膨らませて読んでみてはいかがでしょうか?

さきこ

原作の本を読むことで、これから観劇する作品の期待が深まったり既に感激した作品の余韻に浸ることができてミュージカル愛も深まることでしょう。コミック原作のグランドミュージカルが話題になっている昨今は、漫画作品も積極的にチェックしていきたいものですね!