トニー賞3部門とピューリッツァー賞を受賞して大きく注目されたミュージカル『next to normal』。2024年12月、3度目となる日本公演が東京のシアタークリエで開幕します。前回に引き続き、日本独自の演出・デザインによる舞台は必見です。
家族や社会の問題を描いた意欲作『next to normal』
ミュージカル『next to normal』は、音楽をトム・キット、脚本・歌詞をブライアン・ヨーキーが手掛けた作品です。2009年のトニー賞では11部門にノミネートされ、主演女優賞・楽曲賞・編曲賞の3部門を受賞。さらに2010年にはピューリッツァー賞の戯曲部門を受賞し、ミュージカル作品としては1996年の『RENT』以来となる快挙を達成しました。
物語の始まりは、ある家族の朝の風景から。主人公のダイアナは、夫のダンと息子のゲイブ、娘のナタリーと暮らしています。一見どこにでもいそうな4人家族ですが、実はダイアナは長く双極性障害を患っていました。普通ではない家族にストレスを感じているナタリーは、クラスメイトのヘンリーと出会い、次第に自分の悩みを打ち明けるように。一方で、病状が悪化するばかりのダイアナを案じ、ダンは主治医を替えることを決意。新しい主治医のドクター・マッデンは、ダイアナに寄り添いながら治療を進めていくのですが…。
本作では、ダイアナを含めて6人のキャラクターが登場します。妻と夫、親と子、そして医者と患者。さまざまな関係性を通して描かれるのは、家族間の絆と崩壊から再生までの物語です。また、心の病とどうやって向き合うのか、という社会的なテーマにも踏み込んでいて、深く考えさせられます。
ちなみに、タイトルの『next to normal』は直訳すると「普通の隣」。これはつまり、普通から外れた世界を指しているのでしょうか?そもそも、“普通”とは何なのでしょうか?劇場にその答えを探しに行ってみませんか。
日本オリジナルの演出・デザインで再演!
ミュージカル『next to normal』が日本で初演されたのは、2013年。当時の演出・デザインは、名作『RENT』の演出家であるマイケル・グライフのオリジナル版と同じでした。
その後、2022年に再演されるにあたって、上田一豪さんが演出を担当することに。日本独自の演出・デザインで構築された舞台に、2組のチーム制で臨みました。
今回の2024年版は、3度目の日本公演であると同時に、日本オリジナル演出での再演にもあたります。2022年版に引き続き、演出は上田一豪さん。『この世界の片隅に』の脚本・演出や『Catch Me If You Can』の訳詞・翻訳・演出などを手掛け、多彩な作品を世に送り出しています。
また、訳詞は前回と同じく小林香さんによるもの。演出のみならず、海外ミュージカルの訳詞や翻訳にも携わられているので、劇中歌の歌詞も聞き逃せませんね。
新旧キャスト一丸となって、3度目の日本公演!
2024年版『next to normal』では、ダイアナ役の望海風斗さん、ゲイブ役の甲斐翔真さん、ダン役の渡辺大輔さんが、2022年版からそのまま続投します。
望海さんは元宝塚歌劇団の雪組トップスターで、女優や歌手として多彩に活動。『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』でのサティーン役が記憶に新しい方も多いのでは。
また、甲斐さんといえば数々の話題作に出演し、勢いのあるミュージカル俳優のひとり。これまでに他作品で望海さんと共演したこともあり、2年ぶりの再演では、親子としての演技もより深みを増していそうです。(関連記事:甲斐翔真が、緻密な分析とリアルな感覚で再演に挑む。『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』)
渡辺さんも、舞台を中心にテレビや映画などで幅広く活躍されています。実力と経験を兼ね揃えたキャストが、カンパニーを支えます。
もちろん、新しいキャストも注目のポイントです。娘ナタリー役は、『この世界の片隅に』でヒロインの妹を好演した小向なるさん。そして、日本語だけでなく英訳での歌唱も得意という吉高志音さんが、ナタリーのクラスメート・ヘンリーを演じます。
ダイアナの主治医となるドクター・マッデンには、中河内雅貴さんがキャスティング。舞台やミュージカルへの出演経験も豊富で、物語のカギとなる役をどう演じられるのか期待が高まります。
2年前に初めて日本独自の演出・デザインで上演された作品が、今回さらにパワーアップして帰ってきます。以前観劇された方も初見の方も、きっと心揺さぶられるのではないでしょうか。
ミュージカル『next to normal』は、12月6日(金)から30日(月)まで東京・日比谷シアタークリエにて上演。その後、2025年1月5日(日)から7日(火)まで博多座にて福岡公演、1月11日(土)から13日(月・祝)まで兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホールにて兵庫公演が行われます。チケットの一般前売は10月19日(土)より開始。詳細は公式HPをご確認ください。
“普通の隣”と訳せるタイトルに、「どういう意味なんだろう?」と興味を掻き立てられます。個人的には、『ムーラン・ルージュ!』に出演されたメンバーが多いという点でも気になっている作品です!