みなさんは『ミセン』というマンガをご存じですか?韓国社会におけるサラリーマンの現実を、鮮明かつリアルに描いて社会現象を巻き起こした、韓国のウェブコミック発の大ヒット作品です。この作品が2025年、日本のホリプロと韓国のクリエイター陣のタッグによって、世界で初めてミュージカル化されます。今回は、作品が人気を博した背景から、ミュージカル『ミセン』のキャストまで、分かりやすくご紹介します!
社会現象を巻き起こした歴史的マンガ『ミセン』
原作である『ミセン』は、韓国のウェブコミック・WEBTOON(ウェブトゥーン)で2012年1月から2013年8月まで連載されたマンガ作品で、単行本の売上は累計300万部を突破しています。日本では、2016年よりピッコマで連載されました。
また、2014年に韓国でドラマ化された際には、最終話でケーブルテレビでは歴代視聴率第2位となる10.3%を記録して、異例の大ヒットとなりました。ドラマは、「韓国のエミー賞」と呼ばれる百想芸術大賞や、コリアドラマアワードを総なめにし、「ミセンシンドローム」と呼ばれる社会現象を巻き起こしたといわれています。
その人気を受けて、日本では2016年に『HOPE~期待ゼロの新入社員~』というタイトルでドラマ化。主人公を演じたHey!Say!JUMPの中島裕翔さんが、ゴールデン帯での連続ドラマ単独初主演となったことでも話題となりました。第20回文化庁メディア芸術祭では、マンガ部門 優秀賞を受賞しています。
では、なぜ『ミセン』はこれほどの人気を集めているのでしょうか?その理由は、この作品が社会の縮図を描いているからのようです。ここからは、この謎を紐解くために必要なあらすじをご紹介したいと思います。
ユニークな設定で現代社会を丹念に描き出す作品
『ミセン』のあらすじは、以下の通りです。
主人公のチャン・グレは、子供の頃から囲碁のプロ棋士になることを目指し厳しい修練を重ねてきたが、囲碁のプロ棋士になる夢を諦めざるを得なくなり、社会に放り出されてしまう。特別な学歴やスキルがない彼は、働くことに対して強い不安を抱えながらも、知人の紹介で大手貿易会社「ワン・インターナショナル」のインターンシップに参加することに。
しかし、入社早々、グレは厳しい現実に直面する。熾烈な争いを勝ち抜いてきたエリートばかりの同期インターンたちの中で、企業社会での経験が皆無のグレは、明らかに遅れを取っていた。その一方、個性的なインターンメンバーたちも、それぞれが異なる課題に直面しながらも競い合っている。
その後、配属された第3課で、情熱と人間味あふれるオ・サンシク課長の指導の下、グレは自分の経験や囲碁で培った戦略的思考を仕事に応用し、少しずつ成果を上げていく。インターン生たちもそれぞれの試練を乗り越え、個々の成長だけでなく、互いに支え合いながら成長する重要性を学んでいくことになる。
ちなみに「ミセン(未生)」は囲碁用語で、「死に石(相手方に事実上取られている石)」に見えても、まだ完全な「死に石」ではなく、どちらにも転ぶ石を指します。どこか前向きさも感じる単語を冠したこの作品は、企業内での出来事を通じて、働くことの意味、人間関係の複雑さや仲間との絆、個々の成長と葛藤をリアルに描いています。まさに社会の縮図であり、現代に生きる人々の心を掴む作品ですね。
ホリプロと韓国クリエイター陣のタッグが実現
ミュージカル『ミセン』は、ホリプロが韓国のクリエイター陣とタッグを組む、初めての作品です。脚本・歌詞をパク・ヘリムさん、音楽をチェ・ジョンユンさんが担当し、演出を、『キングアーサー』では日本でも演出を担当したオ・ルピナさんが務めます。韓国・ソウルでは韓国で活躍する俳優が参加してリーディング・ワークショップが行われ、創作活動が進んでいます。
パク・ヘリムさんは2024年5月に日本でも上演された『ナビレラ』でもオリジナル台本・作詞を手がけており、「日本は演劇とミュージカルの間にある特別な何かを見出しているような気がします。私の書く作品はショーミュージカルというよりもドラマ的な要素が強いので、日本ではより感情的に美しいと感じる瞬間が多いです。なので、『ミセン』も韓国の他のミュージカルスタイルとは違うアプローチで書いた部分もあり、日本で上演される際はより演劇的でドラマ性が強く、俳優同士のケミストリーによってさらに深く表現されることを願っています」と語りました。
キャスト陣もとても豪華です。主人公を演じるのは前田公輝さん。NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』(2022年)やドラマ『366日』(2024年)、ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』『スリル・ミー』などで注目を集めている、今をときめく人気俳優のお1人です。
他にも、グレが所属することになる営業3課のオ・サンシク課長に橋本じゅんさん、グレの母親とワーキングマザーでありオ課長の同期ソン・ジヨンの一人二役に安蘭けいさん、グレの同期インターン社員に清水くるみさん(アン・ヨンイ役)、内海啓貴さん(ハン・ソギュル役)、糸川耀士郎さん(チャン・ベッキ役)ほか、石川禅さん、中井智彦さん、あべこうじさん、東山光明さんなどが名を連ねています。
日本の現代社会にも共通する「働き生きること」にまつわる悩みや迷いの数々。それらを2か国の視点から舞台に立ち上げたとき、いったいどんな世界観があらわれるのでしょうか?ぜひ、その目で確かめてみてくださいね。
ミュージカル『ミセン』は、2月6日(木)から11日(火・祝)は東京・めぐろパーシモンホール 大ホールにて上演。2025年1月10日(金)から14日(火)まで、大阪の新歌舞伎座(10日はプレビュー公演)、2月1日(土)・2日(日)には愛知県芸術劇場大ホールでのツアー公演が予定されています。詳細は公式サイトをご確認ください。
「サラリーマンのバイブル」とまで呼ばれている『ミセン』。どんな風に現代社会が描かれているのか、登場人物たちはどう成長を遂げるのか、どんどん興味がわいてきます。「働き生きること」を五感で深く掘り下げてみたい方は要チェックです!