日々、多くの作品が上演されている小劇場演劇。どれを観たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、演劇を愛するAudience編集部が独断と偏見で、12月に上演している作品の中からおすすめ作品を3本セレクトしてみました!
「日本の劇団」版、密室劇の原点『十二人の怒れる男』待望のカムバック
「日本の劇団」は、日本で10年以上活動している老舗劇団からそれぞれ劇団員の代表者1名が参加し、出演者全員が劇団員のみで構成される企画。2022年にプロジェクト第1弾として劇団チョコレートケーキの日澤雄介さん演出の『十二人の怒れる男』が予定されていましたが、新型コロナウイルスの影響で中止に。
今回、待望のカムバック公演として上演されます。レジナルド・ローズの原作をもとに、下平慶祐さんが翻訳・脚本、日澤さんが演出を務めます。
『十二人の怒れる男』の舞台は、父親を殺害した容疑で裁かれようとしている少年の裁判。有罪が決定的と思われたその時、12人の陪審員のうち1人が無罪を主張しました。そうして改めて審議が行われることになり…。陪審員8番の無罪の主張は、残りの11人の有罪という決断を変えることができるのでしょうか?
密室での白熱する議論に目が離せない作品です。
本作は、原作者であるレジナルド・ローズさんが実際に殺人事件の陪審員になったことがきっかけで物語となったそう。始まりは1954年に放映されたアメリカのテレビドラマですが、高評価を受け1957年に映画化されました。ドラマも映画版も数多くの賞を受賞し、評価され続け、歴史に残る功績を残しています。
日澤さんは、今回の上演にあたり「やっと秋の足音が聞こえて参りました。過ごしやすくなったのは喜ばしい事なのですが、2024年の今になっても世の中は何も変わらず争いが終わることはありません。立場もあれば言い分もあるでしょうが残念なことです。社会を構成する様々な意見を持った人間が、一つの事柄に対して真っすぐに向き合う事はもうできないのでしょうか。対話の無くなった時代に「十二人の怒れる男」を上演できるのは痛快でなりません。個性豊かな13名の俳優と共に怒りの沸点を探しに行きたいと思います」とコメントしています。
出演者にはスタジオライフの青木隆敏さん、アナログスイッチの秋本雄基さん、イッツフォーリーズの浅川仁志さん、劇団鹿殺しの浅野康之さん、劇団チョコレートケーキの岡本篤さん、文学座の木津誠之さん、劇団スーパー・エキセントリック・シアターの栗原功平さん、劇団銅鑼の佐藤文雄さん、劇団青年座の豊田茂さん、演劇集団キャラメルボックスの畑中智行さん、柿喰う客の牧田哲也さん、花組芝居の横道毅さんが名を連ねました。また、イッツフォーリーズの志賀遼馬さんが友情出演として参加です。
密室劇の原点であり、歴史的傑作と名高い『十二人の怒れる男』を、人気老舗劇団の俳優たちが一堂に会して上演するお祭りのような本公演は見逃せません!日本の劇団『十二人の怒れる男』は、12月11日(水)〜12月15日(日)に東京・下北沢 駅前劇場にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。
関西で注目の劇団・幻灯劇場が描く、現代人の“痛みをとりもどす旅”『フィストダイバー』
幻灯劇場は、劇作家や映像作家、俳優、ダンサー、写真家など多様な作家が集まり、詩的でユーモラスな言葉運びと、想像力を刺激する身体表現で注目を集めてきました。旗揚げ公演『ミルユメコリオ』では主宰の藤井颯太郎さんがせんだい短編戯曲賞を最年少で受賞。文化庁文化交流事業として『56db』を製作、二ヶ国五都市で上演するなど 国内外で挑戦的な作品を発表し続けています。最近では、日本センチュリー交響楽団やAぇ! groupとのコラボが話題を呼びました。
新作公演『フィストダイバー』は、痛みに鈍くなってしまった現代人の“痛みをとりもどす旅”が描かれる“超鈍感群像劇”。本城祐哉さんが手がけるソリッドな音楽と共に描かれます。
山から熊が降りてくる!
アーバンな暮らしに憧れたのか腹が減ったのか、とにかくヤツらは都会へ繰り出してくる。いつかこの街にも現れるだろう。ところで、この街の動物園には寝たきりの熊がいる。
この街の人達は知らない。寝たきりの熊が今日も夜の街を散歩していることを。
出演者には、谷風作さん、村上亮太朗さん、松本真依さん、橘カレンさん、宇留野花さん、鳩川七海さん、藤井颯太郎さんが名を連ねました。
作・演出を務める藤井さんは本作の上演にあたり「“あまりに痛すぎるので、痛み止めを飲み過ぎてみたら、取り返しがつかないくらい痛くなくなっちゃった。焦る。”みたいな作品をつくりました。最近はあちこちでそんなことばかり起きてる気がします。平気な振りをして痩せ我慢したことが、数十年後、不思議な呪いになって帰ってくる。みたいな。痩せ我慢しちゃう人、観に来てください」とコメントしています。
関西演劇祭では音楽劇『0番地』で脚本賞を受賞、Aぇ! groupとコラボし上演した音楽劇『鬱憤』でも注目の幻灯劇場。京都公演では初日からトリプルコールだったという本作品は「舞台美術を使った新しい演出アイディアの実験を重ねている」とのことで、京都公演からさらにブラッシュアップされた東京公演に期待が高まります。
幻灯劇場『フィストダイバー』は、12月27日(金) 〜12月29日(日) に東京・浅草九劇で上演されます。上演時間は1時間25分を予定。詳細は公式HPをご確認ください。
現代社会を生きる親子の愛憎と生き様を切実に描く現代香港演劇の衝撃作 月波兎『ラスト・サパー』
月波兎は2024年から活動を始めた演劇集団。若い活力のある演出家、もしくは作家と共に次世代に引き続いていく演劇の創造を目的として結成されました。
月波兎が第二回公演として上演するのが『ラスト・サパー』。本作は鄭國偉(ジェン グォ ワイ)による作品で、香港小劇場大賞「最優秀脚本賞」、第21回香港演劇大賞「最優秀脚本賞」、韓国ソウル演劇人大賞「最優秀作品賞」を受賞し、現在でも香港を初め、台湾、ソウル、北京、上海、広州など各地で上演各地で再演が続いている作品です。
⽗に虐待され保護施設で育った息子は、中学卒業後、職を転々としていた。ある日、久しぶりに母と食事をすることになり、恋⼈の話、仕事の話、家族の話と食事をしながら会話を楽しもうとするも、とことん噛み合わない母と息子。
やがて浮き彫りになる二人の秘密とは…。
現代社会を生きる親子の愛憎と生き様を切実に、時に滑稽に描く、現代香港演劇の衝撃作となっています。
翻訳・演出をインディー・チャンさんが手がけ、出演者には佐藤銀平さん、奥山美代子さんが名を連ね、佐藤B作さんが声の出演をします。
文学座の新進気鋭の演出家で香港出身のインディー・チャンさんが出身地の作品を手掛けること、現代社会を生きる親子を描いた作品での佐藤B作さんと銀平さんのある種の共演にも注目です!
月波兎『ラスト・サパー』は、12月11日(水)〜12月15日(日)に、東京・雑遊にて上演です。上演時間は1時間15分を予定しています。詳細は公式HPをご確認ください。
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