2024年5月にスタートした【彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd】。数々のシェイクスピア作品に出演する実力派俳優・吉田鋼太郎さんが芸術監督を務め、シェイクスピアの名作を演出するシリーズです。2025年5月8日(木)からその第2弾として『マクベス』が上演されます。タイトルロールのマクベスを藤原竜也さん、その妻・マクベス夫人を土屋太鳳さんが演じます。マクベスの友人・バンクォーを河内大和さん、マクダフを廣瀬友祐さん、ダンカン王をたかお鷹さんが務め、マクベスに不思議な予言を与える3人の魔女のひとりを、吉田鋼太郎さんが演じることが決定しています。

『マクベス』とは?魔女の予言が導く、野心と破滅の物語

『マクベス』はシェイクスピアの4大作品のひとつ。1606年頃に書かれたとされ、数あるシェイクスピア作品のなかでも特に人気の高い作品です。

物語は、スコットランド王ダンカンの臣下・マクベスが、陣営に戻る途中に3人の魔女と出会うところから物語が始まります。

3人の魔女たちはマクベスに対し「コーダーの領主となるお方」「いずれ王になられるお方」と謎めいた予言を呼びかけます。そこへダンカンの使者がやってきて、マクベスが功績のためにコーダーの領主になることを告げます。

魔女たちの予言が当たったことに驚くマクベスと、その友人であるバンクォー。それを手紙で知らされたマクベス夫人は、ダンカンを殺して王の座に就くことを夫に進言するのでした。

ダンカンを殺したことで王座に就いたものの、次第に精神の安定を欠いていくマクベス。やがて打倒マクベスのために、貴族マクダフが立ち上がり……。野心と欲望に憑りつかれた人間の悲劇を描く本作は、世界中の演劇、文学、シェイクスピアファンから愛され続ける名作です。

日本でも繰り返し上演され、過去には唐沢寿明さんや佐々木蔵之介さん、野村萬斎さんなど多くの実力派がマクベスを演じてきました。

蜷川幸雄の遺志を継ぐ、シェイクスピアへの新たな挑戦

世界的演出家・蜷川幸雄さんによって、1998年から国内外に話題作を上演してきた『彩の国シェイクスピア・シリーズ』。本シリーズの目的は、シェイクスピアの全37作品をすべて上演することでした。

2016年に蜷川幸雄さんが亡くなり、2017年からは吉田鋼太郎さんが芸術監督を引き継ぐことになりました。

2020年に第36弾『ジョン王』が上演中止になったものの、2021年に上演された第37弾『終わりよければすべてよし』を持って、全作品の上演が完了しました(『ジョン王』は2023年に改めて上演されています)。

そんななか、37作品のなかで奥深さをもう一度伝えたい作品を芸術監督・吉田鋼太郎さんが選出し、年に一度を目安にシェイクスピア作品を上演していくのが『彩の国シェイクスピア・シリーズ2nⅾ』なのです。

2024年5月に、第1弾として上演されたのが、シェイクスピア作品のなかで最も有名な『ハムレット』です。さらに今回の『マクベス』に続き、2026年には『リア王』の上演も決定しています。

ホリプロステージ公式サイトによれば、本シリーズの目標は「シェイクスピア演劇をより多くの方に気軽に楽しんでもらうこと」。シェイクスピアは難しい、わかりづらいと敬遠される人も多いかも知れませんが、このシリーズの上演をきっかけに、より多くの方にシェイクスピア作品を楽しんでもらえることが期待できます。

『ハムレット』から『マクベス』まで。藤原竜也が魅せる狂気

本公演で主役のマクベスを演じる藤原竜也さん。

映画やドラマで大活躍の藤原さんは、いまや日本を代表する俳優のひとりと言っても過言ではないでしょう。

彼のデビューのきっかけは、1997年に上演された蜷川幸雄さん演出の舞台『身毒丸』(寺山修司・原作)でした。以来、蜷川作品を中心とした多くの舞台に主演し、蜷川作品にはなくてはならない存在となっています。

そんな藤原さんは、過去に蜷川さんとタッグを組んで数々のシェイクスピア作品に挑戦してきました。

2003年と2015年には『ハムレット』、2004年には『ロミオとジュリエット』にそれぞれ主演しています。そのほか2007年の『ヴェニスの商人』では主人公の親友バサーニオ、2014年の『ジュリアス・シーザー』では、ジュリアス・シーザーの腹心・アントニーを演じています(ともに蜷川幸雄演出)。

2016年に蜷川さんが亡くなってからは、吉田鋼太郎さん演出の2017年『アテネのタイモン』、2021年の『終わりよければすべてよし』など、主演助演関わらずさまざまなシェイクスピア作品に出演してきた藤原さん。

意外にも、マクベスを演じるのは今回が初めてです。次第に狂気におかされていくマクベスという役を藤原さんがどう演じてくれるのか楽しみです。

新境地に期待。マクベス夫人を演じる土屋太鳳

藤原さんとは2014年の映画『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』で共演歴のある土屋太鳳さん。今回、シェイクスピア作品に挑戦するのは初めてです。

先述の通り、マクベス夫人はシェイクスピア作品を代表する悪女、とされており、過去には大竹しのぶさんや天海祐希さんといった名だたる女優さんたちがこの役を演じています。

土屋さんは多くのドラマや映画に出演されていますが、天真爛漫で可愛らしい女優さんといったイメージを持った方も多いのではないでしょうか。実際、筆者も初めてキャスティングを知った際、マクベス夫人と土屋さんに「意外だな」というイメージを持ちました。

しかし土屋さんは、2018年に公開された映画『累 かさね』で、これまでのイメージを覆す新境地を拓いています。土屋さんは本作品で、美貌に恵まれながらも花開かず、女優として大成することに執念を燃やす丹沢ニナを演じ、大きな反響を呼びました。

土屋さんがニナを演じた経験は、今回のマクベス夫人に大きな影響を与えたのではないでしょうか。新境地を拓いた土屋さんが、藤原さんのマクベスとどんな化学反応を起こすのか、期待が高まります。

彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2『マクベス』は2025年5月8日(木)から5月25日(日)まで彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて上演。その後、宮城・愛知・広島・福岡・大阪公演が行われます。公式HPはこちら

糸崎 舞

シェイクスピアの描く悲劇のなかでも、人間の脆さと弱さ、そして業の深さを炙り出す『マクベス』。単なる悲劇にとどまらず、鑑賞した私たちにたくさんの問いかけを残す作品です。藤原竜也さんのマクベスと土屋太鳳さんのマクベス夫人がどんなドラマを見せてくれるのか、今からわくわくします!