ニューヨーク州マンハッタンの繁華街を南北に貫くブロードウェイ。タイムズスクエア周辺に劇場街が広がっていることから、ミュージカルの代名詞ともなっています。演劇を愛する人なら、一度は憧れる場所かもしれません。今回は、そんなブロードウェイで観劇するのにおすすめの作品をご紹介します。
アラジン(Aladdin)
1992年に公開されたディズニーの大人気アニメーション映画『アラジン』。ディズニーの黄金期を形づくった不朽の名作です。その映画をもとにしたブロードウェイミュージカル『アラジン』は、壮大な冒険とロマンス、コミカルな演出が魅力で、第68回トニー賞では5部門にノミネートされました。
プロデューサーを手掛けるのはアラン・メンケン。ブロードウェイミュージカル『ライオン・キング(THE LION KING)』も手掛けており、ディズニー音楽の巨匠と呼ばれています。アカデミー作曲賞、アカデミー歌曲賞、グラミー賞、トニー賞など様々な賞を受賞してきた、アメリカを代表するエンターテイナーのひとりです。
神秘と魅惑の都・アグラバー。貧しい盗賊でありながら、誰からも愛される優しい心を持つ青年アラジンは、婚約に嫌気がさして王宮を抜け出した王女ジャスミンと出会い、その魅力に一目惚れします。そんなある日、悪の魔法使いジャファーに捕まったアラジンは、脱獄と引き換えに、洞窟から魔法のランプを手に入れてくるよう仕向けられ、危険な洞窟に向かいました。
洞窟の中でアラジンが出会ったのは、魔法のランプに閉じ込められた魔人ジーニー。どんな願いも3つだけ叶えるというジーニーの力を使って、アラジンはジャスミンの心を射止めるべく冒険を始めます。旅の末に彼が知る、人の本当の価値とはーー。友情、愛、友情、自由、自分らしく生きる大切さを教えてくれる内容になっています。
『A Whole New World』や『Friend Like Me』など名曲ばかりな本作ですが、ブロードウェイ版の新曲のひとつ『Proud of Your Boy』もおすすめ。盗みを働いて食いつないではいるものの、亡き母を慕い、「いつかは母にとって恥ずかしくない人間になりたい」と願うアラジンのナンバーです。
タイトルでもある「Proud of your boy」は「母さんにとって自慢の息子」を意味し、アラジンは曲中で何度もこのフレーズを口にします。また、終盤に登場する”Since I wasn’t born perfect like Dad or you. Mom, I will try to.”からは、両親を尊敬するアラジンのまっすぐな性格を感じられ、誰もが彼の幸せな未来を願ってしまうことでしょう。
アウトサイダー(The Outsiders)
ブロードウェイ最高峰の賞であるトニー賞のミュージカル作品賞(第77回)を受賞した作品です。1967年に出版されてベストセラーを記録し、フランシス・フォード・コッポラ監督によって映画化もされた、S.E.ヒントンのデビュー作が原作となっています。
ブロードウェイミュージカル『アウトサイダー』のプロデューサーは、俳優・モデルとして有名なアンジェリーナ・ジョリー。同作における娘ヴィヴィアンとの共同プロデュースは話題になりました。
舞台は1967年代のオクラホマ州。裕福な家庭出身のソッシュと低所得者層のグリーサーズ、対立する2つの若者グループがありました。
主人公ポニーボーイ・カーティスはグリーサーズ所属。事故で両親を亡くした彼は、兄と暮らしながら、親友ジョニーと一緒に喧嘩ばかりの日々を送っていました。ジョニーは家庭環境が悪く、街に住みついているグリーサーズのダリーはそれを気にかけ、いざというときのためにナイフを渡します。
ある日、ポニーボーイはソッシュのリーダー・ボブの彼女、チェリーと恋に落ちます。チェリーを巡って激しい衝突が発生し、自己防衛のためにジョニーはボブを刺殺。ダリーの力を借りて逃亡したポニーボーイとジョニーは、田舎の教会に身を潜めます。
罪悪感に苦しむ日々。そんななか、ポニーボーイの捨てたタバコによって教会が火事になります。2人は取り残された子どもたちを救いますが、重傷を負ったジョニーは遺言を残して亡くなってしまいました。ジョニーの死に責任を感じるダリーと、遺言を受け取ったポニーボーイがとった行動とはーー。
『アウトサイダー』の代表曲といえば、映画版のためにスティーヴィー・ワンダーが作詞した『Stay Gold』!アメリカで最も権威のある賞と呼ばれるピューリッツァー賞を4度受賞した詩人、ロバート・フロストの「Nothing Gold can stay」がベースとなっています。
楽曲は、登場人物たちが懐かしい記憶に想いを馳せる、どこか愁いを帯びたメロディーが特徴的。「一生はほんの一瞬で、何事も金色に輝き続けることはできないけれど、想いは鮮やかなまま胸に残しておける」という、どこか祈りのような感情が詰め込まれています。
わたしが好きなフレーズは、曲の最後に登場する”Though not imagined. All things that happen. Will age too old. Though gold.”。どれだけその瞬間が輝いていても、未来のことなど想像すらしていなくても、すべての物事は朽ちてゆく。だからこそ明日も全力で生きよう。そんなほのかな光を心に灯してくれることばです。

豪華絢爛なステージと衣装、一流のパフォーマー、熱気に溢れた観客。世界最高峰のミュージカルを体感したい方は、ぜひブロードウェイを訪れてみてはいかがでしょうか?