2025年8月~9月に東京・世田谷パブリックシアターにて、その後、福岡・大阪・愛知にてBunkamura Production 2025『アリババ』『愛の乞食』の二作連続上演が決定しました。アングラ演劇の旗手 唐十郎さんの初期作品を“関西弁”で再解釈し、新宿梁山泊 主宰の金守珍さんが演出を務めます。主演を務めるのはSUPER EIGHTの安田章大さんです。
安田章大に馴染んだ関西弁で再解釈
唐十郎さんが旗揚げした劇団「状況劇場」によって1966年に『アリババ』が、1970年に『愛の乞食』が初演されました。現実と幻想、現在と過去が溶け合うそれぞれの物語は、叙情的に紡がれる言葉の数々で、人々の中に眠る普遍的なロマンを呼び起こします。
演出を務めるのは、2025年6月に新宿・花園神社境内に特設される新宿梁山泊主催のテント公演でも同演目を演出・上演する金守珍さん。唐十郎さんと蜷川幸雄さんの両虎を師とし、アンダーグラウンド演劇に真正面から取り組んできた金さんが、唐さんの独特な世界観を関西弁で再解釈します。
そして主演を務めるのは、SUPER EIGHTの安田章大さん。2023年に主演した『少女都市からの呼び声』で初めて唐作品に挑戦した安田さんは、新宿梁山泊主催のテント公演『アリババ』『愛の乞食』にも出演することが決定しています。同じ演目でありながら、8月に世田谷パブリックシアターで上演する本公演ではあえて全編“関西弁”で演じ、関西出身の安田さんが持つ言葉の感覚を通じて、唐さんが紡いだ叙情的な台詞の数々を新たなアプローチで届けます。
このアプローチについて演出の金守珍さんは、「2023年、唐十郎作『少女都市からの呼び声』の稽古中、安田章大さんの告白に驚愕した。「自分は兵庫県の生まれなので、唐さんの台詞を頭の中で関西弁にして気持ちを作り、そこから役を深める」というのだ。だったら思い切って、すべて関西の言葉で上演してみたらどうだろう。唐さんの戯曲は、外国語に翻訳されて海外に紹介されているのだから、同じように関西出身の役者が標準語の不自由さから解放されたら、より豊かに演じられるはずだ」とコメント。
また『アリババ』と『愛の乞食』の二作連続上演については「『アリババ』に登場する堕胎児たちが『愛の乞食』で海賊たちに生まれ変わる醍醐味を味わってもらいたいからだ。唐さんが作品世界をどのように広げていったか。その軌跡も、とくとご覧あれ!」と語りました。
安田さんは「「状況劇場」で産まれ、受け継がれてきたこの二作。令和の時代に表現する意味は2つです。1つ目は、唐十郎さんの脳を好きに泳ぎ倒して欲しいのです。正解を知っているのは唐さんだけなので、唐さんの頭の中は唐さんしか知り得ない。だから、唐さんが紡ぎ残してくださった綺麗な音符でFantasyの世界を旅して頂きたい。2つ目は、唐十郎さんの脳の中でリフレインされてきた世界はなんだったのかを”感じて欲しい”のです。
唐さんの戯曲を関西弁。賛否両論が出ることを承知で皆さんと挑ませて頂きます。唐さんの中に答えはあっても、唐さんが戯曲への理解を他者に委ねてくださっていたからこそ、この展開は産まれたものです。
関西弁の唐十郎戯曲『アリババ』、『愛の乞食』。人情味と親近感をうまく表現できる関西弁を活かして役者全員で唐さんの脳を泳いできます。共に泳ぎ倒してくだされば幸いです。日々起きる何かに対して解らなくて答えを探すのがあなたのもらった人生の一部ならば何か自分に残る音符を探す旅に来て頂けると我が幸せです。テントとは違う関西弁の異世界へようこそ!」とコメントしました。

そして共演には、元宝塚歌劇団雪組トップスターで退団後はさまざまなジャンルの舞台で活躍する壮一帆さん、弱冠19歳にして朝の連続テレビ小説や大河ドラマに出演し注目を集める伊東蒼さん、タレントやグルメリポーターとして知られる一方で俳優としても劇中で強い存在感を放つ彦摩呂さん、独特の笑いのセンスと卓越した演技力を併せ持つ福田転球さん、どんな役でも哀愁漂う容姿と芝居で人間味を感じさせる温水洋一さん、海外映画に多数出演し最近では全編フランス語の芝居に挑戦するなど体当たりの演技を見せる伊原剛志さん、さらに、2021年に72歳にして初のテント芝居に挑戦、その後も出演を重ね、唐作品への造詣を深める風間杜夫さんが名を連ねます。(伊東蒼さん、伊原剛志さんは『愛の乞食』のみの出演、風間杜夫さんは東京公演・福岡公演の『アリババ』のみの出演)
<あらすじ>
『アリババ』
雨の中、真夜中の高速道路を駆け抜けて行った黒い馬を探していた宿六。そしてその妻の貧子。二人のもとに老人が姿を現し、あの馬は赤いはずだと言う。ブランコが馬の嘶きのように音を立てて揺れだしたころ、隅田川に流した遠い記憶が甦ってくる。「朝は海の中、昼は丘、夜は川の中。それはなあに?」
『愛の乞食』
生命保険会社に勤める田口は、立ち寄った都内の公衆便所にいた具合の悪そうなミドリのおばさん(実は元海賊の尼蔵)を介抱していた。そこにセーラー服姿の少女・万寿シャゲが帰ってくる。今夜からこの公衆便所は、キャバレエ「豆満江ズマンコウ」になるのだ。そこに支那人のチェ・チェ・チェ・オケラと、刑事の馬田と大谷が現れる。彼らもまた、元海賊なのだった。
男達は万寿シャゲに、かつて海賊として大陸を荒らし回っていた時に出会ったある事件の生き残り、十四番目の朝鮮人の女の面影を見出す。そして突然、彼方より一本杖で床を踏む音――伝説の海賊ジョン・シルバーの歩く音が響く。
Bunkamura Production 2025『アリババ』『愛の乞食』は2025年8月~9月に世田谷パブリックシアターで上演。9月に福岡公演(J:COM北九州芸術劇場)、10月に大阪公演(森ノ宮ピロティホール)と愛知公演(東海市芸術劇場)が行われます。