4月10日(木)からTHEATER MILANO-Zaにて開幕するBunkamura Production 2025『おどる夫婦』。蓬莱竜太さんによる書き下ろしの新作で、14年振りに共演を果たす長澤まさみさん、森山未來さんが夫婦役で主演を務めます。開幕を前に、公開ゲネプロが行われました。
「だって、幸せじゃなくない?」
劇団モダンスイマーズ全作品の作・演出を務め2019年の第27回読売演劇大賞優秀演出家賞など数多くの演劇賞を受賞する蓬莱竜太さんの最新書き下ろし作品、舞台『おどる夫婦』。主演を務めるのは、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)や映画『モテキ』(2011年)と、社会現象を巻き起こしたヒット作で共演し、以来、14年振りに共演を果たす長澤まさみさんと森山未來さんです。

長澤さんは自分の感情を上手く表現することができない舞台衣裳デザイナーの妻・キヌを、森山さんは人生の意味を哲学しながら不器用に生きる夫・ヒロヒコを演じます。
共演には、松島聡さん、皆川猿時さん、小野花梨さん、内田慈さん、岩瀬亮さん、内田紳一郎さん、伊藤蘭さん。

大学の演劇サークルで出会ったキヌとヒロヒコ。キヌは母親・朋恵との微妙な距離感に神経をすり減らしています。父と離婚した後、朋恵は料理教室を運営する傍ら霊感に目覚めて“副業”を行なっており、キヌの未来にまで口出しするようになっていました。

弟の光也は脳炎から記憶障害を患っており、母の仕事を手伝う中でもメモが欠かせません。弟を心配しながらも、母の庇護から外に連れ出してやれないキヌ。
一方ヒロヒコは舞台の裏方をしながら脚本をしたためるも、「分かりにくい」「意味がわからない」と酷評され却下に。キヌに何を描きたかったのかを問われるとヒロヒコは「幸せ」だと答えます。「だって、幸せじゃなくない?」。その言葉はキヌに大きく残り続けます。

そしてやって来る、2011年3月11日。ヒロヒコは故郷が被災したことをニュースで知るも、何日も両親と連絡がつかず…。やがて父から電話で、母が見つからないことを知らされます。東京からは現地に行くことができず、何もできない自分を自覚するヒロヒコ。

“幸せじゃない”日常にやりきれない想いを抱えるキヌとヒロヒコは、お酒を飲みながら時間を過ごす中で、結婚という新たな選択をすることに。2人の奇妙で静かな結婚生活が幕を開けます。

キヌを演じる長澤まさみさんは、その存在感で惹きつけ、時に語り手として観客の心を惹きつけます。常に目の前の誰かに流されながら生きる彼女ですが、ヒロヒコの前では素直に想いを吐露しているように見えます。いわゆる「恋愛結婚じゃない」ものの、ヒロヒコには心を許している姿が印象的です。

森山未來さんは、寡黙ながら変わり者で、意外に頑固で、奥に孤独を抱えたヒロヒコを圧巻の演技力で描いていきます。彼の心の内には何があるのだろうか、と覗き込みたくなる魅力を持つ人物です。

松島聡さんは記憶障害を持つ難しい役どころを繊細に、自然体に演じていきます。長澤さん演じるキヌとは姉弟の深い信頼関係を感じるのも印象的。彼がどう記憶障害と向き合っていくのかも、本作の見どころの1つです。
本作で描かれるのは、私たちと同じ現代社会で生きる夫婦の10年を描いた物語。息苦しい世の中で、様々なことが起こった10年で、心臓が「ぐわぐわ、ぎゅうっと」なりながらも生き続ける人々の姿は他人事とは思えず、観ているとこちらも「ぐわぐわ、ぎゅうっと」なってしまうかもしれません。しかしそれでもなんとか生き続ける人々の姿は力をくれ、カーテンコールでは温かい気持ちに包まれるはずです。
初日前コメントが到着
長澤まさみ/キヌ役
共演の森山さんは相変わらず、頼りになる優しい方で、森山さんがいなかったらこの作品に立ち向かうことはできなかったと思います。その時の、心を大切に、夫婦の在り方を毎日作っていけたらいいなと思います。
この物語の唸りがどんなものになるのか、私にも全くわかりません!!しかし、きっと、お客様には伝わるはず!!と思って、今はただ最後の稽古に励んでいます。
楽しみにしているお客様に喜んでもらえるように出来ることをひとつずつ、積み重ねていこうと思います。
森山未來/ヒロヒコ役
もしみなさんが、あなたにとっての世界を描くとしたら、何が起点になりますか。地球、環境、経済、宗教、国家、政治、会社、家族、隣にいる人。全てが絡み合ってこその世界ですから、どれかだけ、というわけにはいかないと思いますし、どれかだけで描写されるべきでもないでしょう。
『おどる夫婦』はそのどれもが絡み合う世界で、踊らされる人々の話です。それは蓬莱さんによって構成された振付作品であり、そこに関わることになった全ての人たちが保有する個人的な物語が混ざり合うドキュメンタリー作品であり、つまり、演出された舞台の上に広がる世界の断片です。カーテンコールをお楽しみに。
松島聡/光也役
この物語は、正直言語化するのが難しく、捉え方次第では全員が良い人にも見えるし、悪い人にも見えるという、すごく複雑な内容です。演じている側も胸が苦しくなるような瞬間も多いですが、それが日常に起こるリアルなのだと現実を知るのは大切なことだと思います。自分の思う光也としての表現のアプローチがたくさん生まれてきているので、早くご覧いただきたいです。
伝えること、特に愛とは何か、人とは何か、その難しいテーマに答えるべく、作・演出の蓬莱さんをはじめ、長澤さんや森山さん、錚々たる共演者の皆さまと、演劇を通して発信していけることがすごく楽しみで、光栄に思います。
皆川猿時/薮原役
こないだ、衣装付き通し稽古のあと蓬莱さんが「いい感じです。ここからまた新たな感情に出会えると思うし、もっと自由になれるはずです」みたいなことを言ってました。私、皆川猿時、54歳、現在106キロ、それ聞いてうっとりしちゃいました。だって、自由になりたくて役者やってんだもん。というわけで、いよいよ初日です。うおー!!!ええ、非っ常に興奮しております。おかげさまで、膝、いい感じです。俺、がんばる、ゼッタイ!
小野花梨/りく役
見どころは、作品の内容やそれぞれのキャラクターの魅力はもちろんですが、転換時のセットの大道具の動きに是非注目していただきたいです。1つの手を間違えてしまったら何手か先で大事故になるほど、物が流動的に、連動しながら動いていくことで場面を作っていきます!
まるで物が石を持って生きているような、劇場自体が大きな生物のような、そんな空間の中で繰り広げられる蓬莱ワールド。必ず楽しんでいただけると思います!
伊藤蘭/朋恵役
舞台とはそういうものとわかっていながら、今回は特に演じる側にとって全く油断もスキもあったものじゃない!…というのが正直な感想です笑
そんな中、どんな難題も軽やかにしなやかに次々とクリアしていくまさみさんと未來さんに毎日のように目を奪われ、そして励まされ、出演者一同稽古を積み重ねてきました。
蓬莱さんが丁寧に紡ぎ出した2人の物語、どうぞ皆様に届きますように。
2025/4/10(木)から5/4(日・祝)までTHEATER MILANO-Zaにて上演。5月には大阪・新潟・長野公演が行われます。公式HPはこちら

長澤まさみさん、森山未來さんの圧巻の演技力に惹き込まれるとともに、皆川猿時さんのコミカルさが本作に癒しを与えてくれます。今、この時代を生きる人々に、劇場で体感してほしい作品です。