小説「Q&A」を原作とした、映画『スラムドッグ$ミリオネア』。2009年に、アカデミー賞を8部門受賞しました。今回、なんと世界初の舞台化!上演台本と演出は、演劇界気鋭の演出家の一人である瀬戸山美咲さんが手掛け、音楽劇に仕上げます。

疾走感のある音楽劇で、インドの社会問題に切り込む

『スラムドッグ$ミリオネア』の物語は、スラム街出身の青年・ラムが、人気クイズ番組「億万長者は誰だ!」に出演するところから始まります。司会者である国民的人気タレントのプレム・クマールや番組スタッフ、オーディエンスの予想を裏切り、12問にも及ぶ難問を次々とクリアしていきます。

しかし、「教養があるはずの無い彼がなぜ答えを知っていたのか?インチキをしていたに違いない」と、番組の制作会社の陰謀でラムは詐欺の疑いで逮捕されてしまいます。窮地に陥ったラムは、突如現れた弁護士スミタ・シャーに救われ、釈放されます。

スミタに「これまでの人生すべてについて語るように」と促され自身の過去について話し始めるラム。なぜ人気クイズ番組「億万長者は誰だ!」への出演を決意したのか、なぜ難問を次々とクリア出来たのか、そこには驚くべき真実がありました…。

「スラム街の孤児(スラムドッグ)が、なぜクイズ番組で億万長者になりえたのか?」という謎を、貧困、格差、虐待、搾取といったインド社会が抱える問題に鋭く切り込みつつ、パルクールなど新たな取り組みを交え、疾走感のある音楽劇で上演します。

気鋭の演出家と実力派俳優が集結、世界初の舞台化へ

演出は、気鋭の劇作家で演出家の瀬戸山美咲さん。2016年に『彼らの敵』で第23回読売演劇大賞優秀作品賞受賞。その後、『夜、ナク、鳥』の演出、『わたし、と戦争』の作・演出で第26回読売演劇大賞優秀演出家賞。第27回同賞を『THE NETHER』の上演台本・演出で受賞。

2020年に作・演出を手掛けた現代能楽集X『幸福論』にて第28回読売演劇賞選考委員特別賞ならびに優秀演出家賞を受賞しました。『アズミ・ハルコは行方不明』『リバーズ・エッジ』など、映画脚本も手がけています。

実際に起きた事件や実在の人物を取り上げた舞台が特徴の瀬戸山さん。本作は、実際にイギリス版の「クイズミリオネア」で、不正を働き賞金を得ようとしたチャールズ・イングラムという人物がモデルになっています。また、原作小説の作者ヴィカス・スワラップが新聞でスラムで暮らす子供たちの生活状況を知り、ヒントを得てこのようなストーリーが描かれたそう。瀬戸山さんの演出術がどのように本作を音楽劇に仕上げるか、期待が高まります。

そして、世界初の舞台化に相応しい俳優陣。物語の主人公であるスラム街の孤児(スラムドッグ)のラムには、唯一無二のダンスパフォーマンスに定評のある屋良朝幸さん。今回、パルクールにも挑戦します。パルクールとはフランスで生まれたトレーニング方法で、軍事訓練が起源。壁を駆け上がったり、登ったり、障害物を飛び越えたり、また、受け身を取るなど、周囲にあるものを使って移動を行い、人間が本来持っている運動能力を自然に養うものです。

屋良さんは、本作について「不条理な世界を描く社会的メッセージが込められた作品。想像もつかないようなリアルなインドの現実。エンターテイメントという形から世界で起きている数々の問題を考えるきっかけになり小さな事から意識してそれが”何か”を変えるきっかけになっていけたら」と語りました。

ラムの親友のシャンカールとサリムという二役を演じるのは、村井良大さん。今年3月には、東野圭吾さん原作のミュージカル『手紙』で主人公を務めました。音楽劇に欠かせない楽曲について村井さんは、「作品の奥行きを深める素敵な曲の数々」と言います。

ラムを支援する謎の弁護士スミタ・シャーを演じる大塚千弘さんは、膨大な量の楽曲があることをTweetで明らかにしています。本作世界初の上演ということで、どのような楽曲が日本で生まれたのか、気になりますね。

ラムと恋に落ちる娼婦ニータには唯月ふうかさん、そして、人気クイズ番組「億万長者は誰だ!」の司会者で国民的スターのプレム・クマール役には川平慈英さんを迎えます。「社会派エンターテインメント作品」と表現される本作。どのような音楽劇になるのでしょうか。

音楽劇『スラムドッグ$ミリオネア』8月1日(月)〜8月21日(日) シアタークリエにて上演予定でしたが、8月4日まで公演中止が発表されています。東京公演後、愛知、大阪、新潟にて上演予定です。最新情報は公式HPをご確認ください。

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ミワ

音楽劇にする構成や、パルクールなど新たな試みが行われる本作。日本での舞台化が世界初ということで、これから世界でも上演されるようになることが楽しみです。