東京建物 Brillia HALL にて4/10(木)に開幕したミュージカル『フランケンシュタイン』。2017年に日本初演を迎え、5年ぶり3度目の上演を迎える本作では、初演から続投する中川晃教さん、加藤和樹さんに加え、新キャストとして小林亮太さん、島太星さんが加わります。小林亮太さん、島太星さんのゲネプロリポートと、4名が登壇した囲み取材の様子をお届けします。

新キャストが新たな「風」を吹き込む

韓国で2014年に初演され、大胆なストーリー解釈と流麗かつメロディアスな音楽、メインキャスト全員が一人二役を演じる演劇的作劇が話題を呼んだミュージカル『フランケンシュタイン』。日本では2017年に初演、2020年に再演され、3度目の上演となります。

ゲネプロリポートはビクター・フランケンシュタイン/ジャック役:小林亮太さん、アンリ・デュプレ/怪物役:島太星さんのゲネプロの様子をお届けします。

戦場で敵の兵士の命を救おうとし、殺されかけたアンリ・デュプレ(島太星さん)と、彼の命を救った科学者ビクター・フランケンシュタイン(小林亮太さん)。ビクターは死者を蘇らせるという神の領域に踏み込んだ研究を行っており、彼の情熱に感銘を受けたアンリは研究を手伝います。

2人は友情を深めますが、アンリは殺人事件に巻き込まれたビクターを救うために罪を被り、処刑されることに。唯一無二の存在を失ったビクターは自身の研究を活かしてアンリを生き返させようとしますが、誕生したのはアンリの記憶を失った“怪物”でした。

怪物はビクターの元から逃げ出しますが、そこで待っていたのは醜い人間たちからの差別や虐待。怪物は自らを創造したビクターに復讐を誓います。

小林亮太さんは低音から高音まで音階の広い本作の楽曲に果敢に挑み、一幕では葛藤しながらも研究に突き進むビクターを瑞々しく演じます。二幕では一転し、血も涙もない闘技場の悪党・ジャックを生き生きと演じ、幅の広さを見せます。

島太星さんは、アンリ役ではスマートで柔和な印象で振る舞い、怪物とのギャップを演出。怪物役では彼が直面する苦悩をまざまざと表現しながらも、持ち前の愛嬌をチラリと見せ、どこか憎めないキャラクターを作り上げます。アンリと怪物、どちらの役も適役と思わせるほど、憑依する演技力に注目です。

ビクターと幼少期に結婚を誓った令嬢のジュリアと、闘技場の下女・カトリーヌという真逆の身分の女性を演じるのは、花乃まりあさん。どんなに周囲の人々からビクターが疎まれても、彼を想い続けるまっすぐなヒロイン・ジュリアを透明感たっぷりに演じた一方で、誰からも認めてもらえないカトリーヌの悲痛な叫びも印象的です。

ビクターの姉・エレンと、怪物を「商売道具」にする闘技場の女主人エヴァを演じる朝夏まなとさん。ビクターの才能を信じ、理解者であろうとし続けるエレンに温かな愛情を感じます。

一方エヴァは残忍さを持ちながらも、「怪物はどこにだっている」という言葉が皮肉に響きます。怪物に対する民衆やエヴァたちの態度は、人間の醜さを浮かび上がらせ、“怪物とは何か”を考えさせられます。

孤独や絶望が憎しみに変わり、連鎖していくやるせなさ。戦争で殺し合うこの世界に、神は本当に存在しているのか。感情を揺さぶる音楽と、一人二役で対照的な人物を演じる演出と共に、人間に強く訴えかけるメッセージが込められた作品です。

「飽きさせない」「素晴らしい楽曲を劇場で感じて」

囲み取材には、中川晃教さん、小林亮太さん、加藤和樹さん、島太星さんが登壇しました。

3度目、5年ぶりの再演に「感謝を込めて挑みます」と意気込んだ中川さん。「エンターテイメントという一言で片付けて良いのか分からないほど、飽きさせない、ノンストップで観ることが出来る作品です。3度目ですから、私達も高いところを目指す心の準備は万全です」と自信を見せます。

ゲネプロを終えたばかりの小林さんは「改めてとんでもない作品だなと感じた」と振り返り、「丁寧に、2025年の今の風を持った『フランケンシュタイン』をお届けしたい」と意気込みます。

本作のファンを公言する加藤和樹さんは、昨年10周年を迎えた韓国の公演を全キャストの組み合わせで観劇したそう。「頭でっかちになってしまって、新しいものを作ろうと考えすぎてしまった部分もあったのですが、今一度原点に戻ることが実は大切だったのかなと思い、昨日のゲネプロで今回の方向性が決まった感じがします。初日を新鮮な気持ちで臨みたい」と意気込みます。

島さんは圧巻のゲネプロから打って変わり、いつもの穏やかな雰囲気で「アッキーさん、和樹さんが作り上げてきてくれた『フランケンシュタイン』という作品を良い意味でぶち壊していけたらというか…?新しい何かスパイスを…?お届けできるんじゃないのかなと。お客様も楽しみに観にきてくださるでしょうね」と島さん節を展開し、思わず皆さん笑顔に。

中川さんはゲネプロ時、アンリの独房に駆けつけるシーンで加藤さんと激しく抱き合ったところ、「なぜか僕の手と手が事故を起こしたというか…突き指しちゃったんです。その痛みを感じながら、そうか、この物語って人間が、人間ではない怪物を生み出す物語で、人間にはあって怪物にはないものとは心というものではないだろうかと感じたんです。怪物の生みの親であるビクターは怪物にとてつもなく酷いことをするのですが、そこに伴う痛みや苦しさが作品のテーマの1つにあるなと気づきまして、“この痛みは必要な痛みなんだ”と蜷川幸雄先生に頂いた言葉を思い出しました」と思わぬ怪我を明かしながらも心境を語ります。

そのシーン中にはもちろん加藤さんは突き指を知らなかったため、加藤さんは「手をめちゃくちゃ握っちゃった!」と気づき、中川さんは「笑える話です」と語るものの、「大丈夫ですか」と心配する加藤さんでした。

一方、小林さんはゲネプロを迎えるにあたり、「昨晩悪夢を3本見ました。自分の中で大きい日として考えていたんだなと感じました」と重圧を明かします。「僕はカンパニーのメンバーが大好きなんですけれど、みんなに追いかけられる夢を見て。今日は1人1人に“よろしくお願いします”と言ってからゲネプロに入りました(笑)」。

また「作品が持つエネルギーと、役として乗っかっていくと生まれる感情、素晴らしい楽曲とのバランスを取るのが難しい」と本作の難しさを語りました。

島さんは「怪物もアンリも共通なのは孤独があることなので、役作りにあたって、生活から自分も孤独を体験してみたいと思っているんですけれど、毎日が本当に幸せなもんだから。今日は凄く孤独になるような音楽を聴きながら、孤独を感じて会場に来て、楽屋にも和樹さんがいなかったのでまた孤独が増えたと思ったら、凄く早く楽屋に来てくださって、孤独が一個消えちゃった…」と語り、加藤さんは「ごめんね」と笑いながらも謝ります。

「皆さん、僕の孤独を探してください」という独特な呼びかけをして会見を和ませる島さんでした。

「辛くなるようなシーンもたくさんある作品ですが、必ず何かを持って帰ってもらえるはず。イ・ソンジュン(ブランドン・リー)さんの素晴らしい楽曲を劇場で感じていただきたい」と語った加藤さん。

中川さんも「初演の時、自分がデビュー15周年のタイミングで、公演に先立ってコンサートで<偉大な生命創造の歴史が始まる>という楽曲を発表させて頂きました。まだ(日本語)台本が出来上がる前でしたが、音符や歌詞から、韓国のクリエイターの方々が作品に注ぎ込んだ理想や夢を感じ取りながら歌いました。物語の多くは分からなかったけれども、この楽曲一つで、ビクターという役、そして後に生み出されてしまう怪物の気持ちみたいなものを想像することができたんです。本当に音楽の素晴らしさ、『フランケンシュタイン』が持っている素晴らしさをしっかり届けられるよう、一公演一公演、頑張っていきます」と語り、会見を締め括られました。

撮影:山本春花

ミュージカル『フランケンシュタイン』は2025年4月10日(木)から30日(水)まで東京建物 Brillia HALLにて上演。5月には愛知・茨城・兵庫での全国公演が行われます。公式HPはこちら

Yurika

フォトセッション中、「美しく決めてきました!」「笑顔です!」「熊おいしいよ!」などと会場を和ませてくださった中川さん。加藤さんはお得意の料理を稽古場でカンパニーに振舞われたそうです!そんなお二人を慕う小林さん、島さんと、チームワークの良さが感じられました。