2025年7月9日(水)から東京建物 Brillia HALLにて開幕するミュージカル『ジェイミー』。実話をもとに製作され、ローレンス・オリヴィエ賞に5部門ノミネート、2021年はAmazon Prime videoで映画版も世界配信された人気作です。日本では2021年に初演され、待望の再演を迎えます。本作でジェイミーを演じる三浦宏規さんにお話を伺いました。
“自分の人生の主役はあなただよ”と伝えてくれる作品

−ミュージカル『ジェイミー』初演の映像を観て、どのように感じられましたか。
「凄くジェイミーを応援したくなりました。ジェイミーには暗い過去もありますが、とても明るく強い人間ですし、認められたら調子に乗ってしまう部分もあります。リアルなティーンエイジャー感も含めて、応援したくなる人物だなと感じました。作品自体のテーマとして、“自分の人生の主役はあなただよ”と伝えてくれていると思うので、ジェイミーを始め、作品に登場するみんなから勇気をもらえる作品だと思います」
−キャッチーな音楽も魅力的ですよね。
「本当に素敵な楽曲ばかりですよね。もっと流行ったら良いのにと思うくらい。キャラクターもメッセージも音楽も素晴らしくて、非の打ちどころのない作品だと思います」
−演じるジェイミーについてはどのような人物だと思われていますか。
「母親に愛されて育ってきて、しっかりと自分を持っている子だと思います。ただ父親から言われた言葉を引きずっていて、自分は醜いというコンプレックスが片隅にずっとある。その気持ちを閉じ込めるために明るい性格になっているという部分もあるのかなと思うんです。ドラァグクイーンを目指すシーンでは、着飾ることが自分を表現することに繋がると学びますし、この作品はジェイミーが本当の自分を探す旅になるんだろうなと思います」
−石川禅さん演じる伝説のドラァグクイーン、ロコ・シャネルの台詞には、“ドラァグクイーンとしてステージに立つことは戦”だという台詞もあります。
「凄く共感できる台詞です。本作ではそこまで描かれていませんが、やはりゲイの方は迫害されてきた歴史がある中で、それを乗り越えるために強くならなければいけなかった。だからこそ強さがある方々なので、性別を卓越した人間としてのロマンや、生き様のかっこよさを感じます。僕は幼少期にバレエを観てバレエに惹かれましたが、もし最初にドラァグクイーンを観たらドラァグクイーンになる道を選んでいた可能性があると感じます。そのくらい、惹かれるものがある存在です」
人間性に共感できるジェイミーを作りたい

−石川禅さんとは『ヘアスプレー』以来の共演ですね。
「先日の帝劇コンサートでもお会いして、“楽しみだな、颯くんと切磋琢磨して頑張ってね”とお声がけ頂きました。プレイベント(製作発表)の歌唱披露の前には“さぁ、お手並み拝見といきましょうかね”とプレッシャーをかけられました。禅さんのパワーに負けないように頑張りたいです」
−Wキャストでジェイミーを演じる髙橋颯さんは初演から出演されています。プレイベント(製作発表)で一緒に歌唱披露してみていかがでしたか。
「頼もしかったです。頼もしいんだけれど、頼りない(笑)。それが颯くんの魅力ですよね。どこか自分に自信がなくて、凄く繊細で、でもみんなを愛している。それってジェイミーそのままだなと思います。色々なジェイミーがいて良いと思うけれど、そういうところに僕は彼の中のジェイミーを感じましたし、今年も素敵なジェイミーが仕上がるんだろうなと思いました。颯くんと僕は全くタイプが違うので、どう頑張っても同じようにはならないと思う。それがWキャストの面白さになると思います」
−ご自身はどのような部分を大切に、ジェイミーを演じようと思われていますか?
「側で取り繕わないということです。もちろんジェイミーに見えるように仕草を演じなければいけない部分もあると思いますが、この作品はジェイミーの人間性が一番大事だと思うので、お客様がいかにジェイミーに共感できるか、いかにリアルな高校生に感じられるかという部分を追求したいと思います」
−役者として、役作りをする上で大事にされていることはありますか。
「俯瞰で見る能力と、入り込む能力のバランスは大事にしています。作品を俯瞰で見た時に、自分の役はどのように作用しているのか。主演であれば、どのように引っ張っていくのがベターなのか。作品は個人のものではないので、まずは全体を考えてから、役の中に入っていくようにしています」
混在した気持ちを胸に、「任せて頂けるなら恥じないように」

−三浦さんは現・帝国劇場最後のコンサート『THE BEST New HISTORY COMING』にも出演されましたが、役者としての変化はありましたか。
「今まで面識のなかった大先輩方とたくさんご一緒して、帝国劇場の歴史、演劇の歴史を改めて感じました。皆さんの生き様を感じましたし、だからこそ今の帝国劇場、舞台が成り立っているのだなと実感しました。それにまだまだ皆さん進化されていて、僕たちが入り込む余地がないぞ、もっと頑張らないと、と思いました」
−コンサートのレギュラーメンバーとして“New HISTORY”を担う存在でもあったと思います。そういった重圧は感じますか。
「とても有難い気持ちと、“俺でいいのかな”という気持ちが混在していました。自分としては、“俺でいいのかな”と思いながらやっている人はあまり魅力的ではないと思うので、そう思う自分を隠すために“当然でしょ”という強い気持ちを覆い被せているのかもしれない。自分でも自分の本心は分からないです。それはジェイミーと同じだなと思います。ただ任せて頂けるなら恥じないようにしないとな、と常に思っています」
−ジェイミーは赤いヒールを母親からプレゼントされることが、自分らしさを掴むきっかけになります。三浦さんにとって自分らしさを保つために大事にされているものはありますか。
「アイテムがあるわけではないけれど、ハートかな。芝居もダンスも凄い人はいくらでもいますし、技術の追求はもちろん一番必要なことだと思うんですけれど、人がお金を払って観にくる魅力はそこだけじゃないと思うんです。今やSNSでも歌の上手い人、ダンスの上手い人がたくさん観られる中で、わざわざ足を運んで観にきて頂くためには、磨き上げられた心を持つというのが大事だなと最近凄く感じます」

−ミュージカル『ジェイミー』の初演は2021年のコロナ禍で、暗い時代を明るく照らしてくれる作品でした。2025年の再演では、時代の変化によって見え方が変わる部分もありそうですね。
「そうだと思います。時代は移り変わっていて、多様性も受け入れられるようになっていますよね。とは言っても、まだまだ差別や偏見のある場所もあって、苦しんでいる人もいるはずです。本当は47都道府県を回りたいくらい、たくさんの方に観ていただきたい作品ですし、分かりやすく楽しく、理解して頂ける作品だと思います。カンパニーの皆さんと一致団結して、楽しく作品作りをしていきたいです」
ミュージカル『ジェイミー』は2025年7月9日(水)から7月27日(日)まで東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)、8月1日(金)から3日(日)まで大阪・新歌舞伎座、8月9日(土)から11日(月祝)まで愛知県芸術劇場 大ホールにて上演されます。公式HPはこちら

ポジティブなジェイミーのパワーが眩しく、コロナ禍の暗い気持ちを晴らしてもらったのをよく覚えています。三浦さんが新たなジェイミーをどう作っていかれるのかとても楽しみです!