4月6日(日)にJR東日本四季劇場[秋]にて開幕した劇団四季のミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。映画公開から40周年となる今年、日本初演を迎えました。原作を愛するファンが多い中、期待を裏切らない再現度の高さが話題になっています。すでに年内のチケットが完売してしまった大人気の公演を、4月10日(木)・12日(土)に観劇した筆者がレポートをお届けします!

誰もがワクワクする!世代を超えて愛されるSF映画の金字塔

ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の原作となるのは1985年に公開された同名映画。現在もSF映画の金字塔として、世代を超えて多くの人に愛されている作品です。主人公の高校生マーティーと個性的なキャラクターの科学者ドク、二人のユーモアが溢れるやりとりや友情、未来に戻るために奮闘する姿、スリルのある展開。これほどおもしろい要素が詰め込まれていて、何度観ても楽しめる映画にはなかなか出会えないのではないでしょうか。

今作は1985年7月にアメリカでpart1が公開されると同時に上映館を増やし、約8ヶ月半のロングランヒットを達成。1989年にpart2、1990年にpart3となる続編が公開されました。ミュージカルではpart1のストーリーを元に制作されています。

【ストーリー】
1985年、カリフォルニア州ヒルバレー。ロックスターに憧れる高校生のマーティー・マクフライは、友人で科学者の“ドク”ことエメット・ブラウン博士から深夜に指定の場所に来るように呼び出される。約束の場所に行くと、ドクがデロリアンを改造して作ったタイムマシンが用意されていた。マーティーはデロリアンの実験を手伝う中、アクシデントにより1955年のヒルバレーへタイムトラベルしてしまう。

その時代のドクを探し出し、1985年に戻ろうと奮闘するマーティー。しかしマーティーは父親のジョージと母親のロレインの出会いを邪魔してしまい、高校時代のロレインに惚れられてしまう。内気で自信がなく、ロレインに話しかけることもできないジョージ。両親が恋に落ちなければ、自分が生まれない!果たしてマーティーは二人の仲を取り持ち、未来に帰ることができるのか!?

想像を超えるクオリティの高さと遊び心が満載の演出

ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の見どころを語るうえで外せないのが、映画の再現度の高さと想像を超える演出。観劇というよりも体感という言葉がしっくりくるアトラクションのような空間でした。客席に入るとそこはすでに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の世界。時計の秒針音が鳴り続ける中、電子回路で囲まれたステージには、遊び心が溢れた言葉で観劇に関する注意事項が映し出されています。いくつかのパターンがあるので、全パターンをゆっくり見たい方は早めに着席するのがおすすめです。

開演時間になるとキーボードコンダクターの宮崎誠さんが率いる生オーケストラにより、Overtureの演奏がスタート。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のあのおなじみのメロディが劇場内に響き渡ると、鳥肌が立ちそうになります。客席にいる私達も、東京の四季劇場から1985年のアメリカへとタイムトラベル。筆者は2公演とも2階席からの観劇でしたが、プロジェクションマッピングを駆使した演出により没入感と臨場感に満たされ大興奮でした!今作の見せ場となるデロリアンの疾走シーン、ドクが時計台に登り外れたケーブルを繋ごうとするシーンはワクワクとハラハラする気持ちが入り混じり、迫力と完成度の高さに涙が溢れそうになります。筆者が個人的に好きだったのは、シャボン玉が客席を舞う演出。幻想的な光景を目の前にして、作品の世界観に酔いしれました。

映画から飛び出してきたようなキャスト陣!マーティー役・立崇なおと×ドク役・野中万寿夫

ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の再現度の素晴らしさは、演出だけではありません。キャストの皆さんのまるで映画から出てきたかのような熱演に、思いっきり惹き込まれます。

立崇なおとさんのマーティーは声と話し方が映画のマーティーそのままで、まさに適役!「ヘビーだ」という口癖やロックに憧れる高校生という設定も違和感がなく、立崇さんを観るのが初めてだった筆者はここまでマーティーが似合う俳優さんがいることに驚きました。野中万寿夫さんが演じたドクも映画での独特な言動が再現されており、マーティーとのかけ合いは見応えがあります。劇団四季ならではのネタで笑いが起こる場面もあり、ファンの方はさらに楽しめるのではないでしょうか。

マーティーの母親・ロレイン役には海沼千明さん。美しくも積極的な海沼さんのロレインには、あまりの強気ぶりに吹き出しそうになる瞬間もありました。そしてマーティーの父親・ジョージ役に斎藤洋一郎さん。映画ではビフの言いなりになる弱気なジョージを、斎藤さんはクセのある笑い方と動きで表現しています。こちらも映画から飛び出してきたような再現度の高さで、目が離せなくなってしまいました。他のキャストの方々も皆さん素晴らしく、魅力的なお芝居にくぎ付けです。年内のチケットは完売していますが、いつか別のキャストでも観劇したいと思えるほどの熱量でした。

映画にはない圧巻の歌唱シーンやダンスシーンも見どころ

ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にはまだまだ見どころがあります!それは、ミュージカルならではの歌唱シーンやダンスシーン。それぞれのキャラクターの心情を描いたソロ曲やデュエット曲はもちろん、客席にいてもつい歌って踊りたくなってしまうショーのような楽曲もあります。どの曲も光景が思い出されて大好きなのですが、筆者が特に好きなのはドクが歌うバラード「For the Dreamers」です。

ドクがマーティーを1985年に帰すための計画を研究室の小型模型を使って解説したところ、デロリアンが炎上。絶望するマーティーに、過去の科学者たちやドク自身も何度も失敗を経験してきたことを伝えて歌うのがこの楽曲です。夢を見て信じることを諦めなかった科学者たちをたたえ、「夢追いかけよう」と歌うドクの歌声とメロディが胸に深く刺さります。

またダイナーで働くゴールディ・ウィルソンにもソロの楽曲があります。ビフの言いなりになったままのジョージを“為せば成る”と励まし歌う「Gotta Start Somewhere」。アップテンポなナンバーでゴールディがほうきで床掃除をしながら踊り歌い、後半でコーラスが加わると圧巻!脇役的存在のゴールディが一瞬にして主役となり、歌い終えると客席からは大きな拍手が送られました。今作の中でも爽快感で満たされる場面のひとつです。

どちらの曲もテンポは違いますが諦めずに前向きに進むメッセージが込められており、観ている私達も元気をもらえる楽曲となっています。

ミュージカル作品ならではの設定も楽しめる!

今作は原作となる映画に忠実に再現されていますが、映画とは設定が変わっている箇所もあります。いくつか挙げると、ドクの愛犬アインシュタインやドクを襲った過激派が登場しない、デロリアンに音声認識システムが取り入れられているなど。映画をそのまま想像している方は、もしかしたら少し違和感を覚えるかもしれません。しかし設定が変わったことにより発生するおもしろさもあり、ミュージカルならではの楽しさを体感できるのもこの作品の魅力です。ミュージカルの観劇前に映画を見返し、設定が変わった部分を探しながら観劇するのも楽しいのではないでしょうか。

ミュージカル『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は2026年9月30日(水)までロングラン上演中!2026年4月1日(水)~9月30日(水)公演分チケットの一般発売は6月15日(日)より開始。詳細については公式サイトをご確認ください。

かずちぃ

今までストーリーに感動したり登場人物に感情移入したりして泣くことはありましたが、想像以上の演出や仕掛けの素晴らしさに泣いたのは初めてでした。原作の映画ファンでなくても楽しめる作品です。観劇の際は、是非開演前と幕間にロビーで流れる音楽にも耳を傾けてみてください。