2025年9月にKAAT神奈川芸術劇場で上演される、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』。劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)さんがセルバンテスの小説「ドン・キホーテ」をもとに、約6年ぶりに KAATに新作を書き下ろします。本作に出演する大倉孝二さん、咲妃みゆさんにお話を伺いました。

「一筋縄ではいかない」「大倉さんをみんなでお支えします!」

−本作への出演が決まった時の率直なお気持ちをお聞かせください。
大倉「大体のものは“そんなにやりたくないなぁ”と思っちゃう消極的な人間なのですが(笑)、今回はやりたいと直感的に思いました。是非ともドン・キホーテを演じたいとかそういうつもりではないんですけれども、もしKERAさんがこれを作って面白かったら、“やれば良かった”と思いそうだなと思ったんです」

咲妃「私はKERAさんの作品への出演を願い続けていたので、大喜びで引き受けさせていただきました」

大倉「頼もしい限りです。絶対にそれが今回の作品の力になると思います」

−KERAさんとお話しされて、どんな作品になりそうだと感じていらっしゃいますか。
咲妃「現実社会とドン・キホーテの世界の二重構造を描くと仰っていて、KERAさんならではの『ドン・キホーテ』をお楽しみいただける予感がして、いち出演者としてより楽しみになりました」

大倉「聞けば聞くほど一筋縄ではいかないような感じがします。大変そうだし、難しそう。そういうものを今作は作りたいんだろうなと思います。10人いたら、10人全員が大好きなものにはならないかもしれません。でも、それは我々の持ち味なので良いかなと思います」

咲妃「大倉さん以外の我々出演者は、複数の役を演じさせていただくことになるだろうと伺っているので、それも凄く楽しみですね。色々な角度から物語に関わっていけることが嬉しいです。大役を担われる大倉さんをみんなでお支えします!」

大倉「それは是非ともお願いします(笑)」

ちょっとした台詞にも、KERAさんの愛情や情熱を感じる

−大倉さんはドン・キホーテという役柄にどんな印象を持たれていますか。
大倉「狂人を演じるというのは、面白がってもらうのと、そこに悲しみがあるのと、恐ろしさと、全部が紙一重にあると思うんです。それを頭で考えてもしょうがないですけれど、良いバランスでやれたら良いなと思います」

−咲妃さんはKERAさんの演出を受けられるのは初めてですね。
咲妃「はい、凄く楽しみです。妥協せずに作品を創り上げていく丁寧さを尊敬しています。KERAさんの世界を体現できるように、私も日々の稽古で色々なアイデアを出して挑みたいなと思っています。これまでも様々な新作に携わらせていただいてきたんですけれど、最初とは全く違う形に着地するというのはよくあることなので、どんな変更や修正にも喜んで対応していくぞ、と妙に落ち着いてワクワクしている自分がいます」

−大倉さんはKERAさんとは長いお付き合いですが、KERAさんとお仕事をされるというのはどのような楽しさがありますか。
大倉「やっぱり面白い台詞を書きますね。稽古場では、当日に台本が配布されて、初見で読むというのを割とよくやるんですけれど、その時に“なんてこと書いているんだ”というような、笑って読めない時が度々あります。それはKERAさんの現場ならではの体験ですね」

−お二人から見て、KERA作品の魅力はどんなところにあると思われますか。
咲妃「時に鋭かったり、優しかったり、変化しながら止まることのない波をずっと感じられる印象を私は持っています。人間味を感じる登場人物の描き方がとても好きです。重要なポイントではないかもしれないちょっとした台詞にも、KERAさんの愛情や情熱を感じるといいますか。理由があってみんなそこに存在していると思えることが魅力の一つですし、出演者の方々は、日々いろいろな発見があるんじゃないかなと、いち観客としても俳優としても、ずっと憧れていました」

大倉「いまさら客観的に言えることは何もないんですけれど、でもKERAさんが描くのは群像劇なんですよね。ただ主役がいて、その周りの人がいるっていうものじゃない、たくさんのキャラクターとか、その生きざまがグルーヴを生むというところがいいのかなとは思います」

楽しみにエスカレーターを登っている人の気持ちに応えられるように

−カンパニー全体への期待もお聞かせください。
咲妃「先日、KERAさんの作品に初参加となる方々を中心に、KERAさんを囲んでワークショップを行ったのですが、そこで“体力に自信はありますか”や“歌はどの程度歌えますか”といった質問をいただいたんです。お芝居ももちろん楽しみですけれど、身体表現や歌唱シーンもあるのかな…?と楽しみにしています。色々な出自の方が集まっているので、それぞれの経験の融合がご覧いただけるのかな…と感じました。
みなさん素晴らしい個性を持った方ばかりで、その一員でいられることがすごく幸せだなと思いますし、錚々たるお顔ぶれにKERAさんの求心力を感じます。KERAさんにみんな魅了されるんだなと。ワークショップ中ニコニコしていました(笑)」

大倉「素晴らしいですね、そうありたいものです(笑)。僕は今の話を聞いて、咲妃さんの歌を聴きたいと思いました。僕も初めて共演する方が多いのですが、だからこそ劇団でやるのとは全然違うものになるので楽しみです」

−本作が上演されるKAAT神奈川芸術劇場についてはどのような印象をお持ちですか。
咲妃「いつか立たせていただきたいと願っていましたが、なかなか機会に恵まれず、観劇に足を運んだことはこれまでに何度もありました。とても素晴らしい劇場だと思います。劇場周辺の街並みも好きです。憧れの劇場だったので、本当に今回は嬉しいです」

大倉「あまりにも立派で綺麗な劇場なので気後れしますね(笑)。ただ自分が観に行く時、長いエスカレーターを登りながら客席に向かうと、特別な気持ちになりますよね。だから楽しみにしてあのエスカレーターを登っている人たちの気持ちに応えられるようなものにしたいなと思います」

−最後に、本作を楽しみに待っている観客へのメッセージをお願いします。
大倉「シリアスそうなインパクトはありますし、実際KERAさんもそんな楽観的な話にするつもりはなさそうで、でもかなりアートに寄った作品にもしたいというようなことも言っていたんですけれど。お客様はあまり難しく考えずに、その人なりに楽しんでいただければいいので、気軽に、観に来ていただけたらなと思います」

咲妃「きっと目でも耳でも、心でもお楽しみいただける作品が生まれるんじゃないかなと、一出演者としてわくわくしています。我々が舞台上で駆け回る様を眺めてお楽しみいただけたらなと思います」

大倉「それで終演後は中華を食べて帰ってください(笑)」

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』は2025年9月14日(日)から10月4日(土)までKAAT神奈川芸術劇場 ホールにて上演。ほか富山、福岡、大阪公演あり。公式HPはこちら

撮影:山本春花、大倉孝二ヘアメイク:山本絵里子、大倉孝二スタイリスト:JOE(JOE TOKYO)、咲妃みゆヘアメイク:本名和美(RHYTHM)、スタイリスト:國本幸江
大倉孝二 衣装:シャツ/BUENAVISTA/25300(税込)/RPBC株式会社/106-0032港区六本木7−3−16-2F/03-6822-9233
パンツ/ESTNATION/41000(税込)/ESTNATION PRESS
ROOM/150-0001渋谷区神宮前2−22−16新光第二ビル5階/0120-503-971
シューズ/パントフォラ・ドーロ/27500(税込)/アドナストミュージアム/〒150-0032 東京都渋谷区鶯谷町4−1-B1/03-5428-2458
Yurika

「消極的な人間」の大倉さんと、KERA作品出演への喜びが全身から溢れていた咲妃さん、凸凹コンビなお二人が魅せる劇が楽しみです!