2025年はミュージカルの金字塔『レ・ミゼラブル』のロンドン初演から40年を迎える節目の年です。それを記念して、2025年8月7日(木)~8月30日(土)まで、東急シアターオーブにて「『レ・ミゼラブル』ワールドツアースペクタキュラー」が上演されています。
このタイミングで改めて注目したいのが、2012年に日本で公開された映画版『レ・ミゼラブル』です。本作は国内で興行収入約60億円を記録し、ミュージカル映画としてゆるぎない名声を得た作品です。本記事では、一度は観ておきたい映画版『レ・ミゼラブル』の魅力について解説します。
『レ・ミゼラブル』とは?
まずは、『レ・ミゼラブル』という作品について、簡単におさらいしておきましょう。
作品について
『レ・ミゼラブル』は、1985年にロンドンで初演。続いて1987年に日本で初演され、現在も愛され続けるミュージカルです。
原作はフランスの文豪ヴィクトル・ユゴー(1802-1885)による同名小説で、19世紀フランス文学の代表作として知られています。
パン一つを盗んだ罪で19年間投獄されたジャン・バルジャンを主人公に、さまざまな人々の想いが描かれる群像劇で、ユゴーが実際に生きた19世紀のフランスの社会情勢が反映された人間ドラマです。
主な登場人物
『レ・ミゼラブル』には多くのキャラクターが登場し、それぞれが強烈な個性を放っています。特に以下の人物たちを押さえておくと、作品をより深く楽しめるでしょう。
・ジャン・バルジャン(主人公)
・ジャベール(バルジャンを追う警察官)
・ファンテーヌ(娘のために働く女性)
・コゼット(ファンテーヌの娘)
・マリウス(コゼットの恋人)
・エポニーヌ(マリウスに恋する女性)
その他、宿屋を経営するテナルディエ夫妻、革命を志す学生たちのリーダー・アンジョルラス、脱獄した後盗みを働いたバルジャンに許しを与えた司教など、さまざまなキャラクターが登場し、物語に深みを与えています。
ミュージカル映画の常識を覆した歌唱シーン
本映画で監督を務めたのは、『英国王のスピーチ』などで知られるトム・フーパー氏。
映画版『レ・ミゼラブル』では、過去にも例が少ない「ライブ録音」という手段が採用されました。
ミュージカル映画の場合、歌唱シーンは撮影前に録音しておいた歌を使う場合がほとんどです。しかし、トム・フーパー監督は、舞台と同じように、俳優たちに曲を歌わせ、より演技に気持ちを込めさせたといいます。
気になるのがその撮影方法です。本作の撮影現場では、俳優たちが小さなワイヤレスイヤホンを装着し、セットの外部で演奏されるピアノの伴奏に合わせて歌唱しました。
この方法により、演技と歌が地続きになりやすく、より感動的な歌唱シーンを生み出せたのです。
アカデミー賞俳優も参加した超豪華キャストの魅力
映画版『レ・ミゼラブル』の主要キャストには、さまざまな経歴・受賞歴を持つ実力派が勢ぞろいしています。キャスティングの豪華さも、当時大いに注目された点のひとつでした。
主人公のジャン・バルジャンを演じたのは、『X-MEN』シリーズで知られる演技派俳優のヒュー・ジャックマン。彼は舞台経験も豊富で、2018年に日本で公開されたミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』でも主役を演じています。
悲劇に飲み込まれる女性・ファンテーヌを演じたのは、映画『プラダを着た悪魔』『プリティ・プリンセス』などで知られるアン・ハサウェイです。アンは本作での演技が評価され、第85回アカデミー助演女優賞を受賞しました。
ジャン・バルジャンを執拗に追いかける警官・ジャベールには、『グラディエーター』でアカデミー主演男優賞を受賞した名優ラッセル・クロウがキャスティングされました。さらにミュージカル映画『マンマ・ミーア!』で美しい歌声を披露したアマンダ・セイフライドがコゼット役に抜擢されています。
エポニーヌ役は超実力派のサマンサ・バークス
豪華俳優陣の中でも異彩を放つのが、エポニーヌを演じたサマンサ・バークスです。
エポニーヌはマリウスに叶わぬ想いを寄せる少女で、片思いの切なさを歌い上げる「On My Own」は『レ・ミゼラブル』の代表ナンバーのひとつとして知られています。また、物語の後半、エポニーヌとマリウスが歌う「A Little Fall Of Rain(恵みの雨)」も、切ないデュエットとして人気の高い1曲です。
作中でも重要なキャラクターであるエポニーヌを演じたのが、当時わずか21歳のサマンサでした。彼女は、ロンドン・ウエストエンドで上演されていたミュージカル『レ・ミゼラブル』で2010年からエポニーヌ役を演じており、『レ・ミゼラブル25周年記念コンサート』でもエポニーヌを演じました。
その後のキャリアも順調で、ウエストエンド版の『アナと雪の女王』ではエルサ役を務めたほか、『トゥモロー・モーニング』というミュージカル映画でラミン・カリムルーとW主演を務めています。ラミンは、『レ・ミゼラブル25周年記念コンサート』でアンジョルラス役を演じた経歴もあります。
そんなサマンサ・バークスとラミン・カリムルーは、2025年11月に日本での来日公演が決まっています。
11月2日・3日に東京・国際フォーラムで開催される来日公演では、サマンサとラミンの他にも、海宝直人さん、新妻聖子さんなど名だたるミュージカル俳優が出演予定です。公式ホームページはこちら
リアルで感情的な歌唱シーンの数々と、それを支える実力派俳優陣の圧倒的な演技力。映画版『レ・ミゼラブル』は、完成度の高さと芸術性を兼ね備えた、まさに「一度は観るべき」名作です。
まだご覧になっていない方は、この機会にぜひその感動を体験してください。

『レ・ミゼラブル』公開当時、サマンサが演じるエポニーヌのひたむきさや、叶わぬ恋に耐える切なさに心惹かれました。母親となった今では、ファンテーヌに感情移入するかもしれません。ぜひ皆さんにも、ご自身の人生と重ね合わせながらこの感動を味わっていただきたいと思います。