シェイクスピア4大悲劇のひとつ『ハムレット』の舞台。苦悩に悶える孤高の王子を、俳優・岡田将生が熱演しました。(2019年・Bunkamura シアターコクーン)

思わず惹きつけられる、容姿端麗な憂鬱王子

いつかシェイクスピアの舞台に立ちたいと思っていたという岡田将生さんが、満を持して挑んだ『ハムレット』。父の死の真相を知り、苦悩と復讐心の中に身を置くデンマークの若き王子役を体当たりで演じます。

彼を破滅へと導く孤独で繊細な魂が、同時に彼をひときわ美しく燃えたたせる…。ハムレットという青年のそんな不思議な魅力を、膨大な台詞量をこなしながら、見事客席に届けてくれました。

壊れてゆく不幸の乙女に涙を誘われる

ハムレットの恋人、オフィーリアを演じるのは黒木華。実力派女優の名の通り、素晴らしい演技力でした。

序盤に登場した彼女は、甘い恋にほおを紅潮させた可憐な少女。ハムレットの異変によってその快活さに影が差し、純粋な心は次第に病んでいきます。圧巻だったのは、気の狂った彼女が花を配るシーンの演出。花の代わりに自身の髪の束をつかんでは抜き、夢見るように花言葉を囁く姿には息をのみました。

主人公の凛とした美しさに見とれながらも、洪水のようにほとばしる台詞の数々に胸を刺されます。シェイクスピアの魅力と、若手俳優たちの熱のこもった演技を堪能できる舞台でした。