8月23日から昭和女子大学人見記念講堂にて開幕するミュージカル『四月は君の噓』。ロンドン・ウエストエンド、韓国・ソウルでの上演を経て、日本では3年ぶりの再演を迎えます。今回は岡宮来夢さん、加藤梨里香さん、希水しおさん、吉原雅斗さんらが出演したゲネプロの様子をお届けします。

「君は忘れられるの?」青春の煌めきを儚くも眩く描く

アニメや実写映画でも人気を博した新川直司氏による同名コミックを原作に、2022年日生劇場で初演の幕を開けたミュージカル『四月は君の噓』。フランク・ワイルドホーン氏が作曲を手掛け、2024年にはロンドン・ウエストエンド、韓国・ソウルでも現地プロダクションで上演。世界各国で高評価を受けた本作が、待望の再演を迎えます。

有馬公生役を岡宮来夢さん・東島 京さん、宮園かをり役を加藤梨里香さん・宮本佳林さん、澤部 椿役を希水しおさん・山本咲希さん、渡 亮太役を吉原雅斗さん・島 太星さんが演じます。今回は岡宮来夢さん、加藤梨里香さん、希水しおさん、吉原雅斗さんらが出演したゲネプロの様子をお届けします。

母の死をきっかけにピアノの音が聴こえなくなり、ピアノから遠ざかってしまったかつての神童・有馬公生。ある日、幼馴染の澤部椿を通じ、同い年のヴァイオリニスト・宮園かをりと出会います。彼女の圧倒的で自由な演奏に惹かれるものの、かをりは親友の渡亮太に好意を寄せていて…。

公生のことを“友人A”と呼びぞんざいに扱いつつも、自分のコンクールのピアノ伴奏を命じるなど、何かにつけて公生を音楽の世界に連れ戻そうとするかをりの真意とは。

公生、かをり、椿、渡の恋模様はもちろん、公生とかをりが音楽を通して人として成長していく姿が大きな感動を呼ぶ本作。岡宮来夢さんはかをりに翻弄される公生を愛らしく、母との過去を乗り越えられずにいる葛藤を感情豊かに、熱演していきます。

かをりを演じる加藤梨里香さんはその抜群の歌唱力を活かしながら、公生が一瞬にして惹かれる出会いのシーンを繊細に、儚くも美しく表現。予測不可能な天真爛漫さや、1人で大きな秘密を背負おうとする強さ、日陰で立ち止まったままでいる公生を陽の当たる場所に引っ張り出そうとする強さも魅力的です。

互いを知りたいが故にヤキモキする楽曲「君がわからない」では、思わずクスッと笑ってしまうようなチャーミングなお2人が印象的。「Perfect」「映画みたいに」「The Beautiful Game」「Speed of Sound〜カラフルに輝きながら〜」などキャッチーな音楽の数々も耳に残ります。

公生・かをりからは心の奥にある孤独が垣間見える一方で、椿と渡は太陽のような明るさで2人を支えます。2人のような存在が自分の近くにいてくれたら…と願う人も多いかもしれません。

部活や学園祭など高校生の青春と、プロの演奏家として音楽に向き合う厳しい競争の世界を描いた本作。双方でアンサンブルキャストのグルーヴ感が印象に残り、歌声の音圧や、藤林美沙さんが手掛けた振付がミュージカル作品としての厚みを感じさせます。

桜と五線譜が混ざり合って描かれた舞台美術も美しく、映像や照明も本作の美しいシーンの数々を彩ります。恋をして、音楽を心から楽しんで、世界が色づいていく公生とかをり。青春を思い切り謳歌する学生たち。その姿を通して、自分の人生を彩ってくれるものを思い出す人も多いのではないでしょうか。

かをりは公生に、自分の音楽が誰かに届いた瞬間を「君は忘れられるの?」と投げかけます。本作がくれる数々の感情と、目に焼き付けた名シーンを、きっと私たちは忘れないでしょう。

撮影:晴知花

ミュージカル『四月は君の噓』は2025年8月23日(土)から9月5日(金)まで昭和女子大学人見記念講堂で上演。その後、愛知・大阪・富山・神奈川公演が行われます。公式HPはこちら

Yurika

桜が印象的なモチーフとして描かれる本作が、世界に愛されてきたことを思うと胸が熱くなりました。