小説『あしながおじさん』を原作とするミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』が、2025年12月から2026年1月にかけて東京・シアタークリエにて再演されます。少女と紳士の心温まる愛の物語が3年ぶりに帰ってきますよ。
時代を超えて愛読される小説をもとにしたミュージカル
ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』の原作は、アメリカの女性作家であるジーン・ウェブスターの小説『あしながおじさん』です。孤児のジュディは、ある裕福な紳士の援助を受け、毎月手紙を送ることを条件として大学に通えるようになります。謎の人物を「あしながおじさん」と呼び、新しい環境での生活をユーモアたっぷりに書き綴るジュディ。多感な少女の心情や自分らしく成長していく姿を生き生きと描いた物語は、1912年に刊行されて以来、世界中で読み継がれています。
原作者のジーンは『トム・ソーヤーの冒険』で有名な作家のマーク・トウェインを母方の大叔父に持ち、大学在学中から新聞にコラムを執筆するなど文才を発揮。ベストセラーとなった『あしながおじさん』を自ら戯曲化し、続編の『ディア・エネミー(続あしながおじさん)』も出版しました。
世界的な演出家を筆頭とする製作スタッフ
ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』は、2009年にアメリカで初演されました。その脚本と演出を手掛けたのが演出家のジョン・ケアードさんです。演劇にオペラ、ミュージカルといった舞台芸術の分野において、シェイクスピアのような古典から現代作家の新作に至るまで幅広く演出を担当。数ある代表作のなかでも、ミュージカル『ニコラス・ニックルビー』と『レ・ミゼラブル』でトニー賞を2度受賞しました。また、イギリスのロイヤル・ シェイクスピア・カンパニー(RSC)では20作品以上を演出した実績から、同劇団の名誉アソシエイト・ディレクターとなっています。
日本でも、ミュージカル『レ・ミゼラブル』オリジナル版の潤色・演出を1987年の初演から2011年まで務め、大ヒット作品としての礎を築きました。堂本光一さんと井上芳雄さんがタッグを組んで話題となったミュージカル『ナイツ・テイル-騎士物語-』の演出も、ケアードさんによるもの。さらに、スタジオジブリの映画をもとに2022年に帝国劇場で世界初演された舞台『千と千尋の神隠し』では、翻案・演出を手掛けました。ロンドンや上海での公演で世界進出を果たし、2026年には韓国公演も決定しています。
そして、本作の音楽・編曲・作曲を担当するのはポール・ゴードンさん。ケアードさんとはミュージカル『ジェーン・エア』や『ナイツ・テイル-騎士物語-』で一緒に作品を作ってきた間柄です。
また、日本での初演時から翻訳・訳詞を手掛けている今井麻緒子さんは、『レ・ミゼラブル』の2007年から2009年までの公演でファンティーヌを演じていました。実はケアードさんの奥様でもあり、夫婦で製作に携わられているとは何とも素敵なお話です。
<あらすじ>
孤児院に暮らす18歳の少女ジルーシャ・アボットは、ある夜、「大学への進学と勉学を保証する」という思いもよらない手紙を受け取る。条件は、月に一度手紙を書くこと。手紙の送り主は、その夜に見た車のヘッドライトに照らされる足長蜘蛛 “ダディ・ロング・レッグズ”のような影。影でしか見たことのない相手だったが、ジルーシャは心を躍らせ手紙を送り続けた。影の正体であるジャーヴィス・ペンドルトンもまた、知性ある手紙を送ってくれる彼女に惹かれていくのに時間はかからなかった。
そして、ついにジャーヴィスは、影の正体であることを隠してジルーシャの前に現れる——
Wキャストで2通りの物語が観られる!
日本では2012年の初演から2013年、2014年、2017年、2020年、2022年と繰り返し上演されてきたミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』。
2025年版は、これまでの歴史を大切にしながらさらなる進化を予感させるキャスティングとなっています。
知的で紳士ながら一風変わった若き慈善家であり、「あしながおじさん」の正体でもあるジャーヴィス・ペンドルトン役は、初演から一貫して井上芳雄さんが演じます。今や数々のミュージカルや舞台で主演を務め、歌唱力と表現力の高さで観客の心を掴む実力派。近年は音楽・バラエティ番組やテレビドラマなどに出演し、ますます活躍の場を広げています。2025年10月現在はミュージカル『エリザベート』の東京公演にてトート役で話題を集めているほか、2026年2月には主演舞台『大地の子』が控えています。
一方で、明るく聡明なヒロインのルーシャ・アボット役が今回から初めてWキャストに。
1人は、俳優だけでなく声優や歌手、作詞家など多彩な顔を持つ坂本真綾さんです。初演から2020年まで同役を演じ続け、その演技を評価されて2013年には第38回菊田一夫演劇賞を受賞しました。井上さんと長くコンビを組んでいた坂本さんがカムバックするとあって、開幕が待ち遠しいファンも多いのではないでしょうか。
もう1人のジルーシャは、2022年に初めて本作に参加した上白石萌音さん。映像作品をはじめ、さまざまな舞台やミュージカルに挑戦して経験を積む中で、瑞々しい存在感を発揮。ジョン・ケアードさんと井上さんとは『ジェーン・エア』や『ナイツ・テイル-騎士物語-』で共演した実績があります。
ちなみに、演劇界にWキャストの仕組みを取り入れた人物こそ、本作を演出するジョン・ケアードさんなんです。
Wキャストを導入した2025年版のカンパニーには、新旧のジルーシャ役が揃うことに。井上さんと坂本さん、井上さんと上白石さん、それぞれの組み合わせから紡がれる2人芝居に期待が高まります。
ミュージカル『ダディ・ロング・レッグズ』は2025年12月12日(金)から2026年1月2日(金)まで、東京・シアタークリエにて上演されます。チケットの一般発売は10月25日(土)より開始。そのほか詳細は公式HPをご確認ください。
ヒロイン役がWキャストとなり、「どちらの上演回も観たい!」となるファンも多いのでは。もちろん、今まで観たことがない方も、3年ぶりの再演を良い機会として劇場に訪れてみてくださいね。



















