名曲「Calling You」でも知られる名作映画を元にミュージカル化された『バグダッド・カフェ』。11月2日からシアタークリエで日本初演を迎えます。開幕を前に囲み会見と公開ゲネプロが行われました。
「とにかく楽しく」「友達って良いなと感じていただける」
ミュージカル『バグダッド・カフェ』囲み会見には花總まりさん、森公美子さんと演出の小山ゆうなさんが登壇しました。

砂漠の真ん中にある「バグダッド・カフェ」に突然現れたドイツ人旅行者ジャスミンを演じる花總まりさんは、見どころについて「マジックを何種類かやりますので、そこを注目していただけたら。でも双眼鏡では見ないようにお願いしたいです(笑)。綺麗な心で見ていただけたらと思います」とチャーミングに語ります。
「バグダッド・カフェ」の女主人ブレンダを演じる森公美子さんは、様々なジャンルの楽曲を歌唱。「R&Bのような楽曲が多くて、フェイクしております。また何といってもこの作品には「Calling You」という大変素晴らしい名曲がございますので、これが一番難しいです。(花總さんと)2人で稽古中もずっとどうしようと悩んでいました。ぜひお楽しみに」と音楽の素晴らしさをアピール。

小山さんはお2人について、「トップランナーのお2人なんですけれども、努力を本当に惜しまず、マジックも含め、新しいことにチャレンジしていくことが素晴らしいなと思います。お2人とも稽古場にいらっしゃるのが凄く早いんです。スタッフより早く来て台本を読んだり、マジックを練習されたり。そして砂漠地帯で1人でカフェを切り盛りしている力強く前向きなパワーあふれるブレンダは森さんにしかできないブレンダですし、異邦人としてやってきて、みんな珍しがるんだけれども、なぜか魅力に取り憑かれていくジャスミンというのは、花總さんそのものでした」と語ります。
また「Calling You」については「1幕と2幕の2回出てくるので、ジャスミンとブレンダの関係がどう変化しているかというのを見ていただけたら」と語りました。

ミュージカル界で長くご活躍されているお2人ですが、意外にも本作が初共演。花總さんは森さんについて「初めてお会いした時から大好き」と語り、森さんも「花さんの『エリザベート』が大好きで、本物のエリザベートだと思うくらい凄くて」と絶賛。稽古場ではお隣のお席で、プライベートではご近所だったそうで、ご近所トークで盛り上がったことを明かしました。

会見最後には森さんから「本当に楽しい作品なのでたくさんの方に見ていただいて楽しんでいただければなと思っております。楽しいミュージカルで、コメディでもあるし、シリアスな部分もあり、色々な部分で考えさせられる問題もあると思いますが、とにかく楽しく見ていただければ」、

花總さんからは「作品の中で「友だち」という楽曲が何度もリプライズで出てくるのですが、人と人との絆、友達って良いなと感じていただけるような素敵な作品になっています。マジックも盛大にありますし、心がハッピーになって帰っていただける作品だと思いますので、ぜひ来ていただきたいなと思います」とメッセージが送られ、会見が締め括られました。
言語、文化、人種を超えた友情を「Calling You」と共に
本作の舞台は、アメリカ西部の砂漠にたたずむ、さびれたダイナーであり、ガソリンスタンド・モーテルも営む“バグダッド・カフェ”。女主人のブレンダは子育てや仕事、不甲斐ない亭主のサルにストレスを募らせ、言い争いの末にサルを追い出してしまいます。

そこに突然やってきたドイツ人旅行者のジャスミンもまた、夫と喧嘩の末、1人でカフェに流れ着いてきたのでした。女性1人で、車もなく、ドイツ語で話すジャスミンを不審に思うブレンダは冷たく接しますが、ジャスミンは徐々にブランダの娘フィリスや息子サル・ジュニア、カフェの隣に住む画家のルディなどと交流を深めていきます。

花總まりさんは南部訛りのドイツ語での台詞に挑戦。日本語での上演ではなかなか感じにくい「言葉が通じない異邦人」の存在感を表現していきます。言葉少なく、ミステリアスな雰囲気ながらもどこか人々が惹かれる愛らしさを醸し出すジャスミンは、まさに花總さんの魅力が詰まったキャラクター。

一方森公美子さん演じるブレンダは、日常に追われ、常に怒り口調。日常だけでも精一杯なのに、ジャスミンというイレギュラーな存在が現れて、やることなすこと腹が立つ。そんな心境は、誰もが実は共感できる役柄なのかもしれません。

ジャスミンはそんなブレンダと過度にコミュニケーションを取ろうとはせず、娘フィリス、息子サル・ジュニア、画家のルディなどと些細なきっかけで徐々に仲を深めていきます。

清水美依紗さんは、アメリカの若者フィリスをヒップホップ音楽と共にエネルギッシュに表現。ファッションを通じてジャスミンと「友だち」になっていく姿は、国籍や年齢を超えて人と人とが繋がる尊さを感じさせてくれます。

またシアタークリエらしい、客席通路を使ってバグダッドの空気に包んでいく演出も。本作の独特ながら緩やかで温かい世界観に劇場全体が包まれていきます。

ジャスミンとブレンダは、上手くいかない日常から抜け出せない苛立ちや閉塞感を感じていたという共通点があります。そんな現実を変えるのは大きな劇的な出来事ではなく、些細な、けれども確実に心を温める人と人との出会いでした。「Calling You」を始めとする温かな音楽と共に、「涙も乾く」砂漠バグダッドは、桃源郷のようにも思えてきます。

ミュージカル『バグダッド・カフェ』は2025年11月2日(日)から23日(日祝)までシアタークリエ、11月28日(金)から11月30日(日)まで愛知:Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール、12月4日(木)から12月7日(日)まで大阪:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、12月13日(土)から12月14日(日)まで富山:富山県民会館にて上演が行われます。公式HPはこちら

一緒に服を選んだり、話をしたり、コーヒーを飲んだり。友だちと過ごす何気ない時間が愛おしく思える作品です。マジックやファッション、音楽、絵画、コーヒーといった日常を豊かにしてくれる芸術・エンターテイメント・嗜好品が、人と人とを繋いでいくのが印象的でした。



















