King Gnu 井口理さんがメジャーデビュー後初の舞台出演となる『キャッシュ・オン・デリバリー』。イギリスの劇作家マイケル・クーニーによる作品で、嘘に嘘を重ねることで混乱が生じるワンシチュエーションコメディとなっています。12月5日に初日を迎え、開幕記念会見が行われました。
手拍子や笑い声によって作品が「完成」
『キャッシュ・オン・デリバリー』開幕記念会見には井口理さん、矢本悠馬さん、山崎紘菜さん、高木渉さん、入野自由さん、妃海風さん、まりあさん、脇知弘さん、明星真由美さん、小松和重さんが登壇しました。

12月5日に東京公演が開幕した本作。井口さんは演じる役柄について「エリック・スワンは社会保障省から手当を不正に騙し取って、給料の代わりに充てていて、その嘘がどんどん暴かれていく役です」と紹介し、「スピーディだし、複雑な内容なので初日どうなるかなと思っていたんですけれど、(キャストの)皆さんの集中力が凄く、そのおかげでしっかり成功させることができたかなと思います」と初日を振り返ります。

エリックの嘘に巻き込まれていくノーマンを演じる矢本悠馬さんは「大事にしていることは、台本通りにすること。気をつけていることは、台詞を噛まないように、間違えないようにすること。それくらいしかない」と冷静に作品と向き合っているご様子。

座長の井口さんについては「本読みや立ち稽古の段階から台詞を全部覚えてきて、台本を見ずにやる姿勢が素晴らしい」と明かします。井口さんは「プロ意識とかではなく、僕が怖がりなので。怖くて3ヶ月くらいかけて早めに覚えました」と謙遜し、初日までは「毎晩悪夢を。台本が違うものになっていたり、違う人とやったりとか、矢本くんに普段は言われないですけれど怒られたりとか、失敗する夢を見ました」と明かしました。
エリックの妻・リンダを演じる山崎紘菜さんは「お客様と一緒に舞台を作っているような気持ちで毎日舞台に立っています。一体感が凄く楽しいなと思いながら演じさせていただいています」とコメディ作品ならではの醍醐味を感じているよう。

エリックの不正受給に手を貸すアンクル・ジョージ役の高木渉さんは「エリックの共犯者です(笑)」と役柄を紹介し、「稽古場も凄く楽しかったし、良い緊張感で本番を迎えました。お客様も温かいので楽しいです」と心境を語ります。

ドクター・チャップマンを演じる入野自由さんは「リンダに呼ばれてスワン家に来て、夫婦関係をどうにか修復させようと奮闘するのですが、なかなか上手くいかないという役どころです。劇場に来てお客様の声、歓声と笑い声に助けられてついに(作品が)完成したなという感覚があります」とコメント。

福祉事務所の女性サリー・チェシントンを演じる妃海風さんは「毎回、お客様によって笑うタイミングも違って、お客様の鮮度を感じることができ、非常に楽しい毎日です。毎公演トライできることをとても楽しみに演じさせていただいています」と公演を振り返ります。

ノーマンの婚約者ブレンダ・ディクソンを演じるまりあさんは「お客様が温かくて、舞台上で安心して演じることができたなと思っております」とコメント。

ミスター・フォーブライト役の脇知弘さんは、「葬儀屋の役で、まっすぐな素直な台詞が多いです。一生懸命、職務を遂行しようとする人物です」と役を紹介し、「幕が開いた時、お客様の手拍子に凄く感動しました。生のリアクションというのを非常に感じられて、毎日僕もモニターを見ながら一緒に笑わせてもらっています」と明かします。

社会保障省の主任調査官ミズ・クーパーを演じる明星真由美さんは「込み入った台本で、嘘が折り重なっていくんですけれど、お客様が本当によく理解されていて、ここで笑えるんだなというのを改めて初日に自分で確認し、凄く素敵な初日を迎えました」と振り返ります。

社会保障省の調査員ミスター・ジェンキンズを演じる小松和重さんは「劇中で難しい漢字をいっぱい喋らされます」と苦労を明かしつつ、「温かいお客様に囲まれ、舞台上の皆さんは良い緊張感で、初日らしい初日を迎えられました。ビールを美味しく頂けた初日でした」と充実感を滲ませました。

本作の演出を手がけるのは、井口さんと共に学生の頃本作を上演したという小貫流星さん。『千と千尋の神隠し』『キングダム』などで演出助手を務め、本作が演出家デビューとなります。井口さんは小貫さんの演出について「押し付けがましいものではないというか、役者の個々を活かして、良さを引き出してみんなで作れるよう、慮っている方なので、役者の成長を促してくれる良い演出家なんじゃないかと思います。僕は彼としかやったことがないですけれど、でも凄く心地よいです。みんなが伸び伸びと芝居ができている気がします」と語りました。

嘘に嘘を重ねた先に待ち受けるものとは?
ロンドン郊外、エリック・スワンの家で展開されていく本作。エリックは妻のリンダに内緒で架空の間借り人をでっちあげ、社会保障手当を不正受給することで生計を立てています。

エリックは、でっちあげた人物を“抹殺”することで事態を収拾しようと試みますが…。時すでに遅く、社会保障省の調査員ジェキンズが調査に訪れます。
2階に間借りして住んでいるノーマンを巻き込み、なんとかジェキンズの調査を切り抜けようとするエリック。しかしエリックがでっちあげた人物を“抹殺”してしまったことで、福祉事務所のサリー・チェシントンや葬儀屋のミスター・フォーブライトもスワン家に到着し、事態はどんどん悪化。

さらにエリックが社会保障省から不正に受け取った支給品を見て不審に思ったリンダは、結婚生活カウンセラーのドクター・チャップマンに相談を依頼。嘘と勘違いが拗れ、エリックとノーマンは窮地に立たされていきます。

ロンドンのクラシカルなリビングルームで展開されていくドタバタ劇。リビングにはキッチンやダイニング、寝室に繋がるドアがあり、エリックとノーマンは不都合な人物たちを各部屋に押し込みながら、なんとか事態を切り抜けようと奮闘します。

ドタバタコメディならではのデフォルメの効いた表現と、スピーディな展開によって観客をぐっと物語の世界観に惹き込んでいく本作。会見で各キャストが口々に語った通り、観客がいてこそ、笑い声あってこそ成立する作品であり、演劇ならではの愉しみを与えてくれます。

井口理さんは、数多の嘘をつくことで混乱を生み出していく張本人ながら、悪びれた様子のあまりない、どこか飄々としたエリック像に。一方、矢本悠馬さんは嘘に巻き込まれていくノーマンを個性豊かに、感情豊かに演じていきます。
そして、段々と2人の嘘に振り回されてしまうミスター・ジェンキンズ役の小松和重さん、エリックの叔父で嬉々として嘘に加わるアンクル・ジョージ役の高木渉さんらの確かな演技力が作品全体に安心感をもたらします。

世界中で上演され、笑いという栄養を観客に与えてきた『キャッシュ・オン・デリバリー』。東京では2025年の年末を、大阪では2026年の年始を賑やかに彩ります。
舞台『キャッシュ・オン・デリバリー』は2025年12月5日(金)から21日(日)までTHEATER MILANO-Za、2026年1月8日(木)から12日(月祝)までCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて上演。公式HPはこちら
ありとあらゆる社会保障手当を受け取るため、ヘンテコな架空の人物がどんどん生まれていってしまうのですが、エリックとノーマンはなんとか辻褄を合わせようと奮闘します。脚本の巧みさに気付かされる瞬間が楽しい作品です。


















