2026年3月・4月に東京と大阪で上演される舞台『欲望という名の電車』は、1月にチケットが発売されると早々に完売。好評を受け、東京公演期間中である3月14日(土)の18時からの回が追加されました。追加公演のチケットは2月22日(日)より発売予定です。

名作戯曲に世界で唯一の“女方主演”で挑む

『欲望という名の電車』は、20世紀のアメリカ演劇を代表する劇作家テネシー・ウィリアムズによる戯曲です。物語では、没落した名家出身のブランチ・デュボアという女性が欲望と現実の狭間で悲劇的な末路を辿る姿を濃密な人間関係を通じて描き出します。1947年にブロードウェイで初演されて社会に衝撃を与え、ピューリッツァー賞を受賞。1951年にはヴィヴィアン・リーとマーロン・ブランドで映画化され、アカデミー賞を受賞しました。

日本における初演は、1953年の文学座公演。その時にブランチ役を務めたのが看板女優の杉村春子さんで、以来1987年の公演まで34年にわたり、約600回も同役を演じ続けました。そして2022年には新しいキャスト・スタッフの手で35年ぶりに上演され、2025年にも劇団公演が実施されています。

一方で、文学座以外でも多くのカンパニーが上演してきた演目であり、直近では2024年に沢尻エリカさんや伊藤英明さんらが出演した舞台が話題となりました。

発表から80年近く経ってなお、舞台だけでなく映画やドラマ、バレエなどさまざまなコンテンツで取り上げられる『欲望という名の電車』は、まさに不朽の名作といえます。

今回、2026年3月に開幕する舞台では、現代演劇の女方として知られる篠井英介さんが主演するのが見どころのひとつ。ブランチ・デュボアを演じる女方は、世界でも篠井さんしかいません。さらに19年ぶり4回目のブランチ役とあって、過去に観劇した方はもちろん、初めて観る方にとっても期待が高まります。

<あらすじ>
アメリカ南部、ルイジアナ州ニューオリンズ。南部の名家出身のステラは、ポーランドからの移民である夫スタンリー・コワルスキーと結婚し、貧しくも幸せに暮らしている。そこへ姉のブランチ・デュボアが突然訪ねてくる。デュボア家はフランス人が先祖の富裕な家柄だったが、ブランチは続いた親族の死をあげつらい、ついには家屋敷を手放したことを告げる。疲弊しきった様子のブランチ。ステラは姉を想って自分たちとの同居を勧め、三人の奇妙な共同生活が始まった。粗暴で直情的なスタンリーと、上品ぶった淑女気取りのブランチは暮らしのあらゆる点でぶつかり合う。破産したと言いながら、現実味のない言動で周囲を振り回すブランチを、スタンリーは怪しみ、彼女の過去や周辺を探り始める。一方のブランチは、スタンリーの同僚ミッチとの出会いに、新たな希望を見出しつつあった。束の間の平穏。だが、小さな貸家での暮らしは軋み始め、ブランチの誕生日に決定的な亀裂となる出来事が起きてしまう。行き場を失ったブランチがたどり着くのは……。

演出にG2を迎え、新たな『欲望という名の電車』に

主人公のブランチ・デュボア役で主演する篠井英介さんは、女方としての一面を含め、俳優として第一線で活躍し続けています。かつて劇団「花組芝居」の看板女方として人気を博し、退団後は舞台や映像作品、さらにはナレーション、朗読と活動の範囲を自由に広げてきました。多彩な役を演じ分ける表現力に加え、立ち居振る舞いや所作、言葉遣いを大切にする姿勢により、唯一無二の存在感を発揮。2023年には劇団「イキウメ」の舞台『人魂を届けに』と、演劇ユニット「ケムリ研究室」の舞台『眠くなっちゃった』の2作品にて紀伊國屋演劇賞の個人賞を受賞しました。2026年5月にはパルコ・プロデュース2026『リチャード三世』への出演が控えています。

そんな篠井さんにとって、『欲望という名の電車』は特別な作品だといいます。中学生の頃に戯曲を読んで衝撃を受け、のちに杉村春子さん演じるブランチを目の当たりにしてより一層強く魅了されるようになったそう。

篠井さんが念願のブランチ役を初めて務めたのは、2001年の舞台です。しかし、本来であれば1992年に初演を迎えられるはずでした。実はアメリカ側から上演許可を得ていたものの、当時の著作権管理者が「歌舞伎でもないのになぜブランチ役が女方なのか」と公演中止を要請したため、やむなく上演を断念。それから9年かけて粘り強く交渉し、ようやく上演に漕ぎつけたという経緯があります。

以降、篠井さんが女方のブランチとして臨む『欲望という名の電車』は2003年と2007年にも上演され、自身の代表作に位置付けられる存在となりました。そして再々演から19年の時を経た今、これまで積み重ねてきたものを糧にブランチと向き合いたいという熱意が、4回目の挑戦を後押しする原動力となっています。

また今回、新たに演出を担当するのが舞台演出家・劇作家のG2さんです。脚本や演出に加えミュージカルの翻訳・訳詞も手掛けるなど、多岐にわたってクリエイティブな才能を発揮。2025年には人気漫画を原作とするミュージカル『SPY×FAMILY』やオリジナルミュージカル『コレット』で、脚本・作詞・演出を担いました。今後も、2026年5月に上演予定のミュージカル『アイ・ラブ・坊っちゃん』で演出を、7月に舞台化される2024年本屋大賞受賞作の『成瀬は天下を取りにいく』で脚本・演出を担当することが決定しています。

G2さんと篠井さんは、さまざまなアプローチで”女”を表現するユニット「3軒茶屋婦人会」で何度もタッグを組んできた仲。その信頼関係をベースに、G2さんが本作の翻訳も手掛けます。戯曲の原文が持つ意味を汲み取りながら現代に生きる日本語へと変換することで、観客を物語の世界観に引き込みます。

幅広いジャンルで活躍する俳優陣が集結

篠井さんを支えるキャストも実力派が揃っています。

ブランチの妹であるステラ・コワルスキー役は、文学座に所属する松岡依都美(いずみ)さんです。劇団内のみならず外部公演にも積極的に参加し、栗山民也さんや上村聡史さんといった著名な舞台作家・演出家から信頼を得ています。2020年にこまつ座の『きらめく星座』および文学座の『五十四の瞳』にて第55回紀伊國屋演劇賞の個人賞を受賞。また、近年は映像作品での活躍も光り、とりわけ2024年にNetflixで配信されたドラマ『地面師たち』の尼僧・川井菜摘役で注目を集めました。2026年5月には、彩の国シェイクスピア・シリーズの最新作となる『リア王』に出演します。

ステラの夫であるスタンリー・コワルスキー役は、数々の映像作品や舞台で印象に残る演技を見せ、名バイプレーヤーとしての立ち位置を確かなものにしている田中哲司さん。実は田中さんは、本作の2001年版と2003年版にハロルド・ミッチェル役として出演していました。前回までとは違い、ブランチと衝突し合って物語を動かしていく人物をどのように解釈して演じるのか、とても気になるところです。

また、スタンリーの同僚のハロルド・ミッチェル、通称ミッチ役には、名だたる演出家の作品に参加して実力を磨いている坂本慶介さんをキャスティング。直近の出演作に舞台『スリー・キングダムス Three Kingdoms』やパルコ・プロデュース2025『先生の背中』、演劇ユニット「新ロイヤル大衆舎」による舞台『花と龍』などがあります。

さらにスタンリーとステラが住むアパートの大家であるユーニス・ハベル役で、大人計画に所属し、個性的なキャラクターの演技に定評のある宍戸美和公さんが登場。その夫のスティーヴ・ハベル役を演じる森下創さんは、劇団「イキウメ」結成時からのメンバーであり、劇団公演を中心に活躍しています。

このほかスタンリーの友人パブロ・ゴンザレス役で劇団「コンドルズ」所属のぎたろーさん、看護婦とメキシコ女役で舞台と映画を中心に活動する平井珠生さん、集金人の若者役で若手俳優として経験を積む松雪大知さんが出演。医師役の吉田 能(たかし)さんは、演劇ユニット「あやめ十八番」のメンバーでありながら作曲家・ピアニストの顔を持ち、本作では音楽・生演奏も兼任します。

吉住モータースpresents『欲望という名の電車』は、2026年3月12日(木)から22日(日)まで東京芸術劇場 シアターイーストにて上演。4月4日(土)・5日(日)には大阪・近鉄アート館でも上演されます。

今回決定した追加公演は、東京公演期間中の3月14日(土)18時からの回。チケットは2月22日(日)の10時から発売開始します。詳細は公式HPをご確認ください。

もこ

女性の主人公を女方の俳優さんが演じるという、世界でも例を見ない舞台。気になる方は、追加公演のチケットをチェックしてみてくださいね。