パルコがプロデュースするシェイクスピア作品を森新太郎さん演出、吉田羊さん主演で上演するシリーズ第三弾『リチャード三世』。約10年ぶりの本格舞台出演で本作に挑む中越典子さんは、王妃エリザベスと、王位を手にしたリチャードに攻め入るランカスター家のリッチモンド2役を演じます。念願だったという舞台出演への思いと本作の魅力を伺いました。

舞台に立ちたい。強い思いを溜め込んで、ようやく叶った出演

−本格的な舞台出演は約10年ぶりとなる中越さん。久しぶりに舞台に挑もうと思われた理由は何だったのでしょうか。
「2015年に栗山民也さん演出の舞台『藪原検校』に出演させて頂いて以降、ずっと舞台に立ちたいという思いは強くありました。でも子育てもあったのでなかなか環境的に難しく、思いを溜め込んで溜め込んで、ようやくタイミングがバチっとハマったのが今回でした。吉田羊さんが主演で、森さんの演出で、シェイクスピアができる。これはもう覚悟を決めてやろうと思いました。子どもたちとの時間を削ってでもやるんだから、とことん自分を追い込んで、入り込める作品にチャレンジしたい。長年思い続けて、いよいよ挑戦できるという気持ちです」

−舞台『藪原検校』は中越さんにとってどのような経験だったのでしょうか。
「本当にめちゃくちゃ楽しかったんです。江戸時代を描いた戯曲で、騙し騙され…というものだったんですけれど、現実とは全く違う世界に入り込んで、自分がそこで生きているかのような感覚が味わえました。栗山さんがどこかチャーミングで、でもとても残酷な世界観を描かれて、すごく刺激的で。野村萬斎さんとご一緒できたというのも、私にとっては嬉しく誇りでした。毎日体がボロボロでも楽しくて快感で、あの体験をまた出来ればという気持ちが強いんです。映像では母親役など自分に近い、現実的な役柄が多いですが、舞台は別世界に飛び込んでいけます。未熟な自分でも、色々な方の意見をいただきながら少しずつ稽古で作り上げていける時間があるので、それも期待している部分です。“失敗してはいけない”ではなく、“失敗してでも、壊れてでも、チャレンジしていこう”という気持ちでいます」

リチャードのダークな生き様が魅力的

−『リチャード三世』の戯曲を読まれてどんな印象を受けられましたか。
「リチャード三世というのはとても不思議で魅力的な人物ですよね。嫌いになるはずが、嫌いと同時に好きが出てくるような人だなと思いました。エリザベスも子どもを殺された憎しみに駆られながらも、話術や精神面でやり込められてしまう。まだエリザベスの心情を全て理解できているわけではないですが、リチャードのずる賢さと生々しさ、のし上がっていくエネルギーを感じました。私はリッチモンドも演じさせていただくということですが、リッチモンドがなんだか物足りなく感じるくらい、リチャードのドロドロとした姿は魅力的です。天下を取ったのが一瞬だったというのもダークヒーロー的でかっこいいですよね。それを吉田羊さんがどう演じられるのかとても楽しみですし、それに対峙するエリザベスとして、私も力を付けていかなければいけないと感じました」

−中越さんはエリザベスとリッチモンドの2役を演じられるので、リチャードから大切なものを奪われる立場と、奪う立場の両方からリチャードと対峙することになりますね。
「そうですね。リッチモンドはリチャードとあまり会話がありませんが、その中で説得力と正義感、次の時代への希望、明るさを持ってこなければいけません。人に信頼されている人間が、最後は勝ち取る。そのシーンを輝かせるためには、リッチモンドの真っ当な王位継承者としての品格を表現しなければいけないと思います」

−今の世界情勢とも重なる部分がありそうです。
「演劇や芸術は全て、自分と重なったり、時代と重なったりする瞬間があると思います。だからこそ共感できて入っていけたり、ふと自分を置き換えて、見たことを活かしたりしていけますよね。そういうところが演劇の面白さだと思います。今はこの『リチャード三世』が自分の中にある何かとどう重なってくるか、まだ明確には見えていないのですが、稽古の中で、森さんの演出のもと、見つけていきたいです。私がリチャードに惹かれるのは、私の人生では選べない道を選んでいるからなのかなという気がします。
これが何百年も前に書かれているというのがまた面白いですよね。若い頃はシェイクスピアというと難しい印象がありましたが、歳を重ねると味わいが少し理解できるようになっているのかなと、今回戯曲を読んで感じました。どう咀嚼していけば良いのかはまだまだ未開拓ですが、ただの台詞劇ではなく、ものすごく太いものが通っていて、スケールの大きさを感じます」

−ビジュアル撮影はいかがでしたか。
「作品全体のダークな雰囲気が感じられました。シルバーや光沢のあるもの、重厚感のある衣装で、重みのあるかっこよさがありましたね。エリザベスも王妃になるためには色々な悪い一面があって上り詰めてきたので、色々な策略を持ってのし上がってきた恐ろしさを出せたら良いなと思って撮影しました」

吉田羊さんとの共演も出演を決めた理由の1つ

−リチャードを演じる吉田羊さんの印象はいかがですか。
「20年ほど前にドラマで1〜2シーンほどご一緒した以来なのですが、吉田羊さんとご一緒できるというのも、今回出演を決めた理由の1つです。拝見していると、面白くて、頼もしくて、サバサバしていて、かっこいいというイメージ。そして私が佐賀県出身、吉田羊さんは福岡県出身ということで、同じ九州出身です。とても懐が深そうですし、物足りない時は言ってくださりそう。“物足りない、こうしよう”みたいなこともお話しできたら良いなと思っています。色々なことを受け止めてくれそうな座長だと思うので、飛び込んでいきたいです」

−森新太郎さんの演出を受けられるのは初めてですね。
「森さんの演出を受けると言うと、“じっくりやってもらえるね”と言われるので、覚悟はしています。でももし自分がボロボロになったとしても、良い演劇になれば良いんです。観ている皆さんが惹き込まれる作品になるためだったら。ただ心身ともに崩してしまったらいけないので、自分を保って向き合いたいと思います。家に帰れば子どもがいますから、帰ったら自然とスイッチオフできると思います」

−最後にメッセージをお願いします。
「今の段階ではまだ稽古に入っていないのでどんな作品になるのか想像がついていないんですけれども、誠心誠意を込めて、キャスト・スタッフの皆さんとタッグを組んで、お客様と一緒に物語を紡いでいければと思います。エリザベス、リッチモンドと自分が重なる部分を見つけて、そこに入り込んで生きていきたいと思います。ぜひ観にきてください」

撮影:蓮見徹

パルコ・プロデュース2026『リチャード三世』は2026年5月10日(日)から5月31日(日)まで東京・PARCO劇場で上演。6月6日(土)から6月7日(日)まで大阪・森ノ宮ピロティホール、6月13日(土)から6月14日(日)まで愛知・東海市芸術劇場 大ホール、6月20日(土)から6月21日(日)まで福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール、6月27日(土)に岩手・奥州市文化会館 Zホール 大ホールにて上演が行われます。公式HPはこちら

Yurika

どんなに非人道的でものし上がり、渦を作り出し、王冠を掴み取るリチャード三世の姿には毎回様々な思いが巡ります。2026年上演の『リチャード三世』は、今の世界をどう映し出すでしょうか。