2026年5月に日本初演されるミュージカル『レッドブック〜私は私を語るひと〜』。19世紀のロンドンを舞台に、主人公アンナが社会の偏見と闘いながら小説を書くことで自分らしい生き方を模索する姿と、ブラウンとのロマンティックなラブストーリーを描きます。アンナを演じる咲妃みゆさん、ブラウンを演じる小関裕太さんに本作の魅力を伺いました。

人物の心情を美しく投影した楽曲たち

−本作への出演が決まった際の心境をお聞かせください。
咲妃「まず率直に大変嬉しく思いました。アミューズグループさんがこの作品を日本でお届けすることに対して熱意を持っていらっしゃることを感じましたし、アミューズグループさんの新たな挑戦になる中で、私の名前を挙げていただけたことを光栄に思いました。自分自身、人生に掲げている目標が挑戦し続けることですので、またとないありがたい機会だなと思ってお引き受けしました。演出の小林香さんとは『シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ』(2020年)以来で、絶対にいつかまたご一緒したいと思っていたこともあり、二つ返事でお引き受けしました」

小関「台本を読み、楽曲を聴き、色々と作品について知っていくうちに、これは面白いなと思いました。19世紀ヴィクトリア時代を描きながらも、現代に生きる自分の背中を押してくれる作品で、パワーやエネルギーを感じたので、ぜひ携わりたいと思いました。楽曲も素晴らしく、聴いていてワクワクしましたね。自分がもしこの作品に携わるなら、どういうふうに参加するかなというイメージがすぐに湧いたので、やりたいと思いました」

−イ・ソニョンさんが手がける音楽の魅力について詳しくお聞かせください。製作発表では実際に楽曲を歌われましたが、いかがでしたか。
咲妃「なんて素晴らしい作曲家さんなのだろうと、ひしひしと感じています。メロディーの中にシーンの情景や人物の心情が見事に美しく投影されていて。楽曲自体は難しいと感じるのですが、役の心理を追究する上ではストレスがない。登場人物、物語のことをしっかり理解した方が誕生させた楽曲たちなのだなと、熱い想いを感じました」

小関「耳心地が良く、総合的に見た時に楽曲同士がリンクしている仕掛けが面白いです。それに加え、サウンド感が時代背景を抽出している感覚があります。バロック調だったり、ポップスともまた違う、時代や文化を感じられる音楽が、現代に作られているというのが面白いなと思いました」

2人の関係性もにじみ出るアンナとブラウンに

−それぞれ演じる役柄について、現時点ではどのように捉えていますか。
咲妃「仮にアンナが現代に生まれていたら、もう少し生きやすかったのではないかと思います。今は“多様性”という言葉が我々の生き方に光を当ててくれているなと思いますが、この作品が描く時代ではまた違った価値観の中で人々が生きています。アンナの生き方は誰しもが受け入れられるものではなかったし、小関さん演じるブラウンさんにとってもこんな生き物は見たことがないと思うくらいの言動を、彼女が躊躇なくしていくので、本当に衝撃的な人物だと思うんです。
私は、彼女に共感する部分がいっぱいありますが、自分の思考のままやってしまうと、作品の中で表現したい彼女の葛藤や抗いとはズレてしまうかなと思います。演じさせていただく私も、何かに抗ってもがいてもがいて、這い上がるエネルギーをしっかりと意識しながら向き合いたいと思っています。
総じて大変魅力的な人物だなと解釈していますし、アンナが接していく人々はそれぞれの信念を持って生きている人たちばかりです。人々との触れ合いを丁寧にお届けできたらと思っています」

小関「ブラウンは紳士であることしか知らない、紳士であることが正義であり、紳士であるための生活をしている中でアンナと出会い、掻き乱され、新しい自分らしさ、自分自身を見つけていく物語となっています。なので、空回りするチャーミングさのある人物だなと思います。俯瞰してみると、ブラウンにとってアンナは本当に衝撃的だっただろうし、ある種、宇宙人に会ったような感覚だったかもしれません。時代も文化も超えたところから、新しい価値観がやってくる。自分にはなかった価値観、アイデアが入ってきてスパークする、そのスパークが恋のスパークに繋がっていって、彼の人生を良い意味で狂わせていきます。生真面目さがとても大事になるキャラクターだなと思います」

−ドラマで共演経験があり、今作が舞台初共演となるお二人。俳優としてのお互いの印象はいかがですか。
咲妃「丁寧で、おおらかで、根底にはすごく熱いお気持ちをお持ちなのだなと感じています。ドラマでご一緒した時とはまた全然違う役どころですので、どんな小関さんが拝見できるのか楽しみです。何色にもなれる俳優さんなんだろうなと思いますし、お芝居を楽しむお心を持っていらっしゃるところも素敵だと思います」

小関「これまでステージの上で輝いている咲妃さんを観てきていますので、既に安心感がありますし、素敵な創作時間をご一緒できたら良いなと思っています。お人柄に触れる中で、アンナという役がすごくぴったりだなと感じます。自分が演じるブラウンはこれから構築して行く予定なので、まだあまり固めようとしていなかったんですが、今の2人の関係性がにじみ出た方が作品としてもキャラクターとしても良いのかなと思いました。過去の韓国の公演でも演じる俳優さんによって行き着くロマンスやストーリーの行方、感じるテーマが変わってくることを実感したので、そういう意味で気楽にやっていいのかもと思えています」

−演出を務める小林香さんへの印象について教えてください。
咲妃「私、香さん大好きです。俳優の悩み事や、役づくりで理解が及んでいないことに対して、親身になって一緒に解決の糸口を探してくださいますし、どんなに時間がかかっても諦めないでいてくださる方だと思っています。
『シャボン玉とんだ 宇宙(ソラ)までとんだ』の時、本読みの日に失礼のない格好で行ったら、“明日以降はノーメイク、何も飾らずに、だっさい稽古着で来てください”というオーダーをいただいたんです。そういうことは初めてだったので最初は驚いたのですが、本来の私とかけ離れた境遇で育った人物を演じることになった私に対して、すごく的確な導入方法を示してくださいました。もちろん形から入ることが全て正解とは思いませんが、その時の私は、感謝でいっぱいになりました。
お稽古場で私がどんなへなちょこなことをしても、それを否定せずにむしろ面白がって、“そうだそうだ、その調子だ”と背中を押してくださったので、今回も全てをさらけ出して飛び込んでいきたいなと思っています」

小関「小林香さんとは約10年前に『DNA-SHARAKU』というオリジナル作品でご一緒しました。様々なジャンルで第一線に活躍される方々が集まって創る壮大なSF作品で、すごく楽しかったのですが、今思うとそれらを全て取りまとめ、脚本・作詞・演出を手がけた小林香さんはものすごいプレッシャーだったと思います。そんな中、バランス感覚を持ちながら1人1人と向き合われていて、人間としてのパワーを持っている方だなと感じました。10年の時を経て、僕自身も良きも悪きも経験して培った今通用するものと、また新しい価値観が降ってくると思いますし、創作期間が楽しいものになるだろうなと確信しています。大きい安心感と信頼感を持っています」

言葉への誇りと責任があるからこそ、影響力がある

−本作ではアンナが小説を書くことで社会と闘います。製作発表では小林香さんから、匿名性の高い時代に、言葉を大切にした本作を届ける想いも語られました。お二人はアンナの生き様をどう感じられていますか。
咲妃「アンナにとって小説を書くことは大切な自己表現の1つです。何かを書いて発信する時は、やはり責任が伴うものですよね。アンナ自身がそこまで意識をしているかどうかはさておき、自分の発する言葉に誇りを持った人なので、一言一言に力強さがあり、影響力があり、受け入れられる人とそうでない人に分かれるのだと思います。私も俳優として自分が発する言葉には常々責任を感じ、思いを巡らせながら発していので、アンナの情熱から学ばせていただくことが多いなと思います」

小関「歌詞を間違えないように頑張ります(笑)。というのも、やはりこの作品において言葉の重要性というのをすごく感じるからです。それを感じていたが故に、製作発表で歌った時はすごく緊張しました。歌詞に込められている言葉、例えば接続詞1つ変わるだけでも感じ取り方が変わりますし、それは現代でも、SNSなどでもそうだと思います。この作品の言葉をしっかりお伝えするためには、単に台詞や歌詞を覚えるだけではなく、理解し咀嚼することが必要なので、どんな経緯でその言葉になったのか、自分なりの解釈もしながら、時間をかけて向き合っていきたいと思います」

−一方で、ロマンティックコメディとして楽しいシーンも多い作品ですね。お二人ともコメディ作品でも魅力を発揮されている俳優さんなので、期待が高まります。
咲妃「そういう印象を抱いていただけるようになったことが嬉しいです。コメディに関しては学ぶ機会に恵まれてきましたので、その全てを注ぎ込んで挑む所存です。コメディはその時々の空気も重要だと思います。お客様のことを意識し過ぎるのもよろしくはないけれど、意識しないのも置いてきぼりになってしまうので、舞台と客席の一体感、その日その日の空気を感じながら、一緒に楽しめたらなと思います」

小関「エハラさんもいらっしゃるので、楽しみですね。私生活ではボケたり突っ込んだりするノリが好きなのですが、演劇におけるコメディの難しさは何度も目の当たりにして、そこを頑張って打ち破ってきたので、今回も稽古場で色々と探していきたいです。役を通して、この作品を通して、真剣に面白いことができたらなと思います」

−最後にメッセージをお願いします。
小関「どうしても作品のあらすじを読むと、女性が主役で、女性の背中を押すという風に捉えがちですが、実際に韓国で作品を観た時、台本の印象が大きく変わり、様々なストーリーが見えました。楽曲やシチュエーションを通しても様々なキャラクターの感情や背景が細かく描かれている作品なので、観にきてくださる方が気になった目線から、自分らしさを知るきっかけや自分と向き合う勇気を持ち始めるきっかけを、見つけていただけると思います。多角的な視点で観ていただきたいですし、大前提、肩の力を抜いて見てもらえるロマンティックコメディです。何か得るものはありますが、肩肘張らず、ぜひ楽しみにしてほしいです」

咲妃「本当にその通りです。これぞミュージカルという楽曲もありますし、お楽しみいただけるように心を込めてお届けしたいです。キャスト全員の力を結集して、人の力で生み出すエネルギーを受け取っていただけるよう、全力で挑ませていただきます。たくさん笑いながら、たくさん考えながら、演劇というものに触れる楽しさを感じていただけるように願っています」

撮影:山本春花、咲妃みゆヘアメイク:本名和美(RHYTHM)、咲妃みゆスタイリスト:國本幸江、衣裳:ADELLY(Office surprise)03-6228-6477、小関裕太ヘアメイク:Emiy、小関裕太スタイリスト:吉本 知嗣

ミュージカル『レッドブック 〜私は私を語るひと〜』は2026年5月16日(土)から5月31日(日)まで東京建物 Brillia HALL (豊島区立芸術文化劇場)、6月27日(土)から 6月30日(火)まで森ノ宮ピロティホール、7月4日(土)から7月5日(日)まで御園座にて上演されます。公式HPはこちら

Yurika

ロマンティックコメディという温かで柔らかな雰囲気の中に、1本強い芯の通った作品だと感じました。お2人ともコメディも素敵な役者さんなので楽しみです!