貧しい青年アラジンとプリンセス・ジャスミンの身分違いの恋を描いた『アラジン』。有名なディズニー映画ですが、アニメ版をリメイクして2019年に公開された実写版映画『アラジン』はもうご覧になりましたか? 5月21日には「金曜ロードショー」で実写版映画『アラジン』の初放送が予定されています。実写版では、ジャスミンがアラジンやジーニーに負けず劣らずの大活躍!あなたが知っている『アラジン』の印象が少し変わるかもしれません。

01 アニメ版では明かされなかったジャスミンの夢

プリンセスであるジャスミンの夢は、自分が生まれ育ったアグラバーの国王になること。これはアニメ版映画では描かれなかった実写版のオリジナル要素です。しかし、女性が国王に就いた事例はアグラバーの歴史の中で一度もありません。

父である国王からは外国の王子との結婚をすすめられますが、見合いに来るのは自分の外見と財力にしか関心を持たない王子ばかり。彼らがアグラバーの国民を守ってくれるとは、ジャスミンには到底思えないのでした。

国民をよく理解する国王になるために勉強に励むジャスミンですが、大臣のジャファーからは「勉強しただけでは経験が身につかない」、「女に賢さは必要ない」と馬鹿にされる始末。ジャスミンは自分の思想に共感してくれる、もしくは同じ価値観を持つ理解者がいないことに、閉塞感を募らせます。

02プリンセスの内なる声を解放した「Speechless」

男性優位の社会に果敢に立ち向かうジャスミンの勇気を歌ったのが、実写版の新曲として追加された楽曲「Speechless(スピーチレス)」。ジャファーが国を乗っ取ろうとしたとき、ジャスミンは今まで押し殺してきた信念をこの曲に込めて、誰が正しい指導者なのかを見極めるように屈強な衛兵を説得しました。

この曲で、ジャスミンは「プリンセスは自分の力で困難と闘う強さを持っている」ということを証明したのです。「Speechless」は直訳すると「口のきけない」という意味を表します。

この曲の歌詞は、アニメ版でジャスミンと政略結婚を企んだジャファーが、彼女に対して「嬉しくて声も出ないようですな」と言ったことに影響を受けたそうです。本当は怒りのあまり言葉を失っていたジャスミンの心情を、「Speechless(スピーチレス)」が代弁してくれたのですね。

03 身分違いのジャスミンとアラジンが恋に落ちた理由は…?

宮殿を抜け出したジャスミンは、泥棒であるアラジンに恋をします。彼はジャスミンが今まで出会った中で、うわべだけで中身を見てもらえないもどかしさを理解する唯一の人でした。ジャスミンが自分をプリンセスとしてではなく一人の人間として認められたいと願っていたように、アラジンも泥棒としてではなく心の中を見てくれる人を求めていたのです。

王子と偽ってジャスミンと再会したアラジンは、彼女の夢を肯定します。「宮殿を抜け出して自分の国をもっとよく見たい」というジャスミンのために、魔法のじゅうたんでアグラバーの国を巡ったのが名曲「A Whole New World」なのです。

さきこ

『千夜一夜物語』の『アラジンと魔法のランプ』では、プリンセスは主人公が得た「宝物」の一つにすぎませんでした。そこからジャスミンという強い意志を持ったキャラクターとして生まれ変わり、さらに28年後の実写版ではしきたりや性別にとらわれない現代的な女性像として描かれています。 もしもジャスミンが原作と同じようなプリンセスだったら、『アラジン』はここまで多くの人に愛される映画になっていなかったかもしれません。実写版『アラジン』を鑑賞する際は、ジャスミンのストーリーにも注目してみてくださいね。