2019年に公開されたエルトン・ジョンの自伝的ミュージカル映画『ロケットマン』。エルトン・ジョンと、彼の楽曲制作のパートナーでもあるバーニー・トーピンとの友情が描かれています。公開された年にデビュー50周年を迎えたエルトン・ジョン。そこで今回は、彼の知られざる成功の裏側に迫ります。
両親から愛をもらえなかった少年時代
主人公であるレジナルド・ドワイト(レジー)は、主婦の母と軍人の父、祖母のアイヴィと一緒に暮らしていました。両親の仲は悪く、レジーは孤独。遠征から帰宅する父に「抱きしめてくれないの?」と聞くも、抱きしめてくれないどころか怒鳴られてしまいます。そんな孤独なレジーの唯一の救いだったのが、祖母のアイヴィです。
ある日、ラジオから流れる音楽をレジーは楽譜も無いままメロディをピアノで弾きはじめます。それを見ていたアイヴィは、レジーに本格的にピアノのレッスンを受けさせることにしました。音楽院のオーディションもなんなく合格し、英才教育をうけることに。
その後レジーは、母が浮気している姿を見てしまいます。そして、父が家を出ていくことに。涙を流すレジーは、「お別れに抱きしめてもくれない」と傷つくのでした——。
スターへの階段、堕落していく人生
音楽院に通いはじめたレジーは、エルヴィス・プレスリーに影響を受け、髪型を真似します。そして、仲間と共にブルーソロジーという名前のバンドを組み、小さな店で音楽活動を始めました。
そんなある日、音楽の才能を募集する広告を目にします。面接を受けにいき、名前を聞かれたレジーは「エルトン・ジョン」と名乗りました。そして、作詞家のバーニー・トーピンと出会い、意気投合します。
詩をバーニーが書き、エルトンが曲を作り、『Honkey Cat』が生まれました。その後デビューが決まり、エルトンとバーニーはロサンゼルスへと旅立ちます。才能を持ち合わせたエルトン・ジョンはなるべくして大スターへと駆けのぼっていきました。
しかし、若くして得た成功の先にはいくつもの試練が待っていたのです。当時、理解されることのなかった同性愛、両親との確執、裏切り、そして苦悩の末に堕ちていったドラッグとアルコール……。
伝記をしっかりミュージカルで表現!
さまざまなタイプのミュージカル映画はありますが、伝記というジャンルはなかなか珍しいのではないでしょうか。物語の序盤から、鮮やかに歌って踊るシーンが登場し、ミュージカルで幕を開けます。
グラミー賞を5回も受賞し、世界一の売り上げ記録を持つ天才ミュージシャン、エルトン・ジョン。そんなエルトン役には、『キングスマン』でも知られるタロン・エガート。そのほか、同じくミュージカル映画の『シンデレラ』にも出演をしているリチャード・マッデンなど、演技派俳優が集結!そして、『ボヘミアン・ラプソディ』で最終監督をつとめたデクスター・フレッチャーがメガホンをとりました。さらに、エルトン・ジョン自身も製作に参加しています。数々の名曲はもちろんのこと、波乱に満ちた天才のヒューマンドラマは、見ごたえたっぷりの映画です。
天才と言われる人物に、孤独はつきもの。エルトン・ジョンも例外ではありませんでした。不遇な幼少期、スターになってからも愛されないという苦悩。ヘヴィーとも思える半生を、歌うことで暗くさせないのがミュージカルという表現の良さでもあるかもしれません。エルトン・ジョンのファンは勿論のこと、映画として構成や演出も見事な感動作をぜひ、見てみてください!