日本では2005年に公開された映画『ネバーランド(原題:Finding Neverland)』。劇作家ジェームズ・マシュー・バリが、父親を亡くし傷ついた少年と出会い、名作『ピーターパン』が生まれるまでを描きだした感動作です。ミュージカル化もされた本作は、2015年にブロードウェイ上演を成し遂げ、2017年には初来日上演を果たしました。
傷ついた少年が『ピーターパン』のインスピレーションに
主人公である劇作家のジェームズ・バリは創作に行き詰まっていました。ある日、散歩に出かけた公園で、美しい未亡人のシルビアと彼女の4人の子どもに出逢います。少年心を持ちあわせているバリは子どもたちとすぐに打ち解けますが、父の死で深く傷つき心を閉ざしたままの子どもがいました。その子の名前がピーターです。
夢を見ることや信じる心を失くしかけていたピーター。そんな彼に想像力の翼を広げることや、夢を見ることの大切さを教えていくバリは、創作への情熱を呼び戻していきます。
そうして、『ネバーランド』に住む、永遠に歳をとらないピーターという少年の物語を書きはじめるのでした。バリに少しずつ心を開いていくピーターですが、ふたたび悲しい出来事が待ち受けます——。
夢を見ること、信じることで、見る世界は変わる
ジェームズ・バリ役には、ファンタジー映画で多数主演を務めるジョニー・デップ。ピーターパンのインスピレーションの元となった少年のピーター役には、のちに『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)で再共演を果たすフレディ・ハイモア。そしてピーターの母親役にはケイト・ウィンスレット。そのほかダスティン・ホフマンなど実力派俳優らの演技が楽しめるのも本作の魅力です。また、第77回アカデミー賞では作品賞など全7部門にノミネートされ作曲賞を受賞し話題を集めました。
本作はミュージカル化され、ブロードウェイで上演、さらに日本でも来日上演を果たし、人々を魅了しました。演出には、トニー賞を受賞したことのある演出家ダイアン・パウルスが手掛け、心に残るファンタジーを舞台で表現。美しい曲の作詞・作曲にはポップグループのテイクザットからゲイリー・バーロウが担当しました。
美しい歌詞とメロディーは、実際に観て聴いてみたくなります。世界中から愛される『ピーターパン』の誕生ストーリー。悲しい現実と夢の世界。信じることを失いかけたピーターの姿には、切なくも共感を覚える人も多いのではないでしょうか。心に沁みるシーンが沢山つまった本作は、大人になって忘れがちな大切なことを思い出させてくれるヒューマンドラマです。
子どもの頃から慣れ親しんだ『ピーターパン』の誕生秘話がこんなにも美しい物語だとは知りませんでした。いつか、ミュージカルも必ず観てみたいものです。そして、特殊メイクされたキャラクターでお馴染みのジョニー・デップ。今作でのナチュラルで心に響く演技には、思わず惹き込まれてしまいました。寒さが一段と増してきた今日この頃。『ネバーランド』で心を暖めてはいかがでしょうか。