3月4日の「金曜ロードショー」で放送されるのは、ディズニーピクサー映画の人気作『リメンバー・ミー』。音楽に憧れを持つ少年ミゲルが死者の国に迷い込むという奇想天外なストーリーは、メキシコの祝日である「死者の日」を題材にしています。

メキシコ人が最も重要な祝日だと言う「死者の日」には、いったいどんな風習があるのでしょうか?既に『リメンバー・ミー』を見たことがある人も、作品の重要なテーマである「死者の日」を知れば、改めて映画を見返したくなりますよ。

メキシコの「死者の日」とは?

「死者の日」は、メキシコで毎年10月31日から11月2日にかけて祝われる伝統行事です。死者を迎えて祖先に感謝する日とされていて、この期間は学校や職場がお休みになり、メキシコ全土で「死者の日」を祝います。

「死者の日」の起源は、アステカ文明の時代までさかのぼるそう。アステカ族の骸骨を飾る習慣と、彼らが讃える冥府の女神・ミクランシワトルがルーツになっています。

メキシコ首都・メキシコシティでは骸骨に仮装した人々が練り歩く盛大なパレードが開催され、観光客にも人気を博していますが、メキシコの家庭では先祖のために祭壇とお墓を飾って家族で祝う過ごし方が一般的です。

骸骨の仮装と開催時期から、「死者の日」をハロウィンのメキシコ版と思っている人も多いかもしれません。しかし「死者の日」とハロウィンはお祝いの目的が異なり、死者に対する捉え方も違います。

「死者の日」は、死者の国から帰ってくる先祖の魂を歓迎する日。霊魂を迎えるために飾り付けやごちそうを用意します。それに対してハロウィンは秋の収穫を祝い、悪霊を追い払うために怖い仮装をする日。死者を歓迎するという点では、「死者の日」はどちらかというと日本のお盆に近い伝統行事なのです。

『リメンバー・ミー』から見る死者の日の風習・メキシコ人の死生観

『リメンバー・ミー』の主人公・ミゲルの家は先祖代々で靴屋を営む大家族。「死者の日」に備えて、「アルタール」と呼ばれる先祖のための祭壇を用意しています。「アルタール」には、故人を偲ぶお供え物の「オフレンダ」が必要不可欠。故人が好きだった食べ物やお酒、そして故人の写真を「オフレンダ」として供えます。ミゲルの家庭でも先祖一人ひとりの写真を「オフレンダ」にしていましたが、家族を捨てたと言われていた高祖父・ヘクターの写真だけは飾ってもらえずにいました。

また、「死者の日」に欠かせないものといえばマリーゴールドの花。マリーゴールドの花には死者の国から魂を運ぶという言い伝えがあり、「死者の日」になると街中がマリーゴールドの温かい黄色に包まれます。『リメンバー・ミー』では、死者が現世へ帰るときにマリーゴールドの花びらでできた橋を渡っています。

『リメンバー・ミー』の物語の根底にあるのは、メキシコ人特有のおおらかな死生観。メキシコには「死と生は表裏一体。死者の魂は、現世の人間と同じように死者の国で生きている」という死者と共存する考え方があり、ミゲルが迷い込む死者の国は、まさにそれを具現化したものなのです。死者を畏れ敬うよりも、一緒にお祝いをして楽しむというのが「死者の日」であり、その様子は劇中の賑やかなシーンの数々を見れば体感できます。

さきこ

賑やかでカラフルなお祝いが世界中に注目されているメキシコの「死者の日」。映画『リメンバー・ミー』を見れば、メキシコ人が「死者の日」を最も大切な風習だと言う理由がよくわかります。美しい映像と印象的な音楽と合わせて、ぜひ「死者の日」のメキシコを訪れるような海外旅行気分を味わってみてはいかがでしょうか?