「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」─。シェイクスピア作品を知らない人でも、一度は耳にしたことのあるこの台詞。あなたならどう訳しますか?
一文をめぐる翻訳の歴史
シェイクスピア4大悲劇の一つ『ハムレット』。第3幕第1場、憂鬱に沈む主人公ハムレットの独白─ “To be, or not to be, that is the question.” 。このあまりにも有名な一文をめぐって、歴代の翻訳者たちは奮闘に奮闘を重ねてきました。
冒頭に挙げた「生きるべきか、死ぬべきか」という河合祥一朗さんの訳が一般的に知られていますが、実は他にも様々な和訳が存在しています。
「生きる」と訳さないものもある!
焦点となるのは、”be” の解釈。これを生死の意味で取る翻訳が多いですが、もちろん正解はありません。例えば小田島雄志さんの訳では、「このままでいいのか、いけないのか、それが問題だ」となっています。
他にも「在る」「長らう」「とどまる」など翻訳者によって表現は様々。シェイクスピアの選んだこの ”be” という一単語は、解釈の可能性を無限にはらみ、翻訳者たちを悩ませ続けているのです。
Haruhi
河合祥一朗さん訳の『新訳 ハムレット』(角川文庫) のあとがきでは40通りもの過去訳が紹介されているので、興味のある方はぜひ読んでみてください。自分なりに “be” を解釈し、新たな訳を考えてみるのもいいかもしれません。