『アメリカンユートピア』は、2019年に上演したブロードウェイのショーが好評で、昨年は映画館で上映されていました。現在は、Amazon Prime Videoで視聴ができます。今回は本作が持つ魅力についてお届けしていきたいと思います。過去記事はこちら

世界中が熱狂したショー『アメリカン・ユートピア』が配信作品として登場

映画の原案となったのは、イギリスのアーティスト、デヴィット・バーンが2018年に発表した同名のアルバム「アメリカン・ユートピア」です。このアルバムのワールドツアー後、2019年秋にスタートしたブロードウェイのショーが大評判となり、映画化へと繋がりました。本作の映像化にあたり、監督を務めたのは、『ドゥ・ザ・ライト・シング』を生み出した映画監督のスパイク・リー。舞台裏からのアングルなど、さまざまな角度から撮影をし、新しいライブ映像を生み出しました。

「未完成で進化し続ける」デヴィッド・バーンと11名の仲間による、愛に溢れた人生讃歌

『アメリカンユートピア』は、デイヴィッド・バーンと11人の仲間による、マーチングバンド形式の演奏とダンスで進んでいきます。彼らは揃いのグレーのスーツを身につけ、足元は裸足で、縦横無尽に舞台上を動き回ります。

人間が最も見ているのは、他の人間。それならば、ショーに一番大切な要素以外を排除したらどうか。そんな考えから“人間”にフォーカスを当てたシンプルな構成が生まれました。「僕らと皆さんだけ、それがこのショーです」とバーンは観客に語りかけます。

『アメリカンユートピア』で特徴的なのが、曲と曲の間に挟まれるデイヴィッド・バーンの「語り」です。ショーは、「人間の脳は赤ん坊の方が大人よりも神経細胞間の繋がりが多く、成長するにつれて減っていく」という話から始まります。

「多くの不必要な繋がりが成長と共に取り除かれ、残った繋がりがどんな人間になるかを決める。そして独自の視点が形成され、周りの世界が見えてくる」。そうして、バーンは自身が年を重ねるにつれ、いかに自分が世界を違う視点から見られるようになったかをショー全体を通して語っています。

デイヴィッド・バーンは戦争や選挙、人権問題についても多くの時間をとって語ります。特に印象的なのが、女優で歌手のジャネール・モネイの「Hell You Talmbout」を演奏するシーン。映画版では、曲中に出てくる、不当な暴力の犠牲となったアフリカ系アメリカ人らの名前を繰り返すところで、亡くなった本人や遺族たちの写真を挿入し、観ている人に問いかけ、考えさせるような演出になっています。

また、バンドメンバーは、皆それぞれブラジルやフランス、コロンビアなどさまざまな出身地から集まっている多国籍のバンド。バーン自身も幼い頃にスコットランドからの移民で、帰化した身だと言います。ショーで歌われる「EVERY DAY IS A MIRACLE」では歌詞に「互いを愛さねばならない」と出てきます。国籍や年齢など関係なく、バンドも観客も、この劇場空間にいる人々全員が、互いを尊重しあい、愛に溢れているショーだったと感じました。


アメリカンユートピアの楽曲はYouTubeからも視聴できます。

ミワ

デイヴィッド・バーンの語りはユーモアを交えながら社会問題について観客に問いかけていきます。そして、歌い、踊り、楽器の演奏まで!彼の人を惹きつける力、バンドメンバーを含めパフォーマンスの熱量に圧倒されます。