『WICKED』に登場する西の悪い魔女・エルファバと南の良い魔女・グリンダといえば、数多あるミュージカルの中でも特に人気の高いキャラクターですよね。その愛すべき魔女たちを作り上げたのが、ブロードウェイで名を馳せた女優のイディナ・メンゼルとクリスティン・チェノウェスです。
イディナは『アナと雪の女王』のエルサ役 として日本でも親しまれ、クリスティンは『アグリー・ベティ』や『ホワイトハウス』など人気ドラマにも多数出演。2人は舞台の他にも、多岐にわたる活躍を見せています。ミュージカル界の生ける伝説と言っても過言ではない、ゴールデンコンビの魅力を見ていきましょう。

大ヒットミュージカル『WICKED』のオリジナルキャスト

ブロードウェイミュージカル『WICKED』は、2023年に初演20周年を迎えます。2003年の初演のオリジナルキャストを務めたのが、エルファバ役のイディナ・メンゼルとグリンダ役のクリスティン・チェノウェスです。

イディナは『RENT』のモーリーン役、クリスティンは『きみはいいひと チャーリー・ブラウン』のサリー役など、90年代からブロードウェイで活躍していた2人。『WICKED』で共演を果たし、反発しあいながらも心を通わせていくエルファバとグリンダを見事に演じ、一躍有名になりました。イディナはエルファバ役でこの年のトニー賞を受賞しています。

空に響くほどパワフルな歌声のイディナと、アップ調の曲をまくしたてるように歌いこなすクリスティン。『WICKED』の楽曲は、彼女たちの特徴的な歌い方を前提に作られており、歌にもエルファバとグリンダそれぞれの性格が表れているように聞こえます。オリジナルキャストであるイディナとクリスティンは、愛すべき2人のキャラクターを世界へ浸透させる上で大きく貢献していたのです。

ドラマ『glee』では意外な役で出演?!

イディナとクリスティンといえば、お互いに同じドラマにゲスト出演したことがあります。それは、日本でもファンが多いアメリカのドラマ『glee』。イディナは主人公レイチェルの実母であるシェルビー・コークラン役、クリスティンはグリークラブの元スター・エイプリル・ローズ役を演じています。

同じ場面に登場する役回りではありませんが、二人が演じた役には「ブロードウェイで夢破れた人」という共通点があるのです。ブロードウェイで大成功を収めた彼女たちがブロードウェイ進出に挫折した役を演じているのはユーモアを感じさせます。

『glee』といえば歌と踊りのパフォーマンスシーンが人気ですが、イディナとクリスティンも、作中でそれぞれ披露しています。

ドラマでは主要人物たちが「Defying Gravity」を歌ったり、ブロードウェイの劇場に忍び込んで「For Good」の名シーンを再現したり、『WICKED』愛を感じさせるシーンが多いのも注目ポイントです。

2021年トニー賞ではあの名曲を披露

『WICKED』の礎を築いたイディナとクリスティンは、女優・歌手・声優としてのそれぞれのキャリアを経て、2021年のトニー賞のパフォーマンスで再会。イディナは黒いドレス、クリスティンはピンク色のドレスというエルファバとグリンダを思わせる衣装で、二人のデュエットナンバーである「For Good」を披露しました。

「性格も考え方も違う二人が、互いにかかわることで良い変化があった」という歌詞を歌いながら、二人の目には涙が。さまざまなジャンルで活躍するイディナとクリスティンですが、お互いに『WICKED』の出演経験が人生やキャリアに良い影響を及ぼしていたことはファンから見てもわかります。オリジナルキャストとして初代のエルファバ&グリンダを務めた二人には、「For Good」はピッタリの曲です。

@CBS/トニー賞でのパフォーマンス
さきこ

多くのミュージカルファンが「エルファバとグリンダといえば、オリジナルキャストの2人」と答えるほど、それぞれのキャラクターがイディナ・メンゼルとクリスティン・チェノウェスの当たり役であることは言うまでもありません。 ミュージカル界だけではなく、映画やドラマなど多岐にわたるイディナとクリスティンの活躍は、才能という魔法で世界を切り開いて生きる2人の魔女そのものです。