ミュージカル激戦区、ブロードウェイ。これまで数多の作品が上演され、とりわけ人気の高い作品は数十年のロングラン公演を実現しています。しかし、誰でも簡単にブロードウェイ上演が叶うわけではありません。ブロードウェイで成功をおさめるには、数々の苦労の道があるのです。
赤字覚悟の厳しい戦い
数億ドルの興行実績を上げることもあるショービジネスの世界。しかし、ミュージカル制作は莫大な時間と製作費がかかり、赤字を抜け出すまでブロードウェイでも3年かかるといわれています。
これだけの高いハードルにもかかわらず、観客を惹きつける新作ミュージカルが次々と開幕しているのも事実。質の高い作品がファンの注目を集めてはロングラン公演の仲間入りを果たしています。激戦区で生き残る作品創作の秘訣はどこにあるのでしょうか?
はじめの一歩はオフ・ブロードウェイから
オフ・ブロードウェイとは、ブロードウェイの大通りから少し離れた場所に点在する小劇場の総称。興行コストが抑えられるため、実験的なパフォーマンスや若手クリエイターの作品が楽しめます。
ここでは新作ミュージカルの制作過程で欠かせない「トライアウト」が行われることも。映画でいうと試写会にあたるトライアウトは数か月間、オフ・ブロードウェイまたは地方の劇場で上演されます。観客の反応を踏まえて日々作品をブラッシュアップし、ブロードウェイで通用する完成度に仕上げるのです。
激戦を生き抜いて生まれたヒット作たち
ロングラン公演が多いブロードウェイの劇場はなかなか空きが出ず、契約が取れても2年先。ヒット映画の舞台化など期待値が高く(資金力のある)作品に比べ、たたき上げの作品は劇場契約が取れるまで各地でトライアウトを重ねることも多いようです。
ミュージカル制作は資金との戦い。だからこそ観客の熱い支持はいつだって作品の味方です。オフ・ブロードウェイで上演中に大ヒットし、知名度(と資金力)を上げてブロードウェイに進出した作品は数知れず。『コーラスライン』、『RENT』、『DEAR EVAN HANSEN』などが代表的です。
ミュージカルはその制作秘話もドラマにあふれています。
生みの苦しみを乗り越えた人々の熱意が舞台を通して私たちのこころを揺さぶるのかもしれません。