11月3日から世田谷パブリックシアターにて上演される田中圭さん主演舞台『夏の砂の上』。松田正隆さんが1999年に読売文学賞を受賞した作品で、主演の田中圭さんと演出の栗山民也さんとのタッグは約3年ぶりです。今回は舞台『夏の砂の上』の魅力と、演出家の栗山民也さん・劇作家の松田正隆さんについても紹介します!
セリフは全て長崎弁!真夏の田舎町で起こる複雑な家族の会話劇
『夏の砂の上』の見どころは、物語が長崎弁で進行する会話劇であるところ。標準語で進行する舞台が多い中、セリフのほとんどが方言なのは珍しいのではないでしょうか。
『夏の砂の上』は劇作家・演出家の松田正隆さんが、自身の故郷である長崎を舞台に描いた作品です。1998年初演で、平田オリザさん演出・青年団により上演。翌年の1999年に読売文学賞戯曲賞・シナリオ賞を受賞しました。2003年の再演を経て、今回栗山民也さんの演出で再々演となります。
長崎の田舎町に住む主人公の小浦治は、勤めていた会社が倒産し失業。自分の元部下と不倫して家を出た妻が、亡き息子の位牌を取りに現れます。同じタイミングで現れた治の妹・阿佐子。男性に騙されてばかりの阿佐子は、今度はスナックを開くと言い16歳の娘・優子を治に預けに来たのでした。
狭い世界で起こる複雑な人間模様を描いた今作。登場人物のポンコツ具合に呆れそうになりながらも、必死に現実と向き合おうとする姿に心がチクチクと痛みます。
方言の音源を聞きながら台本を読んでいるという、田中圭さんのレアな長崎弁にも注目です!
田中圭が絶大な信頼を寄せる!演出家・栗山民也との出会い
田中圭さんと栗山民也さんの出会いのきっかけは、2019年の舞台『チャイメリカ』でした。
芸能界デビューしてから、ドラマやCMなどで活躍してきた田中さんは、2007年に『死ぬまでの短い時間』で舞台デビュー。その後も、『芸人交換日記』、『Tribes』、『サメと泳ぐ』、『もしも命が描けたら』など、さまざまな舞台作品に出演しています。
その中でも、衝撃的で心に強く残ったという方も多い舞台『チャイメリカ』。若手劇作家のルーシー・カークウッドが、1989年の天安門事件を題材に創作した作品です。ステージ上での場面展開が多く、迫真の演技や表情が心に刺さる演出でした。
主演を務めた田中さんは、「いつかもう一度栗山さんと舞台をやりたい」と熱望し、今回3年ぶりに実現。栗山さんが田中さんに求めたという、セリフ以外の表情や体で表すお芝居にも期待が高まります!
戯曲賞の受賞歴多数!戯曲家・松田正隆が故郷の長崎を舞台に描く作品
『夏の砂の上』の戯曲を書いた松田正隆さんは、長崎県出身の劇作家・演出家。1993年に発行の『坂の上の家』を始め、『海と日傘』、『月の岬』などの作品で数々の戯曲賞を受賞しています。今回上演される『夏の砂の上』も1999年に読売文学賞の戯曲・シナリオ賞を受賞。松田さんは今作を書くにあたって実際に夏の長崎を歩き回り、セリフや物語の枠が生まれたとのこと。戯曲に登場する、「坂にへばりつく家々」という表現から、坂と家に囲まれた田舎町がスッと頭に浮かんできます。また長崎がテーマになった有名な音楽や博多の銘菓も登場し、節々に地元愛の感じられる作品です。
松田正隆さんの初期代表作3作品を集めた戯曲集『松田正隆1』が、10月18日に早川書房より発売。『夏の砂の上』も収録されています。短時間でサラッと読める160ページほどの会話劇なので、役者のお芝居や表情に集中して観劇したい方は、予習としてもおすすめですよ。
舞台『夏の砂の上』は、11月3日~20日まで世田谷パブリックシアターにて上演予定。その後、兵庫・宮崎・愛知・長野と全国4ヵ所でもツアーが決まっています。チケットの詳細はこちら。
寒い冬に真夏の長崎を感じながら、とある家族たちの人生を一緒に考えるのも楽しいかもしれません。